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一睡もできなかったまま朝になった時の対策
はじめに
「眠れないまま朝になってしまった…」
目覚まし時計を見つめながら、眠れなかった疲れと、これから始まる一日への不安が入り混じったような経験はありませんか?
その日が重要な予定を控えている時。仕事でのプレゼンテーション、学校でのテスト、育児や介護など、責任ある役割を果たさなければならない時こそ、前夜に眠れないことが大きな不安となります。
「このまま一日を乗り切れるだろうか」
「今日は、休むべきか出かけるべきか」
当日の活動について、判断に迷われている方も多いでしょう。
このような状況に対して、睡眠専門医が適切な対処法、仕事や学校に行くべきかどうかの判断基準、休むときの体調の目安について紹介していきます。
すぐに実践できる4つの緊急対処法
全然眠れなかった状態で朝を迎えてしまった時、まず大切なことは慌てない気持ちです。以下の対処法を実施することで、この一日を少しでも快適に過ごすことができます。
それぞれの対策は、組み合わせることができます。ただし、体調に不安がある場合は、無理のない範囲で実施してください。そして、注意点としては、一時しのぎの方法であるので、継続的な睡眠の改善には生活習慣の見直しが必要となります。
光を浴びる
朝日を浴びることは、体内時計をリセットする最も効果的な方法です。
- カーテンを開け、15分くらい、自然光を取り入れる
- 可能であれば、5~10分程度の短い散歩をする
- 光刺激によって、覚醒ホルモンの分泌が促進される
体内時計の調整には、朝の光が大切です。太陽光にはブルーライトが含まれています。起床時に明るい環境で過ごすことで、体を覚醒状態に切り替えることができます。これにより、一時的な眠気を抑制し、自分の体を活動モードにもっていきます。曇りの日なら、室内の照明器具を点灯させることも一案です。
適切な水分補給
睡眠不足の体は脱水状態になりやすく、これが眠気や倦怠感を助長します。そして、頭痛を引き起こす要因にもなります。
起床直後にコップ1杯の水を飲むことを勧めます。ただし、胃腸への負担を少なくするため、冷水ではなく、常温の水にしましょう。
ストレッチ
起床してから活動する前に、朝のストレッチをしましょう。血行を促進し、体と心をリフレッシュさせる効果があります。
具体的には、深い呼吸をしながら、首を左右にゆっくりと傾けます(各10秒)。次に、肩を大きく回し(前後5回ずつ)、腕を天井に向かって伸ばす動作を行います。続いて、その場で軽く足踏みをして(20回程度)、ふくらはぎをストレッチ。最後に、腰に手を当てて軽く後ろに反らす動作で背筋を伸ばします(5秒×3回)。
これらの動きを無理のない範囲で行うことで、眠気覚ましと体のリフレッシュが期待できます。
カフェイン摂取
覚醒作用のあるカフェインは、眠気を覚ますのに効果的です。しかし、摂取量とタイミングなどに注意を払う必要があります。
朝一番の空腹時は避け、朝食を摂ってから、カフェインを含んだ飲み物を摂取するようにしましょう。具体的な飲み方しては、まずコーヒー1杯(カフェイン含有量:約100mg)から始めてみましょう。コーヒーが苦手な方は、紅茶やお茶で代用することもできます。
過剰に摂取すると動悸が現れるので注意しましょう。自分の体調を見ながら、適量を守ることが大切です。成人の場合、1日のカフェインの摂取量合計は400mgを超えないようにしましょう。午後3時以降は夜の睡眠に影響を与える可能性があるため、控えめにすることをお勧めします。
状況別の具体的な対策について
1. 仕事がある場合
不眠で過ごした夜の翌日の朝に仕事がある場合は、いつもより30分早く準備を始めることをお勧めします。まずはシャワーで体を温めて、リラックスすることを勧めます。時間があれば、軽い朝風呂でも構いません。心身を活性化させましょう。
もちろん、ベッドを出てからは、なるべく明るい環境にして、光を浴びることも忘れずにしてください。さらに、朝ごはんは消化の良い炭水化物を中心とした軽めの食事を取ることが大切です。なぜなら、朝食と朝の光には、体内時計のリセットを行う役割があるからです。
出典:福田裕美; 2.概日リズム調節における光と食事の影響に関する研究動向, 日本生理人類学会誌;24(1):1-7,2019
仕事中は、集中力が比較的高い午前中に重要な判断や会議をまとめることで、効率的に業務を進められます。
昼休みには15分程度の仮眠時間を確保し、午後の仕事に備えましょう。また、同僚に状況を適切に伝え、必要に応じてサポートを依頼することも有効です。タスクの内容を簡単なものに、そして、処理量を減らすよう調整しましょう。2時間おきに10分程度の小休憩を取ることで、集中力の維持を目指します。
2. 試験前の場合
テスト前に眠れなかった場合、普段より1時間早く起きることから始めましょう。早めに起床することで、体を目覚めさせるための時間的余裕が生まれます。もちろん、光を浴びることが大切です。
試験に向けた準備として、適度な水分と糖分を補給して体調を整えます。集中したい時間帯の前に、少量のカフェインを含んだ飲み物を摂るアイデアもあります。休憩時間にはストレッチを行い、血行を促進することが大切です。筋肉がほぐれるので、肩こりに対策にもなります。
試験中の集中力維持には、30分おきの深呼吸や、こまめな水分補給も効果的です。また、目の疲れを防ぐために、定期的に遠くを見て目の休息を取ることも忘れずにしてください。
3. 育児中の場合
育児中の眠れない朝は、パートナーと相談し役割分担を調整しましょう。実家の親族、子育て仲間に助けを求めることも一案です。また、子どもの昼寝時間に合わせて休息を取ることを心掛けます。安全な環境で遊ばせながら見守るなど、その日は必要最低限の家事と簡単な食事準備にすることで、体力の消耗を抑えることができます。
4. 運転がある場合
何よりも安全運転の義務を最優先に考える必要があります。長距離運転が予定されている場合は、公共交通機関への変更、ドライバーの交代などを勧めます。短距離であっても眠気を感じる場合は、運転を避けることが当然です。適宜、カフェイン摂取を行い、覚醒の維持に努めましょう。
眠気がなくても、15分おきに休憩を取り、車内の温度は眠気を誘わないよう、普段より低めに設定します。また、新鮮な空気で眠気を抑えるため、こまめな換気を心がけましょう。少しでも眠気を感じたら、迷わず安全な場所に停車して休憩を取りましょう。
5. 試合があるとき
小学生、中学生、高校生など、子どもが眠れないまま朝になったときは、成長段階による体力や回復力の違いと安全面での配慮が重要です。スポーツの試合中に事故が起こらないように注意しなければなりません。
参加の判断は子ども一人ではなく、必ず保護者や指導者と相談して行います。自己判断は避け、体調の変化を正直に伝えることが大切です。
大人と同じようなカフェインでの対処は避け、太陽光を浴びる、軽い運動を行うなど、自然な方法での覚醒を優先します。特に子どもは無理をしやすい傾向があるため、こまめな休憩と水分補給を心がけましょう。
著しい体調不良があるとき、試合内容によってケガのリスクがある場合は、参加を控える必要があります。まずは、顧問とコーチの判断を仰ぎましょう。
眠れないまま朝になったときの判断基準
眠れない朝を迎えた時、出勤や登校の判断に迷うことは自然なことです。まずは、あなたの体調をチェックしましょう。
めまいや重度の頭痛、吐き気などの症状がなく、普段通りに歩行や会話ができる状態であれば、活動は可能かもしれません。
ただし、その日の予定の内容も重要な判断材料となります。
特に注意が必要なのは、重要なプレゼンテーション、車両の運転、機械操作など、高い集中力や正確な判断力が求められる仕事です。これらが予定されている場合は、休養を検討することをお勧めします。
試験当日の状況なら、試験の重要度も考慮すべきでしょう。例えば、入学試験、資格試験など、一発勝負で代替の救済措置がないときは、体調が許す限り受験を考えざるを得ません。会場到着後、入室ぎりぎりまで仮眠をとるようにしましょう。
不眠は誰にでも起こりうることですが、複数回の受験のチャンスがあれば、次回への延期を視野にいれましょう。
休むべき体調の目安について
次のような症状が見られる場合は、休養を取ることを勧めます。
- 38度以上の発熱
- 頭痛がひどい
- 気持ち悪い状況が続く
- 倦怠感が強い
- めまい、ふらつきがある
一時的に眠れないまま朝になった状況でも、体調が回復すれば経過観察です。一方、不眠が続き日中の活動に支障をきたすようであれば、医師に相談しましょう。