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中枢型睡眠時無呼吸の症状と治療法
中枢型睡眠時無呼吸とは
私たちの脳には、呼吸を調節している部位があり、呼吸中枢と呼ばれています。この呼吸中枢の働きによって、昼間、夜間に関わらず、自動的に呼吸ができるようになって、体の中に酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出しています。
何らかの原因によって、呼吸中枢に異常がると、呼吸中枢がうまく働かないことがあります。その場合、眠っているときに、呼吸が止まることがあります。
原因について
1.心不全
高血圧、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症などが原因で、心臓の働きが低下すると、全身に十分な血液を送りだすことができません。中枢型睡眠時無呼吸は心不全に合併することが多いことが知られています。
換気の仕組みは、血液中の二酸化炭素が関与しており、循環機能の低下によって、呼吸中枢が反応できないことが原因として考えられています。
2.脳卒中
脳出血、脳梗塞などの病気によって、呼吸中枢の働きが低下すると、中枢型の睡眠時無呼吸が出現します。
3.その他
腎不全に合併することもあります。その他、高地に移動したときに生じるタイプ、原因が分からない特発性の中枢型睡眠時無呼吸も報告されています。
出典:Central sleep apnea – Mayo Clinic
チェーンストークス呼吸とは
中枢性睡眠時無呼吸は心不全に合併することが多いですが、その中には、無呼吸の後に呼吸が徐々に大きくなり(漸増)、その後、弱くなっていく(漸減)、呼吸パターンが出現することがあります。
特徴的な呼吸パターンであるため、チェーン・ストークス呼吸と呼ばれています。
この異常呼吸は、眠っているときだけではなく昼間起きているときにも、出現します。チェーン・ストークス呼吸の出現が多い心不全であると、予後が不良であることが知られています。
出典:睡眠時無呼吸症候群と循環器病 – 循環器病研究振興財団
チェーン・ストークス呼吸を呈する中枢型睡眠時無呼吸は、自分で気が付かないことが多く、家族やベッドパートナーによって発見されることが多いです。
どんな症状が問題となるか?
不眠を訴えるケースが多いです。具体的には次のような症状です。眠りの質が低下するため、昼間の眠気、疲労感を呈することもあります。
- ぐっすり眠れない
- 眠りが浅い
- 呼吸が苦しい感じがして目が覚める
基礎疾患である心不全のため、夜トイレのため何度も起きることもあります。
閉塞型睡眠時無呼吸について
慢性心不全、脳梗塞の治療を受けている場合には、大きなイビキ、無呼吸が出現する閉塞型睡眠時無呼吸を合併することもあります。そのため、中枢型との鑑別が大切です。
相互に影響する理由について。
診断の方法
中枢型睡眠時無呼吸症候群を適切に診断するためには、終夜睡眠ポリグラフ検査による評価が必要です。原発性の中枢型睡眠時無呼吸の場合、臨床症状(眠気、入眠困難、中途覚醒、息切れで目が覚める、いびき、無呼吸が観察される)と中枢性の無呼吸低呼吸指数5以上の検査所見によって診断されます。
異常呼吸がチェーンストークス型であるときは、心房細動、慢性心不全、中枢神経の疾患が存在することが条件になります。
治療について
1.基礎疾患への治療
心不全が原因の場合には、まずは薬物による治療を開始します。心保護作用のある薬、利尿剤などが用いられます。高血圧による関与があるときは、目標となる血圧までコントロールすることが大切です。
2.在宅酸素療法(HOT)
夜間帯に鼻から少量の酸素を吸入することで、異常呼吸と低酸素血症が解消されます。保険適応となる具体的な基準は次の通りです。
- 慢性心不全の診断(NYHAⅢ度以上)
- 睡眠時のチェーンストークス呼吸
- 無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上
心不全の臨床的評価だけではなく
終夜睡眠ポリグラフ検査による異常呼吸の確認が必要になってきます。
3.その他
CPAP治療あるいはBi-level PAP、ASV治療などを検討することがあります。薬剤として、アセタゾラミドが承認されています。
予防法について
生活習慣の改善で大切なのは、減塩や禁煙などで心臓、脳血管への負担を減らすことです。アルコール摂取の習慣があるときは、見直しをしましょう。
すでに心不全の治療を受けている方は、心機能の悪化がないように、担当医による治療管理を受けることが大切です。
大きなイビキ、無呼吸、眠気が特徴である閉塞型睡眠時無呼吸のあるときは、その治療の徹底が重要です。心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、脳卒中)を予防することが、中枢型睡眠時無呼吸の発症予防に役立ちます。