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双極性障害の人に多い睡眠の悩み
双極性障害とはどんな病気か?
双極性障害とは、うつ状態と躁状態のエピソードが繰り返す「こころの病気」です。躁うつ病と呼ばれることがあります。10代後半から20代にかけて発症することが多く、有病率は、0.4~0.7%と概算されています。
出典:こころの病気を知る 双極性障害(躁うつ病) – 厚生労働省
原因について
双極性障害の正確な原因は、まだ明らかになっていません。いくつかの要因が発症に関わっていると考えられています。脳内で作られる神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン、ノルアドレナリン)のバランスが崩れていることが、病因として想定されています。
家族性に発症することがあり、遺伝の影響もあるようです。ただし、原因となる遺伝子は特定されていません。
出典:Causes – Bipolar disorder – NHS
双極性障害が発病する誘因は、何ですか?
家族および仕事のストレス、病気、外傷などは、発症の引き金になることが知られています。
出典:What Should I Know about Bipolar Disorder (Manic-Depression)? – Canada.ca
症状について
活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態が交互に出現します。
症状 | 特徴 |
---|---|
躁病エピソード | 気分が高揚し、何でもできるという感覚に満ちあふれます。次々にアイデアが湧いてきて、睡眠時間が短くても活発に活動します。自分が偉くなったという気持ちになる一方、生活面では、散財が目立つようになります。性的に奔放になるという問題もあります。躁状態になると気分がよいので、本人の病識がありません。 |
うつ病エピソード | 意欲が低下し、普段行っていることに興味を示さなくなります。憂うつな気分が続き、孤立感を自覚します。会話のスピードが落ち、考えがまとまりません。食欲の低下が多くみられますが、過食になる場合もあります。自分には価値がないと思い込む傾向があり、「死にたい」という気持ち(希死念慮)が出現する場合があります。 |
出典:Bipolar Disorder – MedlinePlus
双極性障害は症状の現れ方によって、二つの種類に分けられています。1型と2型の違いは、次の通りです。
双極Ⅰ型障害 | 双極Ⅱ型障害 | |
---|---|---|
性差 | 男女の差はない | 女性に多い |
うつ状態 | あり | あり |
躁状態 | はっきりと出る | Ⅰ型より軽い |
躁の期間 | 7日以上 | 4日以上 |
双極Ⅱ型障害の軽躁状態について、本人は自覚していない場合があります。うつ状態が生じることで初めて「自分は、病気ではないか」と判断することが多いです。そのため、病院において、うつ病と診断されている場合があります。
診断の方法
医師による問診によって、症状と経過の確認をします。双極性障害を適切に診断するために、診断基準(米国精神医学会のDSM-5)が使用されます。
躁病、うつ病エピソードの確認と症状の変化、そして、他の要因となる病気、薬剤などの影響が除外されていることを確認して、双極性障害と診断します。
合併しやすい睡眠障害の特徴
双極性障害を発症している人では、不眠と過眠を呈する睡眠障害が現れます。過眠症の症状は、若い世代、双極1型障害、そして、抗うつ薬を服用している場合に出現しやすいことが報告されています。
うつ病エピソードの期間には、単極性うつ病と同じく、不眠を認めることが多いです。過眠を呈することもあり、周りの人から寝すぎと言われることもあります。
躁病エピソードのときは、入眠困難と中途覚醒が現れますが、睡眠時間が短くなります。躁状態にあるため、普段より睡眠が少なくても、疲れを感じることがない場合が多いです。
出典:内山 真 他, 精神疾患にみられる不眠と過眠への対応,精神神経学雑誌,122,899-905,2010
睡眠覚醒リズムの障害も併発している場合があります。具体的には、双極性障害の10%程度に睡眠相後退が認められたことが報告されています。睡眠相が後退している人は、若い年齢、BMI高値、意欲と活動性の障害があることが関係しています。
睡眠時無呼吸は双極1型障害の人に併発することもあるので、注意を要します。特にBMIが高い人、腹囲が大きい人は睡眠時無呼吸の発症リスクが高くなります。
治療に使われている薬の影響によって、上気道の筋緊張が低下して無呼吸発作が生じやすくなります。さらに、薬の副作用による食欲の亢進が引き起こす体重増加も、睡眠時無呼吸の発症リスクとなります。
一般的に、気分障害の治療を受けていて、精神症状が改善しない人の中で、睡眠時無呼吸が併発している場合があります。いびき、日中の眠気、集中力の低下などの症状について、確認を勧めます。そして、症状が気になるときは、終夜睡眠ポリグラフ検査による評価を検討しましょう。
治療について
双極性障害の症状があるときは、精神科専門医による診察を受けることが重要です。気分安定薬や非定型抗精神病薬によって治療します。
躁の症状、うつの症状が重度であり、日常生活が困難になっているときは、入院による治療を行います。
その他、心理教育、認知行動療法なども行われます。家族の本人に対する接し方、日常生活のでの過ごし方について、理解を深めることが大切です。
出典:Bipolar disorder – Mayo Clinic
病状が重く、長期の療養が望ましいと判断されたときは、休職あるいは休学が必要になる場合もあります。