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心身症があって眠れない人の対処法
心身症とは
心理的あるいは社会的な要因によって、身体の病気が出現している状態を意味します。ストレスによって心の病態が不安定になることで、さまざまな臓器の症状が現れる病態です。
ただし、神経症、うつ病、他の精神疾患に伴う身体症状は、除外されています。
どんな身体の病気があるか?
具体的な病気として、胃潰瘍、過敏性腸症候群、本態性高血圧、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、頭痛などが知られています。
子どもの場合、どんな病気が多いですか?
気管支喘息とアトピー性皮膚炎、周期性嘔吐症などです。小学生の高学年からは起立性調節障害が多くなります。一方、中学生、高校生では、摂食障害、過敏性腸症候群、過換気症候群が増える傾向です。
女性では、どんな病気が知られていますか?
代表的な病気として、月経困難症、続発性無月経、月経前症候群があります。中年以降になると、更年期障害があります。
心身症が発症する原因
さまざまなストレスがどのように身体に影響を与えるかについて、まだ完全には分かっていません。しかし、ストレスが脳に作用し、自律神経やホルモンの分泌、免疫系のバランスが崩れることで、身体の機能に問題が生じることが指摘されています。
具体的には、心理的な要素(健康上の悩み、未来への不安、失ったものへの悲しみ、孤独感、失敗や挫折の経験など)や、社会的な要素(家族や職場、プライベートな人間関係、経済的な問題など)、さらには、個人の性格や考え方など、さまざまな要因が絡み合って身体の症状が発現します。
症状について
体の病気に関係する症状が現れます。臓器が障害されている症状と全身症状があり、代表的なものを次に示します。
領域 | 症状 |
---|---|
頭部 | 頭痛、頭が重い、脱毛 |
耳 | 耳鳴り、めまい、浮遊感 |
のど | 異物感(つまった感じ) |
肺 | 息苦しい、咳が止まらない |
心臓 | 動悸、胸痛 |
食道 | 胸やけ、胸部不快感 |
胃腸 | 腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘、吐き気 |
関節 | 疼痛 |
皮膚 | 痒い、発赤 |
全身 | 倦怠感、血圧が高い |
心身症の人は、自分が受けたい医療に出会えないことに、苛立ちが生じることがあります。さらに、病状に対する不安と抑うつ症状が現れることがあります。そのため、自分が納得できる診療を求めて、ドクターショッピングをする傾向があります。
出典:Psychosomatic Disorder – Cleveland Clinic
診断する方法
身体の病気があるときに、発症あるいは経過に心理社会的ストレスが密接に関わっていると判断される場合に、心身症と診断することができます。
心身症であると判定する手がかりとして、症状がストレスの強弱によって、病状が重くなったり、軽くなったり、変化することが多いです。さらに、ストレッサーが取り除かれないと、再発する傾向があります。
最後に、神経症、うつ病など、「こころの病気」に伴う身体症状を除外することが大切です。
何科を受診すれば良いですかか?
発症している病気を専門に診る診療科および心療内科、精神科です。
合併する睡眠障害の特徴
心身症になっている人は、身体症状に対する不安があるので、眠れないという睡眠トラブルを抱える傾向にあります。
健康不安が続くことが多く、自律神経にも大きく影響します。そのため、寝つかれない、途中で目がさめてしまう、眠りが浅いといった症状が現れます。
病気のことが気になり、ぐっすり眠れないので、翌朝に寝不足を感じます。
「眠れないこと」は、病気にかかるリスクを高めたり、すでに病気にかかっている場合は病状を悪化させることがあります。つまり、「眠れないこと」と病気は、相互に影響しあう関係と言えます。
出典:山寺 亘;心身疾患における不眠症の特徴と対応, Jpn J Psychosom Med;58:606-611,2018
治療について
心身症の治療は「身体の病気」ですが、こころの状態が発症に深く関わっています。そのため、「体の病気に対する治療」および「こころのケア」が必要です。
種類 | 特徴 |
---|---|
体の病気の治療 | 内科的な病気を診断するための検査を行った上で、身体の症状を和らげる薬を用います。 |
精神症状に対する治療 | こころの状態を落ち着かせるために、自律神経を調節する薬あるいは抗不安薬を用います。 |
心身症の症状に効果がある薬の種類とは?
デパス、リーゼ、ソラナックス、ワイパックス、セルシン、メイラックスなど、ベンゾジアゼピン系の薬剤です。
不眠に対しては、どのように対処しますか?
睡眠薬が用いられるほか、精神不安を和らげて入眠を促す効果がある漢方薬が選択される場合があります。
病気の発症には、生活習慣の関係もあることから、食事、運動、嗜好品(アルコール、たばこ)など、身体疾患に影響するものついて是正します。
さらに、こころをリラックスさせる方法について学習したり、より良い考え方や行動様式に気付くようにしたり、カウンセリングが行われます。
予防について
体の病気は、こころの状態が要因になって発症します。日常生活の中で、さままざなストレスを受けることがあります。 日頃から自分にあったストレス解消法を実践することが大切です。
しかし、自分が対処できないほどのストレスの場合があります。その場合は、あなたが抱えている悩みを人に話して、相談にのってもらうことが大切です。
ささいな出来事や問題に対して強く反応してしまうタイプ、責任感が強く何事にも完璧を求めすぎるタイプは、自分が知らないうちに、こころの負担になり、疲れを感じていることが多いです。「心の持ち方」について、見直す機会を設けましょう。
生活面では、不眠、睡眠不足があると、こころの状態が不安定になることがあります。普段から寝不足にならないように十分な睡眠時間を確保しましょう。