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入眠時幻覚の症状と対処法
睡眠関連幻覚とは
私たちが寝始めるとき、あるいは、睡眠から覚醒するときに幻覚が生じる睡眠障害です。眠りに入ってからすぐに幻覚が現れる症状を、入眠時幻覚と呼んでいます。医学的には睡眠時随伴症に分類されている病気です。
原因について
入眠時に幻覚が生じる詳しい理由は、分かっていません。アルコール、睡眠不足、不眠、ストレスなどは、要因になっています。健常者でも起こることがあり、朝方のレム睡眠から目覚めるときに、幻覚を経験する場合もあります。
こころの病気の中で、うつ病、双極性障害、統合失調症、そして、過眠症の一種であるナルコレプシーでは、入眠時幻覚が起きることがあります。
なぜナルコレプシーで、寝入りばなに幻覚が出現するのかというと、レム睡眠が入眠の直後に出現するからです。
出典:Symptoms of Narcolepsy – Harvard Medical School
薬剤の副作用のため、幻覚が生じる場合もあります。例えば、デエビゴ、ベルソムラなどのオレキシン受容体拮抗薬の副作用として、幻覚が現れる人もいます。
睡眠関連幻覚の症状
いつ幻覚が起きますか?
眠りに入るとき、または、眠っている状態から目覚めるときに幻覚が生じます。すなわち、覚醒から睡眠への移行期であるヒプナゴジアと睡眠から覚醒への移行期であるヒプノポンピアのときに発症します。
どんな幻覚がありますか?
主として幻視を経験し、現実感のある映像です。通常、怖い思いをします。ときどき、声が聞こえる幻聴、何者かに体を触られるような感覚がある幻触を発症することがあります。皮膚に虫が這っている感じがするという身体幻覚を訴える人もいます。
悪夢障害との違いは何ですか?
悪夢から目覚めたときは、自分が眠っていたときに起きた現象であることを認識することができます。すなわち、自分が見たものは夢であり現実のものではないことを明確に理解しています。一方、睡眠関連幻覚では、寝ているときに起きた現象であるか、起きているときの現象であるか、はっきりと自覚できません。
金縛りを合併することはありますか?
睡眠関連幻覚と睡眠麻痺は、同時に起きることがあります。現実的で鮮明な幻覚をみるときに、体を動かせず、声も出せないので、恐怖、不安を感じることがあります。
統合失調症による幻覚との違いは何ですか?
症状が出る時間、特徴、幻覚への捉え方などが異なります。
睡眠関連幻覚 | 統合失調症の幻覚 | |
---|---|---|
発症の時間 | 睡眠と覚醒の移行時のみ(半覚醒のとき)症状が出る | 時間を問わず起きる、昼間に起きているときにも起きる |
症状の特徴 | 幻視が多い | 幻聴が多い |
本人の認識 | 幻覚について実在の現象ではないと理解する | 実際に自分が見たり、聞いたりしたと信じ込む |
診断の方法
視覚を主体とした幻覚が、寝入りのとき、または、夜間帯や朝に目が覚めるときに生じることを確認します。そして、ナルコレプシーなどの睡眠障害、精神疾患、薬剤の可能性を除外することが重要です。
外来での問診が主体になりますが、幻覚の回数や発症時間を評価するために睡眠日誌を記録することがあります。
他の睡眠障害が疑われるときは、終夜睡眠ポリグラフ検査を施行します。日中の過度の眠気があり、入眠時幻覚が起きることがあれば、ナルコレプシーの診断方法として、反復睡眠潜時検査が必要です。
何科の診察を受けるべきですか?
精神科、脳神経内科です。
対処法について
十分な睡眠時間をとること、規則正しい睡眠リズムを励行すること、そして、アルコール摂取を中止することは、睡眠時随伴症の症状を抑えるのに重要です。通常は、時間経過で幻覚の症状は消退していきます。
幻覚が生じることで、うまく睡眠がとれないとき、あるいは、不安で眠れないときは、医師は薬剤による治療を行います。現在、あなたが服用している不安障害、うつ病に対する治療薬がが睡眠中の幻覚を引き起こしているときは、薬剤の変更を考えます。
出典:Sleep Hallucinations – Sleep Education by the AASM
ナルコレプシーの症状として入眠時幻覚が発症している場合は、過眠症の精査と治療が必要です。