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寝ぼけの症状と対処法について
錯乱性覚醒とは
深いノンレム睡眠から目覚めたときに発症する覚醒障害です。ベッドの上で、混乱した状態で周囲を見渡す症状が特徴です。夜の睡眠の前半に出現することが多く、完全に覚醒させることが困難です。小児期に多く発生する睡眠時随伴症の一種で、寝ぼけと呼ばれています。
原因について
詳しい発症メカニズムは、特定されていません。小児において錯乱性覚醒が多いことから、脳の睡眠覚醒を調節するはたらきが未発達であることが推測されています。そのため、深い眠りから覚醒への移行期に症状が出現している可能性があります。
錯乱性覚醒が生じやすい誘因として、何がありますか?
発熱、睡眠不足、頭痛、旅行、睡眠リズムの問題があると、錯乱性覚醒は生じやいと報告されています。
出典:Confusional Arousals – Stanford Health Care
症状について
眠りに入ってから最初に出現するノンレム睡眠(ステージN3)のときに、出現することが多いです。症状が持続する時間は、数分から1時間ほどです。典型的には、5~15分くらいです。
通常、寝ぼけの状態になっても、完全に目が覚めることはなく再び眠ります。ベッドの上で、寝ぼけて座るときに、無理やり覚醒させると暴れることがあります。しかし、本人は起床時にエピソードがあったことを覚えていません。
基本的に、精神的に混乱していて外部の状況を理解できていません。そのため、混乱した行動が観察されます。
一般的には3歳ごろに発症する頻度が高くなり、就学前の幼児に多いことが報告されています。一人で寝ることへの不安、寂しさがあると、中途覚醒が続くことに関連しているようです。
出典:Petit et al. Dyssomnias and parasomnias in early childhood. Pediatrics. 2007;119:e1016-25.
錯乱性覚醒の初発は5歳未満が多いですが、典型的には10歳未満に発症します。子どもに好発するパラソムニアです。
診断の方法
通常は、問題となっている症状の聞き取りによって診断を行います。遺伝の要因があるので、家族歴(60~90%にみられる)を聴取することが大切です。両親に睡眠時随伴症の症状があったかを確認します。
いつ症状が出現しているか、どのくらいの頻度で症状が出現しているかを調査するために、睡眠日誌を記録することもあります。
ベッドの上で、混乱した面持ちで辺りを見回すことが特徴です。その上で、次のすべての条件を満たすときに、診断することができます。
- 睡眠から不完全な覚醒が繰り返し起きる
- エピソード中に介入しても反応がない(不適切な反応)
- 寝ぼけの症状について、部分的あるいは完全な健忘がある
- 他の睡眠障害、心と体の病気、薬物の影響がない
通常、外来での診察で診断が確定されますが、他の覚醒障害、てんかんとの鑑別を要するときは、ビデオ監視が付いた終夜睡眠ポリグラフ検査による評価が必要になります。
寝ぼけの症状があるときに、鑑別すべき病気は、夜驚症、夢遊病、レム睡眠行動障害、てんかん、悪夢障害などです。
出典:福水道郎 他 小児の睡眠関連病態 小児保健研究;76(6):515-520,2017
睡眠時驚愕症
錯乱性覚醒との違いは、恐怖感を伴い、叫び声をあげること、交感神経系の興奮の症状が出現することです。
立ち上がる、ベッドから出て歩く、走る症状など、複雑な行動が出現する症状を確認することで、錯乱性覚醒と区別できます。
発達障害があると、夜間帯の異常行動として睡眠時随伴症が出現することがあるので、注意欠陥多動性障害(ADHD)あるいは自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状があるか、鑑別する必要があります。
出典:加藤久美 ノンレムパラソムニア 臨床神経生理学;48(1):45-49,2020
対策について
錯乱性覚醒障害は、子どもが成長する過程で、自然に消失することが殆どです。そのため、家庭での対応として、睡眠衛生の徹底を行うことが大切です。年齢相応の睡眠時間をとること、そして、就寝と起床時間を規則正しくすることは、発症を予防するのに役立ちます。
ただし、睡眠時遊行症の症状に移行して、ベッドから離れる動作があるときは、寝室を安全な環境にすることが大切です。
どんな薬が処方されますか?
薬物療法は、エピソードが頻回に起きるとき、危険な行動を呈しているとき、そして、安定した睡眠がとれないときに考えます。治療薬としてクロナゼパムがあり、少量投与によって症状を抑えます。
出典:Mahowald et al. NREM sleep parasomnias. Neurol Clin. 1996;14:675-96