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なぜ高校生が寝れないのか?
どんなとき高校生が眠れないのか?
高校生になると、中学生の頃と比べると勉強がもっと難しくなり、塾に行く生徒が増えます。さらに、部活動においても練習量が増えます。学習面と体力面において、負担が大きくなる時期と言えます。
次の日に、定期テストがあるので寝つかれない場合、翌日に大切な部活の試合があるので、眠れないまま朝になったという経験がある人もいます。
高校に進学すると、友人、部活の仲間との関係、恋愛、進路のことなど、高校生の悩みは多くなってきます。不安と緊張によって、眠りたいのに寝れないという場合があります。
夜更かし、生活習慣の問題で、寝る時間が遅くなっている事例もありますが、高校生に特有の悩みを抱えて、寝れない状況になっていることが少なくありません。
高校生に多い不眠の原因と対策について、解説します。
なぜ眠れないのか?
不眠症の対策を希望して睡眠外来に受診された高校生と養育者に「眠れなくなった理由と経緯」について聞いたことろ、人間関係および自分の学力と進路に関する悩みが多い傾向がありました。
高校生になると、通学時間が長くなる人が増え、行動範囲も広くなります。高校に進学すると中高一貫校ではない生徒の場合では、教室において初対面の同級生ばかりになります。
部活動も練習量が増え、先輩と後輩の上下関係が厳しくなることもあります。生徒の中には、アルバイトを始める人も出てきて、社会人との接点も出てきます。中学生の時代と比較すると、人間関係の範囲が広がり、より複雑になる傾向です。その結果、人付き合いの悩みに直面する場合もあります。
内閣府が実施した「子どもの意識に関する調査」の中に、社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった理由に関する統計があります。
高校生の年齢に相当する15~19歳においては、「人付きあいが苦手だから」と回答した人の割合が最も多く、58.4%でした。次いで、「何事にも否定的に考えてしまったから」が33.0%、「悩みなどを相談できなかったから」が25.6%という結果でした。
高校生になってからも、人間関係によるストレスが多い印象です。さらに、悩みについて相談できない環境も影響しているようです。これらの要因は、眠れない理由として関係しているかもしれません。
高校になるとクラスが文系と理系に分かれ、学習内容がより高度になります。大学受験を予定している高校生では、自分の学力、模擬試験の結果、志望校の設定など、悩む機会が増えます。大学選びは就職活動と進路にも関係することから、ストレスがかかります。
学校の成績と進路に対する不安を抱えている高校生は、少なくありません。
厚生労働省が行った統計調査によれば、高校3年間において、進路に関する悩みや不安を抱えている割合が最多です。高校2年生と3年生の女子の約50%が進路で悩んでいるようです。
学校や塾の成績に関する悩みも多い印象です。
男女差が目立った項目として、自分の容姿に関すること、友達との関係に関することです。これらに対する悩みや不安は、女子学生において多いことが特徴です。
出典:第18回21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)- 文部科学省
平成26年に行われた「中高生2万人の悩みに関する調査」では、高校性の悩みとして、将来の進路(63.7%)、成績(56.5%)、身体(40.5%)、友達との関係(21.4%)、異性関係(11.3%)という結果が報告されています。
出典:中学生・高校生 2万人を対象にした思春期アンケート調査 – こども家庭庁
日本と海外の高校生との比較調査の結果によれば、中国、韓国、米国の高校生においても、勉強のこと、進学や進路のこと、友達のことが、ストレスの要因として上位を占めています。
出典:高校生の心と体の健康に関する意識調査報告書〔概要〕 ―日本・米国・中国・韓国の比較― – 国立青少年教育振興機構
以上のデータから高校性が抱えているストレスとして、次の四つの要因があることが考えられます。
- 高校卒業後の進路
- 勉強のこと、自分の学力
- 人間関係(特に友達のこと)
- 自身の容姿
筆者が「高校生の不眠の原因」について聞き取りを行った経験に照らし合わせても、同様な傾向があります。これらのストレスが長く続くと、不眠の症状が現れるリスクが高くなるかもしれません。
男子と比べると、女子の高校生では、自分のスタイルが気になること、そして、友達との関係に関するトラブルが多くなります。いじめが問題の原因として、関わることもあります。
性の悩みの中で、LGBTのことで誰にも相談することができず、つらい思いを抱えている高校生もいます。
眠れない症状について
症状 | 特徴 |
---|---|
寝ようとしない | 就寝するべき時間になっても、ベッドに行かない。寝転んで、スマホでSNS、動画の視聴、オンラインゲームをしている行動があります。 |
寝つきが悪い | ベッドに入っても眠くならなない状況です。寝つかれないことが、焦りの気持ちを引き起こし、眠れないまま朝を迎えることもあります。 |
途中で目が覚める | 一旦、眠りに入るのですが、しばらく時間が経つと目が覚めてしまい、再び寝ることができない状況です。中途覚醒と呼ばれています。 |
朝早く目覚める | 自分が起きたいと思っている時刻の2時間以上前に、目が覚めてしまう症状です。不眠症の症状の一種で、早朝覚醒と呼んでいます。 |
高校生が眠れないときに起きる影響とは?
睡眠不足の状態で起床すると、登校中のバス、電車の中で、ウトウトすることが多くなります。頭がボーっとした状態で活動するので、倦怠感が出現します。そして、勉強しているときの眠気に悩まされます。
学校が始まってからも、集中力が続かず、授業の内容が頭に入ってきません。記憶力が低下するので、学校の成績が下がることが問題になります。そして、大きなストレスとなり、受験に対する焦りと不安の気持ちを引き起こし、不眠を引き起こします。
ストレスによって自律神経のバランスが崩れるので、身体症状と睡眠障害が現れる子どもがいます。
十分な睡眠時間をとっていないので、毎日の睡眠不足が借金のように積み重なっていきます。この状況は睡眠負債と呼ばれており、こころと体に悪影響を及ぼします。
情緒面では、眠気があるので、些細なことにイライラすることが増えます。子どもの中には、前日の不眠によって、朝起きられない場合もあり、遅刻と不登校の原因になる可能性があります。
思春期の学生において睡眠不足が続くと、どのような影響が起きますか?
うつ病、自殺、事故、肥満のリスクが高くなります。
対処法について
ストレス、悩みに対する不安などの要因が、入眠の妨げになります。高校生では、ネットや掲示板に悩みを相談することが多いです。そのため、養育者、教師などが、日頃からコミュニケーションをとることを心掛け、様子がおかしい場合は、声をかけて相談にのってあげることが大切です。
勉強面でのストレスは大きい要素なので、成績の問題があるときは、学校の担任、学習塾の先生との面談をこまめに行い、本人の不安を取り除くことが重要です。
眠れないときの対策としては、睡眠音楽、読書などのルーティンを試みることを勧めます。一般的に、風呂から上がって60~90分くらい経過すると深部体温が下がり、入眠しやすくなります。
寝る前のスマホは、光刺激になるので中止しましょう。夜間にブルーライトを浴びると、体内時計を遅らせるので注意すべきです。
不眠を治療するために、睡眠薬を使うことはありますか?
生活習慣の改善をしても眠れないときに、オレキシン受容体拮抗薬を処方する場合があります。睡眠相後退症候群に伴う入眠困難に対しては、メラトニンアゴニストによる体内時計の補正を行います。その他の方法として、漢方薬を活用することがあります。