- ホーム
- 危険な髄膜炎を予防するためのワクチン
危険な髄膜炎を予防するためのワクチン
髄膜炎菌ワクチンとは
髄膜炎菌が引き起こす重篤な感染症(細菌性髄膜炎、菌血症、敗血症など)を予防するための不活化ワクチンです。
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis )はグラム陰性好気性双球菌ですが、さまざまな血清型があります。具体的には、A、 B、 C、D、X、 Y、Z、 E、W-135、H、 I、K、Lなどがあります。起因菌のほとんどがA、B、C、Y、W-135であることが分かっているので、それらの血清群に効果のあるワクチンが研究および開発されている経緯があります。
髄膜炎を発症すると生命の危険に及ぶことがあります。WHOの見解によれば、致死率が5~15%と概算されており、子どもや若い大人世代において、7~14年の周期で流行することが報告されています。そのため、予防することが大切であると言えます。
出典:Meningococcal vaccines – World Health Organization
効果について
国内で利用することができる髄膜炎菌ワクチンの名称は、メンクアッドフィです。このワクチンを接種すると、髄膜炎菌(血清群A、C、W及びY)が引き起こす侵襲性髄膜炎菌感染症を予防する効果があります。ただし、血清群Bの髄膜炎菌への予防効果はありません。
メンクアッドフィを利用できる前までは、メナクトラという名称のワクチンが主流でした。メンクアッドフィは、メナクトラと比較して、有効成分が増量されており、結合タンパクがジフテリアトキソイドから破傷風トキソイドへと変更されています。その結果、メンクアッドフィは、従来、使用されていたメナクトラより高い予防効果があります。
なぜメンクアッドフィの注射を受けると、髄膜炎菌の感染症を防ぐ効果があるのですか?
髄膜炎菌から分離精製した多糖体(破傷風トキソイドタンパク質と結合させたもの)を体内に接種すると、私たちの免疫システムは異物と認識し、それに対して抗体を産生します。そして、その後に髄膜炎菌に接触した場合、ワクチンによって学習した免疫システムが髄膜炎菌と効果的に戦うことができます。結果として、私たちを病気から守るのに役立ちます。
出典:MenQuadfi – European Medicines Agency
副作用について
髄膜炎菌ワクチンを接種した部位の違和感、発赤、疼痛があります。
頻度は少ないですが、発熱、頭痛、全身倦怠感が生じる人もいます。筋肉注射であるので、注射部位の筋肉痛を訴える場合もあります。稀ですが、アナフィラキシーショックを起こします。
どんな人が髄膜炎菌ワクチンを受けるべきか?
髄膜炎菌ワクチンを受けるべき人は、次に該当する方々です。
- 中央アフリカおよび中近東の地域を訪問する人
- 海外留学を予定している人
- 寮生活、集団生活を送る人
アフリカのサハラ砂漠より南の国々は髄膜炎ベルト呼ばれています。この地域に旅行する場合は、ワクチン接種が勧奨されています。
さらに、メッカの巡礼のためにサウジアラビアに渡航するときは、現地に到着する日の3年以内かつ10日以上前に発行された4価(ACYW135)の髄膜炎菌ワクチンの接種証明書を提出しなければなりません。人々が密集しやすい環境であり、飛沫感染によって伝播されやすいので、ワクチンによる予防が大切です。
出典:Hajj and Umrah Health Requirements – The Embassy of The Kingdom of Saudi Arabia
国内においても、高校生、大学生の寮、合同キャンプ大会(スカウトジャンボリー)において、髄膜炎菌感染症が発生した事例があります。たくさんの人数が集まる場所での活動は、髄膜炎菌に感染するリスクが高いと言えます。特に、免疫システムに関係する第 5~9 補体欠損症は,髄膜炎菌感染症発症の危険因子になると報告されています。
出典:阪本 直広 他; 寮生活中の学生に繰り返された髄膜炎菌性髄膜炎の1例, 日本内科学会雑誌;106(12):2603-2610,2017
筆者のワクチン外来では、警察学校の寮、高校あるいは大学の寮生活が予定されている人が受ける場合が多いです。米国に留学する学生が予防接種を受けに来るケースも増えています。自分の子どもが寮生活を送ることが分かっている場合は、髄膜炎菌ワクチンを接種しておくことを勧めています。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)あるいは非典型溶血性尿毒症症候群の治療として、ソリリス(一般名:エクリズマブ)が投薬されている人は、髄膜炎菌感染症の発生率が高くなります。そのため、同薬剤が投与される前に、髄膜炎菌ワクチンを接種することを考慮します。この場合は、健康保険の適用が認められています。
出典:eculizumab 使用に関する注意喚起 – 日本腎臓学会
いつ予防接種を受けるとよいか?
接種スケジュールは、2~55歳で1回接種です。
何回接種すればよいか?
大人の場合、原則、1回です。ただし、ワクチン接種を受けてから5年経過した時点で、髄膜炎菌の感染リスクが高い条件で生活を送るときに、追加接種を検討します。
接種方法は?
左右どちらかの上腕の三角筋あるいは大腿の前外側部に筋肉内注射を行います。一般的には、利き手でないほうの腕に接種することが多いです。
定期接種に指定されていますか?
日本では、髄膜炎菌ワクチンは定期接種に指定されていません。一方、海外では、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、オランダなどで、定期接種のプログラムが導入されています。
費用について
メンクアッドフィ筋注(0.5ml) : 27,500円(税込)
※ワクチン取り寄せのため、事前の支払いが必要です。
※予約制です。