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春に多いカバノキ科ハンノキ属の季節性アレルギー性鼻炎
春のハンノキ花粉症を理解しましょう
春の到来はうれしいことですが、ハンノキ花粉症に悩むあなたにとっては違うかもしれません。毎朝、鼻水とくしゃみに悩まされる日々になります。
花粉症に悩む多くの人々にとって、外出時の不快感、そして重要な仕事中にも集中できない苦痛は、共通の悩みです。日々の生活にストレスをもたらし、精神的な不安を引き起こすことさえあります。さらに、ハンノキ花粉症は口腔アレルギー症候群のリスクもあるので、特定の食品についても注意しなければなりません。
このブログ記事では、カバノキ科のハンノキ花粉症に対する疑問と悩みに応えます。具体的には、注意すべき症状、日常生活での予防策から効果的な治療法、口腔アレルギー症候群への対応まで、実用的な情報をお伝えします。
ハンノキ花粉の特徴を知る
ハンノキは日本全国に広く分布し、特に湿地や沼地などの湿潤な環境に自生しています。
シラカバと同じく、カバノキ科の落葉高木で、10~20メートルの高さまで成長します。榛の木と表記されることがあります。春になって雄花序が開花すると大量の黄色い花粉を放出します。花粉のサイズが小さいため、風に乗って遠方まで運ばれます。そして、春季のアレルギー性鼻炎・結膜炎を引き起こす原因となります。
地域によって異なるものの、ハンノキ花粉は一般的に1月から5月にかけて飛散する傾向にあります。特に3月中旬から4月中旬は飛散量がピークに達すると予想されています。
ハンノキ花粉の飛散時期がスギやヒノキの花粉と重なることが多いため、そのアレルゲンとしての存在が見過ごされがちです。この理由によって、あなたのアレルギーの原因を正確に見分けることが大切です。
春から初夏にかけて、どんな順番で原因となる植物の花粉があるか知りたいと思う人もいるでしょう。一般的には、本州では年明け1月からハンノキの飛散が始まり、その後、スギ、ヒノキそしてイネ科の植物の花粉の飛散が続きます。それに対して、北海道ではスギとヒノキ飛散がみられず、ハンノキからシラカバ花粉のシーズンに突入します。
症状について
ハンノキ花粉症にみられるアレルギー症状には、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみや充血などがあります。これらの症状は、3月~5月までの期間に目立つようになります。この時期は、ハンノキ花粉の飛散量が多くなる時期に一致しています。
目と鼻の症状に加えて、喉の違和感、咳など、上気道と下気道のアレルギー症状が同時に見られることがあります。
北海道にはスギ花粉は飛散しないのですが、本州において、スギとハンノキが混在している地域があります。その場合は、ハンノキ花粉症である人が、本当はスギ花粉によるアレルギー症状と思い込んでしまうことがあるかもしれません。
春のシーズンになると花粉症で悩んでいる人からの相談が増えます。初診のときに悩んでいる症状と受診を決意した経緯について聞き取ると、若い世代から高齢者まで、憂うつな体験をされている印象です。
「会社員ですが、ハンノキ花粉症のせいで春が苦痛です。仕事中、鼻水とくしゃみが止まらず、メイクも台無しになります。同僚にも心配されるので、なんとか改善したいと思っています。」
「ハンノキ花粉症に悩む30代の会社員です。数年前に本州から札幌に転居しましたが、毎年、春になると、鼻水とくしゃみが止まらず、大事な会議中でも集中できません。特に外回りの仕事の日は、花粉の影響で本当に大変です。」
「春はハンノキ花粉症の症状で、私にとって大変な季節です。屋外での工事作業中に目のかゆみと鼻水で集中できず、作業効率が大幅に低下してしまいます。同僚にも迷惑をかけ、自分自身も非常につらいです。」
「高校一年生になり、新しい環境での部活にワクワクしていましたが、鼻炎の症状がひどくて・・・。練習中もくしゃみが止まらず、チームに迷惑をかけている気がして落ち込んでいます。」
口腔アレルギー症候群とハンノキ花粉症
口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)は、特定の食品を食べた後に、唇、口の中、のどの粘膜が腫れたり、痒みが出たり、ヒリヒリ感が生じたり、アレルギー反応が現れる病気です。
ハンノキ花粉症のある人が口腔アレルギー症候群を発症する場合があり、これは交差反応が発症メカニズムに関わっています。つまり、私たちの体が花粉と似たタンパク質の構造をもっている食品に対してもアレルギー反応を示してしまうものです。
具体的には、ハンノキ花粉に含まれるタンパク質と、リンゴ、モモ、西洋ナシ、サクランボ、キウイ、ヘーゼルナッツなどに含まれるタンパク質が似ています。そのため、ハンノキ花粉症の人がこれらの食品を摂取すると、口腔アレルギー症候群の症状を引き起こすことがあります。
出典:片田 彰博; 口腔アレルギー症候群の現状:喉頭アレルギーとの異同, 口咽科;27:55-62,2014
大人だけではなく子どもにおいても、ハンノキ花粉が花粉・食物アレルギー症候群の原因となります。国内の医学論文では、口腔アレルギー症候群がある子どもは、ハンノキ属の特異的IgE抗体価が高いことが報告されています。そして、4歳以上から口腔アレルギー症候群について注意をする必要があり、リンゴ、モモ、キウイなどが原因となることが多いです。
出典:川島佳代子; 小児のハンノキ感作と口腔アレルギー症状についての検討, 口咽科;34:21-26,2021
カバノキ属のシラカバ花粉も、ハンノキと同様に、同じような食べ物による口腔アレルギー症候群を発症することが知られてます。普段、食事をするときに特定の食べ物に対して口の違和感があるようなら、一度、耳鼻科で原因を調べてもらうと良いです。
診断の方法
鼻炎あるいは結膜炎の症状がハンノキ花粉によるものかどうかを判断する方法として、それらの症状が現れる時期を確認します。ハンノキ花粉は1月から6月にかけて飛散するので、この時期に症状が現れる場合はハンノキ花粉症の可能性が疑われます。そして、屋外での活動後に症状が悪化する場合も、何らかの花粉がアレルゲンとなっている可能性があります。
ここまでは、季節性アレルギーの可能性を考える段階になりますが、正確な診断のためには、スキンテストや血液検査(特異的なIgE抗体を測定する)が必要になります。なぜなら、スギあるいはヒノキ花粉も飛散している環境では、鼻炎の症状がハンノキ花粉の影響によるものか、区別することができないからです。
自分の体質が、ハンノキに対してアレルギー反応があるかを知るには、 Viewアレルギー39と呼ばれる検査を勧めます。採血によって、一度に39種類のアレルゲンを評価することができます。同時に、口腔アレルギー症候群を引き起こす果物(リンゴ、キウイ)に対する反応も分かります。
治療について
ハンノキ花粉症の治療には、病状に応じて、さまざまな処方薬が用いられます。花粉のアレルギー反応で生じた鼻炎と結膜炎の症状を軽くすることで、生活の質を向上させることを目的としています。
治療に用いられる処方薬には、飲み薬として、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイドがあります。そして、アレルギー反応を局所で抑える作用のある点鼻薬、点眼薬があります。重症な場合には、注射による治療が行われることがあります。
特に抗ヒスタミン薬は、鼻炎の症状を抑えるのに頻用されています。第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が強いものですが、第二世代の抗ヒスタミン薬の中には、眠くなりくいタイプの薬剤もあります。詳しくは、主治医と相談して決めてください。最近では、市販薬として利用できる抗ヒスタミン薬も登場しています。
点鼻薬、特にステロイドが含まれているタイプでは、鼻の炎症を抑える効果があります。それに対して、点眼薬はアレルギー性結膜炎による目のかゆみや充血を軽減することに活用されています。
注意点として、ステロイドは、重症のアレルギー症状に対して効果的ですが、副作用の懸念があることから、長期間の使用には注意が必要です。
西洋薬に抵抗がある人、あるいは、従来の薬で症状が治らない人は、漢方薬を活用する方法があります。代表的な生薬として、小青竜湯があります。有効成分である麻黄には、鼻炎の症状を軽減する作用があります。水っぽい鼻水、鼻づまり、くしゃみ、喘鳴、咳、涙目の症状があるときに、考慮します。漢方と西洋薬との併用もできます。ただし、体質によって、生薬の種類を選ぶ必要があるので、診察のときに医師と相談する必要があります。
予防と日常生活での対策
ハンノキ花粉症がある人が知っておきたい屋内での対策は、花粉が室内に侵入するのを防ぐために窓を閉めて過ごすことです。空気清浄機を活用することも有効です。具体的には、HEPAフィルターを備えたタイプがおススメです。なぜなら、微細な花粉を効果的に除去することができるからです。
さらに、外出から帰宅したときは、衣類にくっついた花粉を払い落としてください。部屋への花粉の持ち込みを防ぐことが大切です。そして、手洗い、うがいを忘れずにしましょう。
お出かけのときは、マスクをしたり、花粉対策のメガネを着用したり、ハンノキ花粉が鼻やのどなどの上気道の粘膜および眼球結膜に付着することを防止しましょう。