- ホーム
- PM2.5が体に与える健康影響【予防と症状別対策】
PM2.5が体に与える健康影響【予防と症状別対策】
PM2.5とは

PM2.5は、大気中に浮遊する直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子物質です。髪の毛の太さの約30分の1の大きさであり、肉眼で見ることはできません。実際には、元素状炭素(EC)、有機炭素、硫酸塩、硝酸塩などの成分が含まれ、車両の排気ガス、工場の排煙などが発生源として知られています。
通常、鼻の中にある自然のフィルターが異物を捕らえるのですが、PM2.5はあまりにも小さいため、鼻をすり抜けて肺の奥深くまで入り込みます。そして、この現象が人体への影響を及ぼします。
参考までに、PMは英語表記の“Particulate Matter”の頭文字をとったものです。
健康への影響

PM2.5は極めて小さい粒子であるため、普通なら鼻や喉で捕まえられるはずの異物なのに、簡単にすり抜けてしまい、肺の奥深くまで到達します。
肺に入ったPM2.5を体が「異物」と認識して免疫細胞を介して炎症を引き起こす物質が放出され、咳、痰、くしゃみなどの呼吸器症状として現れます。また、PM2.5が皮膚あるいは目の結膜に付着すると、局所で炎症反応を誘発して、皮膚炎および結膜炎の症状が現れます。
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある人では、大気中のPM2.5濃度が高くなると症状が悪化するという研究報告があります。つまり、アレルギー疾患治療中の人にとっては、PM2.5の動向について注意しなければならないことを意味します。
出典:小田嶋 博; PM2.5とアレルギー疾患, アレルギー;64(2):119-127,2015
特に春先に発生する黄砂は、PM2.5の問題をさらに複雑にします。黄砂自体も刺激物質ですが、その表面にPM2.5が付着することで、より強いアレルギー反応を引き起こします。同時期はスギ花粉症の影響も見過ごせません。
全身の炎症を引き起こすので、PM2.5の濃度が高い地域では、循環器疾患による死亡率が高いことが疫学調査によって明らかになっています。
出典:大気汚染(PM2.5)と死亡との関連について – 国立がん研究センター
PM2.5が引き起こす症状とは

全身のさまざまな部位に症状が現れる可能性があるので、次の表でチェックしてみましょう。
複数の部位に出現することもあり、アレルギーの病気(喘息、アトピー性皮膚炎など)があれば、重症化するリスクがあります。そして、子ども、高齢者、基礎疾患(特に心臓と肺の病気)がある人は影響を受けやすいので注意を要します。
部位 | 症状 |
---|---|
鼻 | 鼻水、鼻づまり、くしゃみなど。鼻腔粘膜への刺激によって炎症が生じます。 |
咽頭 | のどの痛み、イガイガ感、痰など。気道粘膜の炎症と粘液が増加します。 |
気管支と肺 | 咳、くしゃみ。喘鳴など。上気道および下気道の粘膜において炎症反応が生じます。 |
目 | 充血、目の痒み、涙目、異物感など。眼球結膜にPM2.5が付着して炎症が生じます。 |
皮膚 | 肌荒れ、発疹、痒みなど。特に、肌の露出部分(顔、首、手)に症状が現れる。 |
出典:
Particulate Matter (PM) Effects on Health – National Park Service
Health and Environmental Effects of Particulate Matter (PM) – U.S. Environmental Protection Agency
PM2.5の検査方法はあるのか?
PM2.5そのものの曝露を直接調べるための医学的な検査方法はありません。
どうやって診断するのか?
PM2.5による健康への影響の診断は、医師による詳しい問診から始まります。いつ、どこで、どんな症状が出るか、PM2.5濃度が高い日との関連性などを確認します。
春季は花粉症と黄砂時期と重なるため、それらとの区別も慎重に行います。ただし、黄砂にはPM2.5が付着することで複合的な症状を引き起こすこともありますので、外来の経験では、鑑別が難しいこともあります。
一般的には呼吸機能検査や血液検査なども参考にしながら、症状の特徴や環境との関連性を総合的に判断します。
何科に受診すれば良いか?

PM2.5による健康問題については、症状の種類によって決めることを提案します。主な呼吸器に関係した症状(咳、息苦しさ、喉の痛みなど)がある場合は、呼吸器内科が適しています。呼吸器専門医はPM2.5による気道や肺への影響を適切に診断および治療することが得意です。
アレルギー症状が主な場合はアレルギー科の医師に相談するとよいでしょう。特に複合的なアレルギー反応やアレルギー疾患の既往がある方におすすめです。
その他の症状別として、皮膚症状(かゆみ、発疹など)なら皮膚科、目の症状(充血、かゆみなど)なら眼科、そして、鼻や喉の症状で困っているなら耳鼻咽喉科への受診が適切です。
子どもの場合は、かかりつけ小児科に相談しましょう。
分からないときは、まずはかかりつけ医に相談し、高次医療施設を紹介してもらう方法があります。
治療法について
PM2.5が引き起こす症状には、症状の種類や病状の重症度に合わせた薬による治療をしていきます。
鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状には、眠気の少ない抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬が役立ちます。鼻づまりがひどい場合は、ステロイド成分を含む鼻スプレーが粘膜の腫れを抑えてくれます。点鼻薬は局所的に作用するので、体全体への影響が少ないことが特徴です。
出典:澤津橋 基広; 花粉症と黄砂・PM2.5の飛来 −三重苦を乗り切るには−, 耳鼻と臨床;65(6):190-195,2019
咳、痰、喘息発作などには、吸入ステロイドを考慮し、症状に応じて気管支を広げる薬や、抗ロイコトリエン薬などのアレルギー反応を抑える薬を組み合わせることもあります。
私の経験で言いますと、外来で、春に流行するスギ・ヒノキ花粉症において、PM2.5あるいは黄砂の飛来が多いときに咳の症状がひどい、喉がイガイガするという症状が悪化するケースを経験することがよくあります。その場合は、両者を念頭に置きながら治療方法を考えていきます。
皮膚のかゆみや発疹には、まず保湿が大切です。セラミドという成分を含む保湿剤で肌のバリア機能を高めましょう。赤みやかゆみがひどい場合は、炎症を抑えるステロイド軟膏を、症状の程度に合わせて短期間使用します。
目のかゆみや充血には、まず人工涙液で目を洗い流すことが大切です。それでも症状が続く場合は、抗アレルギー成分を含む目薬を使います。症状が重い場合は、短期間だけステロイド点眼薬を使うこともありますが、ステロイドは眼圧を上げる作用があるので、眼科専門医の指導のもとで慎重に使用します。
PM2.5に関連する病状のコントロールが不良であるときは、漢方薬も選択肢の一つです。例として、小青竜湯、五虎湯は鼻水や咳などの呼吸器症状などに活用されることがあります。体質に合わせた漢方を選ぶことが大切です。そして、西洋薬と一緒に用いることができますが、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談しましょう。
予防について
PM2.5による症状を予防するには、まず大気汚染の情報を日常的にチェックする習慣をつけましょう。国内では、環境省が提供しているサイト:そらまめくん(環境省大気汚染物質広域監視システム)にPM2.5注意喚起が実施されている都道府県が分かります。
PM2.5濃度が高い日は不要な外出を控え、どうしても出かける必要がある場合はN95マスクを正しく着用しましょう。一方、目を保護するためにゴーグルを活用する方法があります。帰宅したらすぐに手洗い・うがい・洗顔を行うことを勧めます。
窓の開閉もPM2.5の室内への侵入を防ぐ効果があるので、必要最小限にすることが推奨されます。室内対策としては、窓を閉め、高性能HEPAフィルターが搭載されている空気清浄機を使用させると良いでしょう。
出典:現場レポート:ぜん息児へのPM2.5の影響と予防策を知ろう – 環境再生保全機構
よくある質問と回答

PM2.5による症状と通常の花粉症やハウスダストアレルギーの違いは何ですか?
PM2.5が引き起こす症状として、通常のアレルギーと異なり、年間を通じて症状が現れます。ただし、偏西風の影響がある3~5月に多いです。また、室内に入っても症状が続く点や、特定の食べ物や動物との接触がなくても症状が出ることが鑑別点です。花粉症は特定の季節で病状が悪化する傾向があり、ハウスダストアレルギーは室内で悪化することが多いです。一方、PM2.5による症状の発現は、大気汚染の状況に連動することが特徴です。
PM2.5による鼻水や鼻づまりなどの症状を和らげるのに使える市販薬はありますか?
一般的な抗ヒスタミン薬が症状の緩和に役立つことがあります。ドラッグストアにいる薬剤師に相談することを、おすすめします。ただし、市販薬で治らないときは、医療機関の受診を考えてください。
子どもはPM2.5の影響を受けやすいのですか?
小児は成人と比較するとPM2.5の影響を受けやすいです。その理由として、子どもの呼吸器が発達段階であり、免疫システムが十分に成熟していないことがあげられます。喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギーの病気がある子どもは、症状の増悪リスクがあるので注意が必要です。
日本のどの地域においてPM2.5濃度が高くなる傾向がありますか?
西日本、特に九州においてPM2.5濃度が上昇しやすいことが知られています。なぜなら、中国大陸や朝鮮半島からの越境汚染の影響を受けやすいからです。春の黄砂のシーズンでは傾向が強くなります。一般的に、都市部、工業地帯の近くの地域では化学物質の排煙、自動車排気ガスなどの影響で局所的にPM2.5濃度が高まることもあります。