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肥満に合併した睡眠関連低換気障害
肥満低換気症候群とは
高度の肥満によって呼吸機能が低下して、体内にある二酸化炭素の排出が不十分になる病気です。睡眠中の呼吸異常と日中の眠気が出現します。睡眠時無呼吸症候群を合併することが多いです。
以前は、ピックウィック症候群という名称で呼ばれることもありましたが、現在では、あまり使われていません。
どんなときに難病に指定されますか。
覚醒時の肺胞低換気がCPAP治療によって改善せず、呼吸調節系の異常が強く疑われ、肺胞低換気症候群と診断される場合です。
原因について
肺胞低換気症候群の詳しい原因は分かっていません。脳の呼吸を調節する部位の障害によって、引き起こされていると考えられています。
高度の肥満によって、呼吸筋の機能が低下します。その結果、肺の換気機能が不十分になり、睡眠中に血液中の二酸化炭素が増え、低酸素血症が起きると推定されています。
出典:Obesity hypoventilation syndrome – MedlinePlus
症状について
睡眠中および覚醒時に低換気が生じるため、中途覚醒、日中の眠気、頭痛が出現します。ぐっすり眠れないので、集中力の低下と疲労感が起きます。過眠の傾向を呈します。
睡眠時無呼吸を併発することが多いので、いびきをかくことがあります。よくある合併症として、高血圧、右心不全、二次性多血症があります。
出典:Obesity Hypoventilation Syndrome – National Heart, Lung, and Blood Institute
チェックリスト
肥満低換気症候群の患者にみられる症状をチェックしてみましょう。
- 息切れ
- いびき、無呼吸がある
- 眠りが浅い
- 日中の眠気が強い
- 朝方に頭痛がある
- うつ症状
- 疲労感
診断の方法
身体の計測によって、肥満(BMI:30kg/m2以上)であることを判定します。
換気の不良を証明するため、動脈血のガス分析によって、二酸化炭素分圧(PaCO2)が45Torr以上であることを確認します。カプノグラムによって呼気終末二酸化炭素分圧の上昇を確認することでも、代用できます。
さらに、終夜睡眠ポリグラフ検査によって、夜間の睡眠と呼吸の状態を評価します。睡眠時無呼吸があると、低酸素血症を呈することが多いです。PSG検査機器に鼻腔または口腔より呼出される二酸化炭素を検出するCO2モニターがあれば、より詳しい評価が可能です。
以上の検査によって、肥満低換気症候群を診断することができます。
どの診療科に受診すれば良いですか?
呼吸器内科の診察を受けることを勧めます。
治療法について
減量が肥満低換気症候群の症状を根本的に解決する方法です。食事療法を中心にしていき、体重を減らす方向で対処します。
しかし、現実的には、高度の肥満があるため、減量手術を行わずに体重を減らすことが困難であることが多いです。そのため、外科で減量手術を検討することがあります。
出典:Masa et al. Obesity hypoventilation syndrome. Eur Respir Rev. 2019;28(151):180097.
米国胸部学会のガイドラインによれば、重度の睡眠時無呼吸症候群がある場合、呼吸補助療法の中で、第一選択としてCPAP治療を行います。
高度の肥満によって上気道の狭窄が強いことが多いので、高い圧設定となり呼気が困難となること、低酸素血症が改善しないことがあります。そのときは、呼吸障害に対して、非侵襲的陽圧換気による治療を開始します。NIPPVと呼ばれることがあり、主に二酸化炭素が体内にたまるⅡ型呼吸不全に効果があります。
この治療法では、呼気と吸気を個別に圧設定ができます。上気道を拡げるだけではなく、換気不全を解消することができます。二つの圧を気道に負荷するため、Bilevel PAPとも呼びます。
肥満低換気症候群は未治療の場合、予後が不良であり、死亡リスクが高いことが知られています。そのため、早期の治療介入が重要です。