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舌下神経電気刺激装置による睡眠時無呼吸の治療
舌下神経電気刺激療法とは
CPAP治療に適さない、あるいは、CPAP治療に耐えられない、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者に対して行う治療法です。本人の呼吸と同期して舌下神経を刺激し、舌基底部の筋収縮を誘発することで、上気道の閉塞を防ぐことができます。
舌下神経電気刺激装置について
Inspire Medical Systems, Inc.(米国 ミネソタ州)が、閉塞型睡眠時無呼吸に対する植込み型治療デバイスを開発しました。装置の名称は、インスパイアです。構造は、植込み型パルスジェネレータ、刺激リード、そして、センサーリードから成り立っています。
操作に関しては、舌下神経電気刺激装置を体に埋め込んだ後に、パルスジェネレータを起動および通信してタイトレーションに用いられる医療者用プログラマと患者がパルスジェネレータを作動させる患者用のプログラマがあります。
バッテリーの寿命は11年程度と言われています。
出典:舌下神経電気刺激療法(Inspire)について学ぶ - Inspire Medical Systems Japan合同会社
術式について
顎下に切開して、舌下神経を露出させ、その遠位端に刺激リードを留置します。顎下から頸部、そして、鎖骨下の切開部位までの皮下に刺激リードを挿入します。さらに、電気刺激装置の本体と接続します。センサーリードについては、内肋間筋層と外肋間筋層の間にリードの遠位部を挿入し、電気刺激装置のある部位まで皮下でつなぎ、接続します。
舌下神経電気刺激装置植込術の適応
関係学会の定める舌下神経電気刺激装置適正使用指針を遵守することが必要です。そして、耳鼻咽喉科あるいは又は頭頸部外科について5年以上の経験を有し、舌下神経電気刺激療法に関する研修を修了している常勤の医師のみ、手術ができます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者において、下記の条件をすべて満たす場合に手術適応になります。
- AHIが20以上の閉塞性睡眠時無呼吸
- CPAP治療が不適または不忍容である
- 扁桃肥大などの重度の解剖学的異常がない
- 18歳以上
- BMIが30未満
- 薬物睡眠下の内視鏡検査で軟口蓋の同心性虚脱がない
- 中枢性無呼吸の割合が25%以下である
舌下神経電気刺激療療法が適切であるかどうかを決めるには、耳鼻科で施行される薬物睡眠下内視鏡検査の結果が必須です。この検査は、Drug-induced Sleep Endoscopy (DISE)と呼ばれており、耳鼻科の医師は、その所見を重要視しています。
術後の通院について
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する舌下神経電気刺激装置植込術を受けた後、担当医はプログラマを用いて、舌下神経電気刺激装置の使用状況の確認と調整を行います。
安全精度管理下で行う終夜睡眠ポリグラフィー検査を施行している医療施設のみ、術後の指導管理ができます。
メリットについて
CPAP治療に耐えられない人がマスクの装着による不快感から解放されることです。
治療効果に関しては、舌下神経電気刺激療法によって、睡眠時無呼吸の重症度が低下すること、生活の質が改善することを期待できます。
CPAP治療との比較試験において、主観的な眠気の改善において、舌下神経電気刺激療法のほうが優位であったことが報告されています。ただし、血圧の降下作用は、CPAP治療のほうが優れていました。
日本では、小児の閉塞型睡眠時無呼吸に対する舌下神経電気刺激療法は認められていませんが、海外では、ダウン症の子どもに対する有効性が報告されています。
費用について
2021年6月1日から、舌下神経電気刺激装置植込術:28030点、在宅舌下神経電気刺激療法指導管理料:810点が保険適用になりました。実際には、病院での入院基本料などが加算されます。
舌下神経電気刺激装置(Inspire UAS システム)の保険償還価格は、2,480,000円に決定されました。
まとめ
CPAP治療が合わない中等症の睡眠時無呼吸症候群の患者において、舌下神経電気刺激療法は新たな治療の選択肢になります。
ただし、手術適応の条件をクリアする必要があること、そして、国内では舌下神経電気刺激装置植込術が可能な病院が少ないことから、この治療法の普及には時間がかかりそうです。
東海地方では、どの病院で舌下神経電気刺激療法の手術を受けられますかか?
藤田医科大学ばんたね病院の耳鼻咽喉科および名鉄病院が、手術を行っています。
手術ができる病院に紹介状を書いてもらえますか?
希望される医療施設への紹介状を作成いたします。