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エスタゾラムによる不眠症の治療
ユーロジンとは

ユーロジンは、不眠症の治療に用いられる睡眠導入剤の一種です。この薬はベンゾジアゼピン系の睡眠薬(中間作用型)に分類されています。不眠の中でも、夜中に目が覚めてしまう、または、朝早く目が覚めてしまうといった症状に対して、処方されています。
睡眠に対する効果について

私たちの脳内では、GABA(γアミノ酪酸)という神経伝達物質が、脳の興奮を抑える役割を果たしています。日常生活で受けたストレスや生活リズムの乱れにより、このGABAの働きが低下すると、睡眠に影響が出てきます。具体的には、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたり、眠りの質が低下してしまいます。
ユーロジンは、GABA受容体に作用することで、催眠を促します。
電子添文によれば、ユーロジン(4mg錠)を服用して、有効成分であるエスタゾラムが体内で吸収されてから、約5時間で最高血中濃度に到達します。そして、半減期は約24時間であるとされています。
短時間作用型のリスミー、レンドルミンと比べると、ユーロジンの効き目は長いです。たしかにユーロジンの投与量と体質などの影響はありますが、作用時間は6~8時間くらいと考えられます。同じ中間型のサイレースと比較すると、ユーロジンのほうが効果の持続が長いという位置づけです。
私の外来での経験では、不眠症の治療として、中途覚醒だけではなく早朝覚醒があるときの選択肢になるという印象です。
ユーロジンには、どんな効能と効果がありますか?
厚生労働省によって、不眠症治療と手術前の麻酔前投薬に用いることが承認されています。
副作用について

最も多い副作用は、眠気とふらつきです。そして、頭痛、頭が重い感じ、歩行失調などが報告されています。倦怠感、脱力感を訴える人もいます。これらの副作用は、薬剤の半減期が長く、翌朝に残ること、そして、筋弛緩作用によって引き起こされると考えられます。
電子添文に記載されている情報を解釈すると、前者は起床後すぐの運転を控える必要性がある根拠になっており、後者は、重症筋無力症の人に対してユーロジンが禁忌である理由です。
注意点として、継続的なユーロジンの服用は依存のリスクがあります。さらに、薬に慣れてしまい、効き目が悪くなることもあり、耐性と呼ばれています。対処法としては、オレキシン受容体拮抗薬への変更があります。具体的には、デエビゴあるいはベルソムラなどの薬剤が候補になります。
入眠困難に用いられるような超短時間型の睡眠薬とは異なり、ユーロジンの半減期は長いので、起床時に薬が残る懸念があります。つまり、薬の作用が十分に抜けていない状態で朝を迎える場合が起こり得ます。持ち越し効果と呼ばれています。特に、飲酒によって、眠気、集中力の低下および反射運動能力が低下するので注意しなければなりません。
薬価について

剤型 | 薬の価格 |
---|---|
ユーロジン1mg錠 | 6.1円/錠 |
ユーロジン2mg錠 | 8.4円/錠 |
ユーロジン散1% | 37.4円/g |
ユーロジンには後発品があります。ジェネリック医薬品の価格は下記の通りです。1mg錠については、先発品と後発品の差がありません。一方、2mg錠では、薬価が安くなっています。
剤型 | 薬の価格 |
---|---|
エスタゾラム錠1mg「アメル」 | 6.1円/錠 |
エスタゾラム錠2mg「アメル」 | 6.6円/錠 |
薬の服用方法について

不眠症の治療目的のために、成人は1回につき、エスタゾラム1~4mgを就寝前に服用します。つまり、ユーロジン1mg錠および2mg錠を使用して、用量を調節します。細かい調整が必要なときは、散剤が用いられます。
高齢者の場合では、安全面から少量から開始します。一方、基本的に、妊娠している方には投与しません。そして、授乳を避ける必要があります。
処方期間について
原則として、30日以内の処方となります。継続的な使用が要すると判断された場合も、定期的な診察で医師による評価を受けなければなりません。なぜなら、依存と耐性の形成を防ぐ必要があるからです。
睡眠薬の適切な使用期間について、海外の医療機関でも慎重な判断がなされています。ユーロジンは、原則として短期間での使用が推奨され、通常7~10日間の使用期間が目安とされています。
注意事項について

ユーロジンを服用された方の中には、翌朝にさまざまな症状を感じることがあります。眠気が残る、体がだるい、めまいがする、頭が痛いなど、これらの症状は個人差があります。まったく感じない方もいれば、日常生活に影響を及ぼすレベルになる場合もあります。
もうろう状態で、車の運転、食事などを行い、その出来事を覚えていない有害事象が起きることがあります。
気になる症状があれば、必ず医師に相談してください。服用量を調整したり、服用するタイミングを少し早めたり、場合によっては他の種類の睡眠導入剤に変更することで、症状が改善することがあります。
ただし、ここで特に注意していただきたいのは、「ユーロジンが効かない」と思っても、決して自己判断で錠数を増やさないことです。そして、市販の睡眠改善薬と一緒に飲まないでください。なぜなら、副作用が発現するリスクが高まるからです。
一般的に、アルコールと睡眠薬の組み合わせは要注意です。それぞれの作用が重なり合って、予想以上に強い効果が現れます。具体的には、異常な眠気や頭がぼーっとする、強い倦怠感、朝起きられないなどのリスクがあります。
睡眠時無呼吸症候群がある人は、アルコールとユーロジンの併用により呼吸が抑制され、上気道の筋弛緩が助長されるので、無呼吸の症状が悪化する恐れがあります。
リトナビル(商品名:ノービア)やニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッド®は、抗ウイルス薬でです。ノービアはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症の治療薬として、パキロビッドは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として使用されます。これらの薬剤は、肝臓でユーロジンを分解するや薬物代謝酵素を阻害します。その結果、ユーロジンの血中濃度が高くなり、強い眠気、意識レベルの低下、そして呼吸抑制を引き起こします。ゆえに、これらの薬剤とユーロジンの併用は禁止されています。
出典:ユーロジン添付文書 – 一般財団法人日本医薬情報センター