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離婚で眠れないときの影響と対処法
離婚が増えています
結婚する決め手として、「愛情、経済力、価値観などが大切である」とされた時代がありました。しかし、昭和、平成から令和にかけて、ライフスタイルの多様性、結婚に対する意識の変化などがありました。離婚に対する考え方も、変容しています。
政府が行った世論調査によれば、未成年の子どもがいない家庭では、「夫婦の一方でも離婚を望んでいるのであれば、離婚した方がよい」と回答した割合が、42.4%でした。一方、「夫婦とも離婚を希望しているときは離婚した方がよい」と答えた割合は、43.1%でした。
未成年の子どもがいる家庭になると、子どもがいない家庭よりは「離婚を避けたほうが良い」と考える夫婦が増えます。しかし、夫婦の一方あるいは両方が離婚を希望しているなら、離婚をした方がよいと考える割合が、それぞれ、22.7%と36.6%になっています。
出典:離婚と子育てに関する世論調査(令和3年10月調査) – 内閣府
令和に入り、新型コロナ感染症の影響のため、働き方が大きく変わりました。さらに、ストレスを抱えていても、上手に解消する方法を見つられない人も増えました。
共同生活を送るにあたって、夫婦の考え方の相違が不安を引き起こします。そして、相手に対する苛立ち、不満が行動になって現れると、離婚が起きやすくなります。
出典:結婚と家族をめぐる基礎データ – 内閣府男女共同参画局
離婚件数は年間20万件くらいになっています。つまり、婚姻したカップルの3組に1組が離婚しています。
一年間で最も離婚件数が多いのは3月です。子どもの学校のこと、4月からの新年度を迎えるにあたり心機一転をしたいという要因があると考えられています。
離婚の原因ランキング
最高裁判所が開示している司法統計のデータをもとに、離婚の理由をランキング形式で紹介します。
離婚の調停を申立てた人の動機の中で「主なもの3つを挙げる方法」によって、集計されたものです。そのため、離婚の理由になった項目が、重複して数えられています。
出典:令和2年 司法統計 – 最高裁判所(婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所)
夫、妻ともに離婚の原因として最も多いものは、性格の不一致です。その次に多いものは、夫では、妻から精神的に虐待されていること、妻では、夫が生活費を渡さないことです。
お互い力を合わせて生活をしていることが理想ですが、パートナーとの考え方、価値観の違いがあると、ストレスが溜まります。さらに、配偶者から、悪意に満ちた暴言、人格の否定などの言葉をかけられると、精神的に参ってしまいます。人間不信になる人もいます。
上記のランキングにはありませんが、睡眠外来で相談に来る患者さんの中には、パートナーのいびきが問題で離婚を考えている場合もあるようです。寝室環境の音の問題はデリケートですが、夫婦関係に大きく影響する可能性があります。
離婚に関係して起きるストレス
パートナーとの関係を解消するときに、精神ストレスになる三つの要因は次の通りです。
- 離婚すべきか悩み、決断できない
- 配偶者との話し合いが不調である
- 分かれるときの条件で争っている
いずれの場合も、長期に続くと精神的苦痛になり、心が病むのも無理はありません。その結果、心が落ち着いた状態で、眠れないという状況になります。
プライベートなことなので、職場に知られたくない気持ちもあり、こころが疲れます。近所の人にも離婚を隠しておきたいと思う人もいて、恥ずかしい思いがあります。他人の目が気になり、些細なことに対して神経質になる場合もあります。
度重なるストレスのため、不眠になるのも無理はありません。
当事者にとってストレスになっている問題については、以下の通りです。
問題 | 具体的な例 |
---|---|
環境の変化 | パートナーがいない状況となり、一人で暮らすことになるので、慣れない。引っ越し、県外への転居をすることがあり、不安である。 |
経済的事情 | 生活する上で、現在の収入で暮らせるか心配である。慰謝料の問題、ローンの返済、老後の資金計画などを考える必要があるので、焦燥感がある。 |
子どもの養育 | 離婚後に親権をどうするか、養育費のこと、教育と進路の問題、子どもとのコミュニケーションがうまくとれるか、悩みがつきない。 |
夫が自閉スペクトラム症であるため、コミュニケーションが成り立たなくて、日常生活が困難になっている女性がいます。空気を読まない言動が積み重なり、モラルハラスメントになっている場合もあります。共同生活の継続が難しく、離婚を考える理由になるなっている事例は少なくありません。
離婚に関係して生じる症状
パートナーと別れることで生活が不安定になること、今後の見通しがつかないことなど、気がかりなことが増えます。大きなストレスを受け、自律神経の調節が乱れるので、身体とこころの不調が現れます。
離婚に伴って生じる睡眠障害が発生すると、数か月後に血圧が上がるという報告があります。体の健康面にも影響する可能性が考えられます。
出典:Sbarra DA. Divorce and health: current trends and future directions. Psychosom Med. 2015;77:227-36.
合併する睡眠障害の特徴について
最も多い睡眠の悩みは、不眠です。寝つきが悪い、途中で目が覚めてしまい再び眠れない、朝早い時間に目が覚めてしまうなどの症状が現れます。ストレスによって、パートナーと言い争いをしている嫌な夢を見たり、離婚後の生活のことを想起する悪夢を見たりする事例もあります。
寝不足になるので、日中の眠気、集中力の低下が出現します。その結果、家事、仕事に支障が出ます。
離婚に関わる精神的苦痛が続くこと、長期に渡って眠れないことが引き金となって、メンタルヘルスの不調が発生します。
離婚というパートナーの喪失体験がきっかけになり、うつ病を発症することがあります。
離婚に伴う不眠、メンタルヘルスの不調を解消するためには、何科の診察を受けると良いですか?
精神科、心療内科です。
対処法について
離婚後の新しい生活への第一歩を踏み出すことを計画している方は、離婚に関する基礎知識を知っておく必要があります。離婚をするときに考えておくべきこと(法務省)のページに記載されている情報を参考にしてください。
一人で考えても、どうすれば良いか分からず不安なときは、地域にある日本司法支援センター 法テラスに相談することも良い方法です。当事者の話し合いがまとまらないときには、家庭裁判所の離婚調停を利用することを考えましょう。
不眠の対策として、睡眠衛生の指導、睡眠薬の処方などを行います。抑うつ症状に対しては、抗うつ剤を使うこともあります。診断書が必要な場合は、医師に相談しましょう。
出典:Sleeping Pills: Types, Side Effects – Cleveland Clinic