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新しいタイプの睡眠薬による不眠症の治療
オレキシン受容体拮抗薬のよくある質問と回答
オレキシン受容体拮抗薬とは何ですか?
脳の覚醒を促すオレキシンの受容体を阻害することで、脳を睡眠の状態にさせることができる、不眠症の治療薬です。
どんな作用機序ですか
脳内で覚醒を維持する神経伝達物質として、オレキシンがあります。薬の有効成分が、オレキシン受容体1型、2型に競合して阻害することで、覚醒状態を抑えて、睡眠を促す作用があります。不眠症の治療として、処方されています。
ベンゾジアゼピンとの違いは何ですか
従来から使われているベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、GABA受容体に作用して、睡眠と鎮静の効果が出ます。一方、オレキシン受容体拮抗薬では、作用機序が覚醒維持のシステムを抑えるという点で異なることから、より自然に近い睡眠となります。
長期に服用すると依存性が問題になるベンゾジアゼピンに対して、オレキシン受容体拮抗薬は、耐性と依存性の心配がない利点があります。
ベルソムラはどんな薬ですか
2014年から、不眠症に対して処方が可能になった、有効成分としてスボレキサントを含んだ睡眠薬です。製薬会社のMSDが開発しました。寝つきを良くする効果があり、総睡眠時間が長くなります。
新薬はありますか
2020年6月にエーザイから発売されたオレキシン受容体拮抗薬です。有効成分としてレンボレキサントを含んでおり、商品名は、デエビゴです。
出典:デエビゴ 不眠症治療に関するお役立ち情報 – エーザイ
入眠困難、睡眠維持の困難で悩んでいるときに使うことができる睡眠薬です。
出典:FDA approves lemborexant for treatment of insomnia – AASM
レンボレキサントは、入眠困難、睡眠維持の困難で悩んでいるときに使うことができる睡眠導入剤です。
海外で承認されている新薬はありますか?
米国およびEUにおいて、ダリドレキサント(商品名:Quviviq)が承認されています。
国内では、ダリドレキサントは認可されていますか?
ネクセラファーマジャパン株式会社が不眠症治療薬「クービビック」を厚生労働省に承認の申請を出しており、正式な発売の承認を待っている段階です。
国内で開発中の不眠症治療薬はありますか?
大正製薬が、ボルノレキサント水和物(開発コード:TS-142)を開発しています。
どんな副作用がありますか
- 傾眠
- めまい
- 疲労
- 悪夢を見る
- 頭痛
添付文書では、ベルソムラがノンレム睡眠とレム睡眠の増加があると報告されています。一方、デエビゴではレム睡眠時間の割合に変化はありません。睡眠時間が増える関係上、レム睡眠の時間が増えるので、副作用として悪夢が報告されています。
海外臨床試験によれば、有害事象として睡眠時随伴症の症状が現れる可能性があります。
高齢者の注意事項はありますか
加齢にともなって、臓器のはたらきが低下する傾向があるので、服用した薬が体に残りやすく、薬の効果が強く出ることがあります。
朝方の眠気が残る症状、ふらつき感に注意する必要があり、用量を調節することが大切です。
認知症に合併した不眠に使いますか
睡眠障害と軽度認知障害、アルツハイマー型認知症との関係が指摘されています。良い眠りがとれていないと、認知症の症状が出現する懸念があります。
アルツハイマー型認知症の初期において、オレキシン受容体拮抗薬の活用は不眠だけではなく、病気の進行を緩徐にする可能性があります。
妊娠中と授乳中の薬の服用はどうすれば良いですか
妊娠中のベルソムラの服用は、胎児に有害な影響を及ぼすか、結論が出ていません。そのため、不眠症に対して睡眠薬を内服することのメリットとデメリットについて、主治医と必ず相談してください。
デエビゴについても、妊娠中の内服は、治療による有益性が薬を飲むことで生じる危険性を上回るときに考えます。
授乳中については、薬が乳汁中に移行する懸念があるため、授乳を中止した上で、内服することを勧めます。