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レンボレキサントの副作用の種類
はじめに
デエビゴは、不眠症の患者さんの睡眠を改善するために使用される新しいタイプの睡眠薬です。オレキシン受容体の作用を阻害することで、自然な眠気を促進し睡眠の質を高める効果があります。
従来からあったベンゾジアゼピン系の睡眠薬にある依存性の問題が少ないことから、外来で処方されることが多い薬剤です。しかし、デエビゴを服用している患者さんの中には、副作用に関する不安や疑問を抱えている方が少なくありません。
自分の診療を担当している医師に副作用について聞くことが良いですが、診察日でないと相談できないという事情があります。そのため、インターネット上にある口コミ、体験談に回答を求めている人が多くみられます。しかし、ネット上から適切な情報をどうやって選んだらよいかという問題が生じます。
このような状況を踏まえて、このページでは、睡眠専門医がデエビゴの副作用に関する情報と対処法を詳説します。デエビゴのメリットだけではなくデメリットの側面も理解した上で、不眠の治療を受けられると良いですね。
デエビゴはどんな薬?
デエビゴは、不眠症の治療に用いられる医薬品です。有効成分は、レンボレキサントです。この薬剤は、入眠困難、中途覚醒の症状を軽減するために処方されています。
オレキシン受容体拮抗薬として分類される薬で、覚醒作用を有しているオレキシンと呼ばれる神経伝達物質の作用を抑制することで、効果を発揮します。デエビゴは、オレキシンの覚醒作用を抑えることで、自然な眠りを誘導しています。
依存性の少ない睡眠薬を希望される人が多く、外来でデエビゴが処方される機会が増えている印象です。
副作用について
デエビゴの添付文書で報告されている副作用、そして、医師である筆者が診察のときに患者から直接聞き取った有害事象を中心にお伝えします。
最も多く報告されている副作用は、傾眠、倦怠感、頭痛などです。これらの症状によって、日中の活動に支障をきたす場合があります。外来において、著者がデエビゴを処方するときには、翌朝の眠気が起きる可能性について必ず説明をしています。
海外の研究報告によれば、最も一般的な副作用は、傾眠、頭痛、めまいでした。しかし、レンボレキサント5mgと10mgの結果の違いに大きな差はありませんが、わずかな用量依存的な変化が認められたようです。
それでは、具体的な副作用の特徴について、電子添文に記載されているものから抜粋して、以下に示します。
副作用 | 特徴 |
---|---|
眠気 | よくある副作用の一つで、デエビゴの作用時間が長いことが関わっています。朝、眠いので、車の運転をする人は、注意を要します。 |
頭痛 | 頭痛も一般的な副作用の一つです。頭が重いという表現をする人もいます。軽い頭痛は時間の経過によって治まることも多いです。 |
めまい | デエビゴを服用すると、めまいが生じる場合があります。めまいは、平衡感覚が失われることで、立ちくらみやふらつきが現れます。 |
悪夢 | デエビゴは悪夢を引き起こすことがあります。薬が脳の睡眠サイクルに影響を与えることが要因です。不安と恐怖の体験です。 |
幻覚 | 一部の人は、薬剤を服用すると幻覚を経験することがあります。レム睡眠関連症状の一つで、頻度は1%未満と報告されています。 |
金縛り | 睡眠麻痺と呼ばれており、眠っているときに体が動かなくなる現象です。不安や恐怖を感じることがあり、レム睡眠が関係しています。 |
体重増加 | 太るという事例が報告されており、頻度は1~3%未満です。食欲亢進(1%未満)も現れるので、摂食行動への影響が考えられています。 |
デエビゴの添付文書には、さまざまな有害事象の一覧が記載されていますが、最も多くみられる副作用のランキングとして、傾眠(10.7%)、頭痛(4.2%)、倦怠感(3.1%)の順に報告されています。消化器症状として、吐き気が現れる人もいます。
特定の病気をもっている人への注意事項もあります。ナルコレプシー、カタプレキシーがある場合は、デエビゴを服用すると症状が悪化するので、注意しなければなりません。海外では、ナルコレプシーの患者さんへの投薬は禁忌となっています。
お問い合わせの多い副作用への対処法
副作用にはさまざまな種類があり、頻度の高いものから稀なものまで報告されています。体が薬に順応していく過程で症状が消失することもあります。再診のときに、薬を飲み始めてから身体の症状に変化がないかについて、あなたの感想を医師に伝えてください。
出典:Lemborexant (Oral Route) – Mayo Clinic
これから、よくある副作用と対策について、紹介します。
1.眠気
デエビゴの服用タイミングあるいは用量の見直しを考えます。遅い時間に薬を服用すると、午前の早い時間帯にまで影響が及ぶことがあります。そのため、就寝時刻と服用する時間を調整しましょう。高齢者の場合、転倒のリスクについても気を付ける必要があります。
個人差はありますが、デエビゴの用量が多いことが、翌日の眠気、倦怠感の原因になっている場合があります。「朝起きたときに薬の効果が抜けない」と感じたら、担当医と相談して減薬することも検討してください。
それでも、眠気が残る場合には、他の睡眠薬への変更について相談となります。オレキシン受容体拮抗薬の代替となる薬として、ベルソムラがあります。それ以外になると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬あるいは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が候補になります。
2.悪夢・金縛り
デエビゴの副作用の中には悪夢や幻覚が含まれており、患者さんからお話を聞くと、異常な夢を見るという事例があります。これらの副作用は精神的にとても不快で、日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。中には、睡眠が怖いと感じる人もあります。
デエビゴを服用することで、総睡眠時間が増えるのでレム睡眠の時間も増えます。服用する前と比較して、レム睡眠の関連症状が現れるようになります。半覚醒の状態で体を動かすことができないという睡眠麻痺を経験する人があります。その上、感じの良くない夢を見ることがあるので、つらいです。
対策として、就寝前のリラクゼーションをして、ストレス、不安の軽減を行いましょう。具体的には、就寝前に、深呼吸やストレッチ、瞑想などがあります。アルコール摂取の習慣がある人は、飲酒を控えることが大切です。
改善しない場合は、デエビゴの減量あるいは他剤への薬の変更を考えます。
3.頭痛
デエビゴを服用中の患者さんの中には、頭痛を副作用として経験する方がいます。実は、デエビゴが頭痛を引き起こす明確なメカニズムは結論が出ていません。しかし、脳内の神経伝達物質のバランスの変化、脳血管の収縮と拡張などが想定されています。
対処法として、水分不足が頭痛を引き起こすことがあるため、適度な水分摂取を勧めます。睡眠不足や不規則な睡眠は、頭痛の誘因となるので、デエビゴの服用中も、規則正しい睡眠習慣を維持しましょう。ストレス管理も頭痛の誘発を防ぐのに役立ちます。
頭痛がひどい場合は、減薬あるいは、他の睡眠薬への変更を考慮します。医師に相談してください。
4.体重増加・食欲亢進
デエビゴを飲み始めてから食欲が増して太るという事例があります。体重増加の頻度は、1~3%未満です。薬剤が摂食に関与する詳しいメカニズムは解明されていません。しかし、オレキシンは覚醒維持だけではなく食欲の調節にも関わっているので、デエビゴの作用によって食欲に影響している可能性があります。
体重が増えることへの対策として、バランスの取れた食事、適度な運動について取り組むことを勧めます。ストレスは過食の誘因となりるので、リラクゼーション、趣味の時間を持ったりすることも大切です。
5.その他
頻度は不明ですが、睡眠時随伴症の報告もあります。夢遊病のような症状が現れることがありますが、本人は異常行動を覚えていないという問題が生じます。このような事象があれば、薬を中止して主治医に報告することが大切です。
出典:Lemborexant Oral Tablets – Cleveland Clinic