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不眠症治療薬:ボルノレキサント水和物の特徴
ボルズィとは

ボルズィ(一般名:ボルノレキサント水和物、開発コード:TS-142)は、覚醒を促す神経伝達物質であるオレキシンの受容体に作用することで、睡眠を促進する働きを持つ睡眠薬です。自然に近い睡眠パターンを促し、入眠困難および中途覚醒を改善することが期待されています。
厚生労働省により「不眠症」を効能・効果として承認されており、新しい不眠症治療薬として販売される予定です。薬剤の消失半減期が短いため、従来からある睡眠薬で課題となりやすい翌朝の持ち越し効果が少ない点も特徴です。
日本では、いつボルズィは発売される見込みがありますか?
国内では、大正製薬が2025年8月25日に厚生労働省から製造と販売の承認を得ていることから、早ければ年内に上市されると推測されます。
どんな剤型があるか?
ボルズィ錠として、2.5mg、5mg、10mgの3種類です。
※ジェネリック医薬品は、ありません。
効果について

ボルズィ(有効成分:ボルノレキサント水和物)に関する効果について、医学論文をもとに解説していきます。
2020年に報告された論文によれば、ボルノレキサントは、オレキシン受容体の2種類のサブタイプ(OX1RおよびOX2R)に対して拮抗する働きが明らかになっています。
有効成分が脳内で覚醒を促す物質の活動を抑える作用を保ちながら、体内で過度に蓄積することなく効率的に代謝されます。
その後、ボルノレキサントの代謝と分布に関する「ラットと犬を用いた基礎実験」の報告がありました。その結果によれば、ボルノレキサントは投与直後に速やかに吸収され、24時間以内に代謝されました。ヒトの肝細胞での代謝も調べられ、データが類似していることが判明しました。
ボルノレキサントがヒトに投与された場合の最高血中濃度到達時間および消失半減期はどのくらいですか?
健康な日本人を対象とした臨床試験のデータによれば、絶食状態においてボルノレキサントを服用した場合、最大血漿濃度に達するまでの時間は、0.5~3時間でした、一方、消失半減期は、1.32~3.25時間でした。
ボルノレキサントの第II相臨床試験では、終夜睡眠ポリグラフ検査による評価において、客観的な指標である睡眠潜時(LPS)、中途覚醒時間(WASO)の改善が観察されています。
第III相臨床試験においても、ボルノレキサント水和物の不眠症患者を対象とした入眠効果と睡眠維持効果が確認されています。これまでに報告されたデータを総合すると、ボルノレキサントは効果の発現が早いこと、そして、消失半減期が短く、投与翌日の持ち越し効果が少ないという特徴があります。
日本国内では、スボレキサントおよびレンボレキサントの2種類のオレキシン受容体拮抗薬が不眠症の治療薬として利用されています。それらの薬剤と比較すると、ボルノレキサントの半減期が短いです。その事実から、ボルノレキサントは、睡眠薬の持ち越し効果で悩んでいる不眠症患者にとって福音になる可能性があると、筆者は推測しています。特に、寝つきが悪いときに用いる睡眠薬として候補になる可能性があります。ただし、今後の詳細なデータ解析で、より詳しい情報が判明するでしょう。
安全性と有害事象について
ボルノレキサントの安全性データについては、第III相臨床試験によれば、軽度の有害事象が確認されています。具体的には、傾眠、上咽頭炎、発熱などです。それに対して、重篤な有害事象は認められなかったと報告されています。
まとめ
ボルズィは、近い将来、新しいオレキシン受容体拮抗薬として実際に処方できるようになれば、不眠症治療の新たな選択肢になる可能性があります。薬剤の特徴として、早期の効果発現と次の日への影響が少ないことは、注目に値します。
今後、ボルズィはベルソムラ、デエビゴ、クービビックに次ぐ、四番目のオレキシン受容体拮抗薬として期待されています。そして、従来の薬が合わず不眠の治療を断念した人にとっても、新しい希望を与えるかもしれません。