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入眠困難を改善したいときの不眠症治療薬
はじめに
「今日は、ぐっすり眠れますように」。そう願いながらベッドに入っても、なかなか眠れない夜を過ごしていませんか?
なかなか寝付けない状況が続くと、日中も強い眠気に悩まされ、翌日の仕事や家事に支障が出ている方も多いはずです。寝不足の問題は、あなたの生活の質を確実に低下させてしまいます。そして、不眠症が続くと精神的にも参ってしまいます。
そんなとき、次のような疑問はありませんか?
- 市販の睡眠薬を試してみようか
- 病院で相談したほうがいいのかな
- どんな種類の薬があるのか
- 薬の副作用が心配
- 子どもの場合はどうすれば良いのか
もちろん、不眠に対処として薬以外の方法を模索する方向が良く、睡眠薬には適正な使い方を要します。このページでは、薬に対する基礎知識を知りたいという人のために、入眠困難に処方される処方薬から薬局で入手できる市販薬まで、それぞれの特徴や使い方と注意点を説明していきます。
病院で処方される処方薬
不眠の問題があって医療機関を受診すると、最初に寝付きが悪くなった原因を調べたり、睡眠衛生の改善を始めたり、薬以外の方法が話し合われます。
現代社会では、仕事や人間関係のトラブル、経済的な不安など、精神的なストレスが寝つきが悪くなる要因となっているため、これらの問題にも目を向ける必要があります。さらに、体内時計の乱れによる入眠困難(睡眠相後退)、むずむず脚症候群、そして、発達障害の不眠などの睡眠障害も鑑別しなければなりません。
一般的には、症状の経過、日常生活に及ぼしている悪影響、年齢、持病の有無などを考慮して、睡眠導入剤の処方が検討されます。
寝つきが悪いときに選択肢に挙げられる睡眠薬の種類について、以下にまとめを書きます。
種類 | 特徴 |
---|---|
ベンゾジアゼピン系 | 1980年代から使用されている薬剤で、確実な睡眠効果が特徴です。ハルシオン、レンドルミンなどが該当します。前者は超短時間型、後者は短時間型の薬剤です。患者さんの生活リズムに合わせて選択できます。ただし、依存性の問題があるので、第一選択で用いることは少なくなっています。なるべく、半減期の短いものを選んだほうが、翌朝の眠気が残りにくいです。 |
非ベンゾジアゼピン系 | ベンゾジアゼピン系より選択的に睡眠中枢に作用するため、副作用が比較的少ないことが特徴です。アモバンとその改良型のルネスタ、そしてマイスリーなどが該当します。筋弛緩作用が少ない特徴をもっています。ただし、依存性の問題は注意すべきでしょう。非ベンゾジアゼピン系は超短時間の作用型ですので、翌朝の眠気、ふらつきの副作用が起きにくい利点があります。 |
メラトニン受容体作動薬 | 体内時計に働きかけて自然な眠りを促す薬剤です。ロゼレムが代表的で、依存性が低く長期使用でも安全性が高いことが特徴です。睡眠時無呼吸症候群がある人にも用いられることがあります。従来の睡眠薬に比べると弱いものの、睡眠覚醒リズムを整える効果があり、特に睡眠覚醒リズムが乱れている方、加齢によるメラトニン分泌低下がある高齢者の不眠に良い適応と言えます。 |
オレキシン受容体拮抗薬 | オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を促すオレキシンの働きを抑えることで、自然な眠りを促す新しいタイプの睡眠薬です。従来のベンゾジアゼピン系と比べると、依存性が少ない睡眠薬です。さらに、翌日への持ち越し効果も少ないのが特徴です。半減期が長い順に、デエビゴ、ベルソムラ、およびクービビックがあります。 類薬の中では、クービビックの半減期が最も短く、持ち越し効果が少ない印象です。 |
処方薬の大きなメリットは、医師による継続的な管理のもと、症状に合わせて適切な調整ができる点です。副作用が出現した場合も、専門的な対応を受けられます。また、医師が不眠症と診断して不眠症治療薬を要すると判断すれば、保険適用になります。
ただし、デメリットとして定期的な通院が必要な点や、薬の種類によっては自動車運転への影響があること、長期服用による依存性、耐性の可能性なども考慮しなければなりません。
特に高齢者や持病があって薬を飲んでいる場合は、薬剤の相互作用にも注意を払うことが必要です。
出典:睡眠薬や抗不安薬を飲んでいる方に ご注意いただきたいこと – 東京女子医科大学病院
市販薬(OTC医薬品)による不眠の改善
薬局やドラッグストアで購入できる睡眠改善薬は、一時的な不眠症状の改善に使用されます。特に寝つきの悪さや、眠りの浅さといった症状に効果があります。代表的な製品として第二類医薬品のドリエルおよびネオデイがあり、いずれもジフェンヒドラミン塩酸塩を主成分としています。
これらの薬は、脳内の覚醒システムに関与するヒスタミンの働きを抑えることで眠気を促します。この作用は、一般的な風邪薬に含まれる抗ヒスタミン成分が眠気を引き起こすのと同じ仕組みです。
注意点として、ジフェンヒドラミン塩酸塩には、眼圧を上げたり、尿管を収縮させたり、抗コリン作用があります。したがって、高齢者や、緑内障・前立腺肥大の持病がある方には使用できません。
出典:くすりの話 112 「睡眠改善薬」では不眠は改善しない – 全日本民医連
基本的に、睡眠改善薬は一時的な不眠症状を対象にした薬であることを知っておきましょう。そして、不眠の症状が長く続くときは医師の相談することを勧めます。
漢方薬の活用について
不眠に用いられる薬として、漢方があります。ドラッグストアで購入することができますが、医療機関に受診して処方される場合もあります。後者の場合、保険適用になります。
漢方薬は副作用が比較的少なく、穏やかな作用が特徴です。そのため、睡眠薬の依存性を気にしている人の選択肢としてあげられます。また、睡眠導入剤の適用がない子どもに対する代替案として活用されているケースもあります。
代表的な生薬について概説していきましょう。
寝つきが悪い方に向いている漢方薬には、抑肝散(よくかんさん)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)などが代表的な生薬と言えます。
抑肝散は、イライラや緊張による不眠に適しています。子どもにも処方されることがあります。抑肝散加陳皮半夏という本邦で改良されたタイプの漢方もあり、不眠に加えて胃腸が弱い人に対する選択肢になります。
酸棗仁湯は、体力が低下して、心の状態が疲弊しているときに考慮します。一方、加味帰脾湯は、どちらかというと精神不安のある場合の不眠に効果があります。特に貧血を併発しているときには検討しても良いかもしれません。
出典:山田 和男; 抑うつ・不安・不眠の漢方治療, ファルマシア;47(9)844-848
今回、紹介した漢方薬は副作用が比較的少なく、高齢者でも使いやすい特徴があります。ただし、体質や症状の現れ方で最適な漢方薬が異なるので、自分にあったものを探している必要があります。そして、他の薬との相互作用もあり、肝機能障害の発現の可能性もゼロではないので、外来で慎重に経過をみていきます。