健康診断で高血圧の判定ならどうすべきか

はじめに

職場で毎年行われている定期健康診断で、高血圧を指摘されましたか？

 

「まだ数値がそんなに高くないからだろう」「薬はまだ早いかもしれない」と考え、様子見を選びがちな人がいます。しかし、高血圧はサイレントキラー（静かな殺し屋）と呼ばれています。あなたが症状を自覚しなくても、しっかりと血圧をコントロールしておかないと、将来的に、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎臓の病気など重大な合併症を引き起こす危険があります。

 

生活習慣を見直すことや早めに血圧の治療を行うことで、突然死、生命に危険を及ぼすような病気が発症するリスクが低下することが、医学研究で示されています。たとえば、塩分の制限、適度な運動習慣、体重の管理などによって、血圧そのものが下がってくることも分かっています。

 

健診で血圧の異常を指摘されて要再検査、要治療の判定があったときに、放っておかずに早めに血圧のケアをしていくことが大切です。このページでは、健診結果で高血圧を指摘された場合に知っておくべきこと、どうすればよいかをお伝えします。

 

出典：Charchar et al. Lifestyle management of hypertension: International Society of Hypertension position paper endorsed by the World Hypertension League and European Society of Hypertension. J Hypertens. 2024;42(1):23-49.

 

 

高血圧とは

血圧とは、心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力（収縮期血圧：上の数値）と、心臓の壁が拡がり血液が充満しようとしているときの圧力（拡張期血圧：下の数値）を表しています。

 

2025年に発表された米国の国際ガイドラインでは、正常な血圧は120/80 mmHg 未満、高値血圧の領域として120～129/80mmHg 未満と段階的に分類しています。そして、高血圧ステージ1 ：収縮期130〜139mmHgまたは 拡張期80〜89mmHg、高血圧ステージ2：収縮期140mmHg以上 または 拡張期90mmHg以上と定義されています。

 

出典：Writing Committee Members*; Jones et al. 2025 AHA/ACC/AANP/AAPA/ABC/ACCP/ACPM/AGS/AMA/ASPC/NMA/PCNA/SGIM Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation and Management of High Blood Pressure in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. Hypertension. 2025 Oct;82(10):e212-e316.

 

一方、国内では、診察室で測定された血圧において、140/90mmHg以上の場合に高血圧の基準とされています。

 

出典：Ohya et al. JSH2025 guidelines new viewpoints. Hypertens Res. 2025 Oct;48(10):2497-2499.

 

 

健康診断で高血圧を指摘されたときの対応

健診を受けて「血圧が高めですね」と言われたら、ショックを受けるかもしれません。しかし、冷静になって、まず自宅での「再測定」の準備をしましょう。

 

血圧は、緊張やストレス、病院特有の雰囲気によって一時的に高くなることがあります。この現象は白衣高血圧と呼ばれています。そのため、自分が普段どれくらいの血圧なのかを知るためにも、自宅で朝と夜、決まった時間に毎日血圧を測りましょう。

 

もちろん、家庭用の自動血圧計で大丈夫です。なければドラッグストアでお求めください。そして、血圧を測る前には、５～10分程度安静にしてからにすると良いです。

 

出典：高血圧 – 国立循環器病研究センター

 

血圧を測定したらノートやアプリに記録し、1〜2週間くらい続けてみてください。もし、その間も血圧が高めの状態が続くようであれば、近くの内科クリニックを受診し、医師に今後の対応について話あうことを勧めます。

 

ただし、健診結果で、要検査、要治療の判定がある場合は、早めに医師の診察を受けましょう。高血圧は何科を受診すれば良いか迷っている場合は、循環器内科を選びましょう。

 

 

自宅で取り組むべき生活習慣の見直し

生活習慣の項目	特徴と実践のヒント
減塩	塩分の摂りすぎは血圧を上げる原因になります。調味料は減塩タイプを選び、外食ではスープを残すなど工夫をしましょう。1日塩分6g未満が目標です。
野菜・果物の食事	カリウムや食物繊維を多く含む野菜や果物は血圧を下げる働きがあります。毎回の食事において1品、彩りのある野菜や果物を意識して取り入れましょう。
有酸素運動	運動不足があると血圧が上がりやすくなります。その一方、適度な運動は血流を改善し、血圧を安定させます。ウォーキングや自転車を1日30分程度とりいれましょう。
体重管理	肥満は高血圧を引き起こします。あなたの体重を減らすだけで血圧が下がるケースもあります。月に1〜2kgの減量を目標に、食事と運動を組み合わせましょう。
十分な睡眠	睡眠不足が続くと、血圧を上げる働きのある交感神経が亢進します。そのため、十分な睡眠時間、日中眠くならない時間を目安に、規則正しい睡眠リズムを勧めます。
ストレス管理	ストレスを受けると末梢血管が収縮して、血圧が高くなります。深呼吸や瞑想、自分の好きな活動、趣味の時間を意識して作り、心と体をリラックスさせましょう。
禁煙と節酒	喫煙や過度の飲酒は血圧を上げる要因になります。悪影響を与えます。タバコを止めること、アルコール摂取の量と回数を減らす取り組みが良いです。

 

出典：Hypertension – World Health Organization