- ホーム
- 非ベンゾジアゼピン睡眠薬のメリットとデメリット
非ベンゾジアゼピン睡眠薬のメリットとデメリット
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン骨格という化学構造をもたない睡眠導入剤のことです。主に催眠と鎮静作用に関わっており、抗不安作用と筋弛緩作用が少ないという特徴があります。不眠症の治療薬として用いられています。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が、Z-drugと呼ばれている理由は何ですか?
世界において、ゾルピデム、ゾピクロン,エスゾピクロンのほか、ザレプロン(国内未承認薬)など、4種類の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬があります。一般名の頭文字にZが多いため、通称としてZ-drugと名付けられています。
出典:Benzodiazepines and Z-Drugs – College of Physicians and Surgeons of Nova Scotia
効果について
脳内のベンゾジアゼピン受容体へ作用して、中枢神経系の抑制物質であるGABAの神経伝達を亢進させます。その結果、脳の活動が抑えられ、眠りを促します。
ベンゾジアゼピン受容体にはサブタイプがあり、中枢型のω1、ω2と末梢型のω3があります。この中で、 ω1受容体は、催眠と鎮静作用に関与しています。一方、ω2受容体は抗不安と筋弛緩作用に関わっています。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、主として睡眠に関わるω1受容体に作用します。国内で使用可能な薬剤の中で、ゾルピデムはω1受容体の選択性が高いです。
出典:白川 清治; 睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠)の薬理学的特性と臨床効果, 日本薬理学雑誌;119(2):111-118,2002
副作用について
症状 | 特徴 |
---|---|
精神神経系症状 | ふらつき、めまい、頭重感、不安、錯視などが現れることがある。 |
一過性前向性健忘 | 薬を飲んでからの記憶がなく、途中で目が覚めたことを思い出せない。 |
もうろう状態 | 服薬してから、意識レベルが低下するため、ぼんやりとした感じになる。 |
睡眠随伴症状 | 眠っているときに立ち上がり、半覚醒の状態で歩き回る症状が出現する。 |
翌朝の眠気 | 個人差はありますが、薬の効果が朝まで持続して眠気が残ることがある。 |
メリットについて
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用すると、深いノンレム睡眠が増えるという薬理作用があります。さらに、薬の半減期が短いので、翌朝の眠気、ふらつきなどの副作用が少ないです。そのため高齢者にも利用しやすいと言えます。
従来からあるベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較すると、依存性も少なくなっています。
デメリットについて
超短時間型作用型の睡眠薬しかないので、中途覚醒、早朝覚醒を主体とする不眠には向かない欠点があります。
国内では、3種類の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬しかないので、薬剤の選択肢が少ないです。
有害事象として、一過性の前向性健忘に注意する必要があります。ゾピクロンあるいはエスゾピクロンを服用すると、翌朝に苦いと感じることがあります。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の種類
国内では、アモバン、マイスリー、ルネスタという医薬品として発売されています。発売から10年経過しており、ジェネリック医薬品を利用することができます。
1.ゾピクロン
ゾピクロンは、30年以上前から処方されている超短時間作用型の睡眠薬です。先発品は、アモバンという名称です。
不眠症だけではなく麻酔前投薬にも、保険適用があります。薬の苦味があることが特徴です。他の非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤と比べると、強い力価があります。
2.エスゾピクロン
エスゾピクロンはゾピクロンの鏡像異性体のS体のみを抽出することで創薬された睡眠薬です。先発品の名称は、ルネスタです。
ゾルピデムとゾピクロンと比較すると、エスゾピクロンの作用時間が長いので、入眠困難だけではなく中途覚醒にも効果があります。薬の苦味は、ゾピクロンより少ない印象です。
3.ゾルピデム
ゾルピデムは、超短時間作用型の睡眠薬の中で、最もω1受容体の選択性が高い薬です。先発品は、マイスリーと呼ばれています。
脱力感、転倒の危険が少ない利点があります。さらに、効果の発現が早く、半減期が短いので、持ち越し効果が少ない特徴をもっています。