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クービビックとデエビゴの効果の違い
はじめに
睡眠障害に悩んでいる人にとって、質の良い眠りを取り戻すことは生活の質を大きく向上させる大切な要素です。近年、睡眠薬の分野で注目を集めているのが、オレキシン受容体拮抗薬です。このタイプの睡眠薬は、従来からあったベンゾジアゼピン系の睡眠薬と異なる作用機序をもっており、自然な睡眠を促すことが期待されています。そして、そして、依存性が少ないという特徴があります。
オレキシン受容体拮抗薬は、2014年にベルソムラ(一般名:スボレキサント)が世界で初めて発売されました。そして、2020年には、デエビゴ(一般名:レンボレキサント)が処方できるようになりました。そして、その4年後、2024年12月19日、ヨーロッパ、米国において先行して医薬品として承認されていたオレキシン受容体拮抗薬QUVIVIQが、国内でクービビックという薬剤名として上市されました。
3剤とも目覚めを促す働きのあるオレキシンの作用を弱める点では同じですが、薬の効き目、効果が発現するまでの時間、剤型、薬理作用は異なります。
そこで、国内において処方患者数が多いデエビゴと新薬のクービビックの違い、使い分け、選び方のヒントを解説します。
クービビックとデエビゴの比較
デエビゴ | クービビック | |
---|---|---|
製造会社 | エーザイ | イドルシア |
有効成分 | レンボレキサント | ダリドレキサント |
剤形 | 2.5mg、5mg、10mg | 25mg、50mg |
一包化 | できる | できる |
効能と効果 | 不眠症 | 不眠症 |
成人の用量 | 5mg~10mg(最大) | 50mg |
高齢者の用量 | 5mg~10mg(最大) | 25mg |
CYP3A阻害薬併用時の用量 | 2.5mg | 25mg |
禁忌 | 重度の肝機能障害 | CYP3Aを強く阻害する薬剤投与中、重度の肝機能障害 |
最高血中濃度到達時間 | 1.5時間(10mg反復投与) | 1.0時間(50mg反復投与) |
血中濃度半減期 | 47.4時間(10mg 反復投与) | 6.6時間(50mg 反復投与) |
副作用 | 傾眠、頭痛、倦怠感、浮動性めまい、異常な夢、悪夢、悪心、体重増加 | 傾眠、頭痛、浮動性めまい、悪夢、睡眠時麻痺、異常な夢、入眠時幻覚 |
出典:デエビゴ– KEGG , クービビック– KEGG
効き目が長い薬はどちらか?
両薬剤の添付文書によれば、デエビゴの血中濃度半減期は、クービビックよりも長いことが分かっています。したがって、薬の有効成分が体内で代謝される時間を考慮すると、デエビゴのほうが効果時間が長く、効き目が長いと考えられます。もちろん、年齢、体質などの個人差があります。
副作用が少ない薬剤はどちらか?
レンボレキサントとダリドレキサントという二つ新しい不眠症治療薬の効果と安全性を間接的に比較した海外の研究があります。その報告によれば、ダリドレキサントのほうが、副作用が少ない傾向であるという結果が判明しました。具体的には、ダリドレキサントの特徴として、眠気や疲労の発生率が低いことがあげられます。
デエビゴとクービビック:薬価の違い
1.デエビゴの価格
レンボレキサント | 薬価 |
---|---|
デエビゴ錠2.5mg | 52.1円/錠 |
デエビゴ錠5mg | 82.7円/錠 |
デエビゴ錠10mg | 123.6円/錠 |
2.クービビックの価格
ダリドレキサント | 薬価 |
---|---|
クービビック錠25mg | 57.30円/錠 |
クービビック錠50mg | 90.80円/錠 |
デエビゴとクービビックを併用してもよいか?
クービビックとデエビゴは、両方ともオレキシン受容体拮抗薬に分類されており、同時に服用することはできません。
使い分けのヒント
中途覚醒および早朝覚醒で悩んでいるときに、クービビックとデエビゴは、症状の改善に役立ちます。両者の薬理作用の特徴を考えると、入眠困難にも応用できる睡眠薬と言えます。
オレキシン受容体拮抗薬の懸念事項として、翌朝に眠気が残ってしまう心配があります。その場合は、デエビゴより半減期が短いクービビックを選択してみるプランがあります。
応用編として、入眠困難に対して処方されることが多い超短時間型の睡眠薬、例えば、マイスリー、ルネスタからの切り替えにクービビックを試してみることを提案します。
高齢者で、薬の一包化が必要になるとき、他の薬剤との相互作用が懸念されるときは、デエビゴの選択を考慮します。なぜなら、デエビゴはクービビックと比較すると併用禁忌の薬が少ないからです。もちろん、両薬剤を用いるときは、投与前に肝障害の有無について、忘れずに血液検査による評価をしておきましょう。
筆者は、入眠困難ならダリドレキサントを検討します。なぜなら、デエビゴよりも半減期が短く持ち越し効果が少ないと考えられるからです。つまり、一旦、寝付いてしまえば朝まで眠れるのに、寝つきが悪くて困っているという人に対しては、クービビックが選択肢になると考えています。
一方、中途覚醒あるいは早朝覚醒がある場合ならでデエビゴを試みる目安があると考えています。半減期が長いので、朝までの持続効果が期待できるからです。そして、デエビゴには3つの剤型があり、用量の調節がしやすい点があることも理由の一つです。