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オレキシン受容体拮抗剤:ボルノレキサント水和物の特徴
ボルノレキサントとは
ボルノレキサント水和物は、覚醒を促す神経伝達物質であるオレキシンの受容体に作用することで、睡眠を促進する働きを持っています。このメカニズムによって、自然に近い睡眠パターンを促し、入眠困難および中途覚醒を改善することが期待されています。
大正製薬が不眠症に対する医薬品として開発しています(開発コード:TS-142)。日本国内で行われた第III相臨床試験の結果の速報が発表され、不眠症の治療に対する有効性と安全性が確認されました。
どんな剤形がありますか?
2024年4月の時点で医薬品の承認申請がされておらず、発売は未定です。参考までに、臨床試験では5mgと10mgの用量が用いられてます。
日本では、いつボルノレキサントは発売される見込みがありますか?
国内では、大正製薬が第III相臨床試験の結果をとまとめてから、厚生労働省に申請をする予定です。申請後に審査に時間を要することから、少なくとも1~2年はかかると推測されます。
効果について
2020年に報告された論文によれば、ボルノレキサントは、オレキシン受容体の2種類のサブタイプ(OX1RおよびOX2R)に対して拮抗する働きが明らかになっています。
有効成分が脳内で覚醒を促す物質の活動を抑える作用を保ちながら、体内で過度に蓄積することなく効率的に代謝されます。
その後、ボルノレキサントの代謝と分布に関する「ラットと犬を用いた基礎実験」の報告がありました。その結果によれば、ボルノレキサントは投与直後に速やかに吸収され、24時間以内に代謝されました。ヒトの肝細胞での代謝も調べられ、データが類似していることが判明しました。
ボルノレキサントがヒトに投与された場合の最高血中濃度到達時間および消失半減期はどのくらいですか?
健康な日本人を対象とした臨床試験のデータによれば、絶食状態においてボルノレキサントを服用した場合、最大血漿濃度に達するまでの時間は、0.5~3時間でした、一方、消失半減期は、1.32~3.25時間でした。
ボルノレキサントの第II相臨床試験では、終夜睡眠ポリグラフ検査による評価において、客観的な指標である睡眠潜時(LPS)、中途覚醒時間(WASO)の改善が観察されています。
第III相臨床試験においても、ボルノレキサント水和物の不眠症患者を対象とした入眠効果と睡眠維持効果が確認されています。これまでに報告されたデータを総合すると、ボルノレキサントは効果の発現が早いこと、そして、消失半減期が短く、投与翌日の持ち越し効果が少ないという特徴があります。
日本国内では、スボレキサントおよびレンボレキサントの2種類のオレキシン受容体拮抗薬が不眠症の治療薬として利用されています。それらの薬剤と比較すると、ボルノレキサントの半減期が短いです。その事実から、ボルノレキサントは、睡眠薬の持ち越し効果で悩んでいる不眠症患者にとって福音になる可能性があると、筆者は推測しています。ただし、今後の詳細なデータ解析で、より詳しい情報が判明するでしょう。
安全性と有害事象について
ボルノレキサントの安全性データについては、第III相臨床試験によれば、軽度の有害事象が確認されています。具体的には、傾眠、上咽頭炎、発熱などです。それに対して、重篤な有害事象は認められなかったと報告されています。
まとめ
ボルノレキサントは、新しいオレキシン受容体拮抗薬として承認されれば、不眠症治療の新たな選択肢になる可能性があります。薬剤の特徴として、早期の効果発現と次の日への影響が少ないことは、注目に値します。
今後、ボルノレキサントは医療用医薬品として使用できるように、厚生労働省の審査を受ける予定です。近い将来、新薬として承認されれば、不眠症患者にとって新しい希望を与えるかもしれません。