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イネ科カモガヤ属の植物が引き起こす花粉症
夏の花粉症で悩んでいませんか?
花粉症と言えば、春に流行するスギ、ヒノキ花粉によるアレルギー性鼻炎を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は、夏にも花粉症はあります。5月から7月にかけて鼻炎の症状があったら、イネ科の植物の花粉が原因になっているかもしれません。
近年は、都市部の拡大と緑地の変化によって、イネ科の植物に近づく機会が増えたことで、夏の花粉症が発症する場合があります。一方、診断するための検査が普及したことで、過去に見過ごされていたかもしれない鼻炎の原因が、イネ科の植物であったことが明らかになっています。
今回は、あまり知られていないが、注目したいイネ科の花粉症、そして、代表的な原因の一つであるカモガヤの基礎知識をお伝えします。
イネ科の植物で花粉症を引き起こすものは、カモガヤ以外に何がありますか?
ネズミホソムギ(ネズミムギ、ホソムギ)、オニウシノケグサ、ハルガヤなどの植物があります。これらは、牧草として海外から持ち込まれて、日本に広がったものです。
イネ科の植物の花粉の飛散時期はいつですか?
イネ科の植物は、もともと環境の適応力が高いことが知られており、日本各地で花粉の飛散が確認されています。植物の特徴として、春咲きと夏咲きがあるので、花粉の飛散量が2峰性を示します。
一般的には、春咲きのイネ科の影響が大きく、夏の花粉症として有名です。5~7月にかけて飛散します。一方、秋咲きもあるので、秋の期間まで鼻炎のアレルゲンになる可能性があります。
出典:岸川禮子 他; 花粉抗原からみる日本列島の空中花粉長期調査結果―我が国の重要な草本花粉抗原の地域性と年次変動―, アレルギー;66(10):1221-1238,2019
一般的に、ヒノキ花粉症のシーズンが終わる頃から、イネ科の植物の花粉症が始まる傾向があります。
カモガヤとは?
カモガヤは、イネ科のカモガヤ属の多年草です。オーチャードグラスの別名を持っています。外国から輸入されら牧草の一種ですが、環境への適応力があり、繁殖力も強いです。国内では、放牧地や草地に自然に生えていることが多いです。一方、都市部では、道路沿い、住宅の空き地、河川敷、公園などにもみられます。
出典:カモガヤ花粉症 (イネ科花粉症)について – 松山市医師会
カモガヤ花粉の飛散時期、特に 5月中旬~6月下旬にかけて飛散量がピークとなるときに、アレルギー性鼻炎を発症する人が多いようです。
スギ花粉とカモガヤ花粉の違いはありませんか?
スギ花粉は、国内では2月から4月にかけて飛散します。それに対して、カモガヤ花粉は5月から7月ごろに多くみられます。飛散距離の違いもあり、スギ花粉は非常に軽く、強風によって数十キロメートル以上遠くまで飛散することがあります。反対に、カモガヤ花粉の飛散範囲は数十メートルくらいです。その他の違いとして、スギは日本の山地に分布していますが、イネ科の植物は世界的な広がりを見せています。
イネ科の花粉症が発症する原因とメカニズム
空気中を浮遊したイネ科植物の花粉を、私たちが吸い込みます。呼吸によって侵入した花粉は、気道の粘膜に付着します。その結果、免疫システムは花粉を侵入者と誤って認識してしまい、過剰な防御反応を起こします。この過程によって、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が発生します。
どんなアレルギー症状が出現するか?
花粉症の症状は個人差があり、環境や体調によっても変化します。よくある症状としては、以下のようなものが挙げられます。イネ科の花粉が結膜、気道の粘膜、皮膚に付着することで、アレルギー反応を生じて、種々の症状を引き起こします。
- 鼻水、鼻づまり、鼻粘膜の痒み
- くしゃみ
- 目のかゆみ、充血、涙目
- のどのかゆみ、イガイガ感
- 皮膚の発疹、掻痒感
- 咳、喘息のような症状
外来で、イネ科の花粉症で悩んでいる人の話を聞く機会があります。受診の動機になった悩みについて紹介します。
「スギ・ヒノキ花粉のシーズンが終わったかと思うと、イネ科の花粉が飛び始めるので、毎日がつらいです。鼻水とくしゃみで仕事に集中できなくなります。」
「毎年、初夏の季節になると、通勤で公園の近くを通ると、鼻炎の症状が始まります。電車の中でくしゃみに襲われ鼻水が止まらなくなるので、周りの目が気になります。」
大人だけではなく、子どもでもイネ科の花粉症が発症することがあります。鼻炎の症状のほか、皮膚の症状が問題になることもあります。
イネ科(オオアワガエリ、カモガヤ)の花粉症がある人が、ウリ科のフルーツ(メロン、スイカなど)を食べると、口腔粘膜においてアレルギー反応が誘発されることがあります。
口腔アレルギー症候群と呼ばれており、口唇、舌、のどの奥にかゆみ、しびれ、浮腫が現れることがあります。
アレルギーを調べる方法
自分の体質として、どのようなアレルゲンに対して反応があるか調べたいときは、病院で評価を受けることを勧めます。
アレルギー検査
イネ科の植物がアレルゲンであるか調べるには、View39がオススメです。カモガヤとオオアワガエリの項目が入ってます。食物、室内塵、樹木の花粉など、1回の血液検査によって39種類のアレルゲンを調べることができます。
ゴールデンウィークから梅雨の時期に鼻炎の症状が現れるなら、イネ科の花粉があなたのアレルギー症状に関係しているかもしれません。初夏に公園、川の堤防にある雑草がある場所に接近したときに、鼻炎の症状が現れるようなら、夏の花粉症の可能性があります。
イネ科の花粉症の治療
季節性アレルギー性鼻炎の治療として、イネ科花粉症に対する薬剤の選択にはいくつかのアプローチがあります。
飲み薬において、抗ヒスタミン薬は鼻水やくしゃみに効果的です。それに対して、抗ロイコトリエン薬には鼻づまりを緩和する作用があります。病状が重いときは、ステロイドを短期的に使用することもあります。
外用薬として、鼻粘膜の炎症に対して、ステロイドの鼻スプレーが処方されることがあります。そして、目の結膜の炎症を抑えるためには、抗ヒスタミン作用のある点眼薬が用いられます。
ただし、治療は個々の症状や体質によって異なるため、自己判断をせずに医師の診断を受けることが大切です。
スギ花粉による季節性アレルギー性鼻炎に対しては、根本的に治すようなアレルゲン免疫療法(減感作療法)があります。しかし、イネ科のアレルギー症状を根治する治療法は利用できません。
イネ科の花粉症の症状を軽減する効果がある市販薬はありませんか?
第二世代の抗ヒスタミン薬のOTC医薬品として、アレグラFX、クラリチンEX、エバステルAL、アレジオン、タリオンARなどを利用することができます。ドラッグストアにおいて、これらの鼻炎薬を購入することができますが、必ず薬剤師に注意事項について相談して下さい。特に、運転の業務があるときは、眠気の副作用があることを知っておく必要があります。
予防する方法
イネ科の花粉症に対するセルフケアとして、環境の整備が大切です。自宅の庭にイネ科の雑草が生えているときは、早めに刈り取っておくことが大切です。家では窓を閉めて花粉の侵入を防ぎ、空気清浄機を利用して室内の空気をきれいに保ちます。掃除をこまめに行うことを勧めます。
外出時にはマスクやメガネを着用することで、イネ科の花粉との接触を減らします。通勤あるいは通学経路に、カモガヤ、ハルガヤ、ネズミホソムギなどが自生している場所があれば、なるべく避けることが大切です。
一般的に、夏から秋に飛散する植物の花粉は、飛散距離が短いことが特徴です。そのため、イネ科の植物が生えている場所、草むらがある場所に近づかないようにしましょう。帰宅後は、手洗いやうがいを徹底し、顔や髪を洗って身体に付着した花粉を落とします。
イネ科の植物が生えているところで、注意すべき場所はどこですか?
ハルガヤやネズミホソムギは、河川敷や堤防などでよく生育しています。
出典:イネ科花粉症 – 葛飾区