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インフルエンザの診断方法【検査と臨床判断の違い】
はじめに

突然の高熱や強いだるさ、関節の痛み。「風邪かな?」と思っていたら、ますます症状が悪化して「もしかしてインフルエンザにかかったかも?」と疑い始めた経験はありませんか?
冬場、特に12月から2月にかけて、周囲で風邪や感染症が流行していると、発熱や倦怠感などの症状がインフルエンザによるものかどうか、見極めが難しいと感じる方も多いはずです。
このページでは、「インフルエンザの検査を受けるべきか?」「検査なしでも症状から診断できるのか?」といった、よくある疑問に対し、内科専門医の視点からわかりやすく解説します。
検査診断:分かること・分からないこと

クリニックでは、インフルエンザ感染症が疑われる人に対して、インフルエンザの検査キットによる迅速診断が広く普及しています。迅速検査を行えば、5分くらいで、陽性(A型またはB型)であるか、それとも陰性であるかについて、分かるようになっています。最近では、新型コロナと同時に測定できるタイプもあります。
検査にも限界があるため、発症から12時間以内など、ウイルス量が少ない時期には陰性の結果が出ることがあります。そのため、発症 から12 時間以降、 48 時間以内の検査が望ましいと報告されています。
出典:羽田 敦子 他; インフルエンザウイルス抗原迅速診断検査利用法, 感染症学雑誌 78 (9), 846-852, 2004
したがって、流行シーズン中や、典型的な症状がそろっている場合には、検査結果が「陰性」でもインフルエンザの可能性を否定できないことがあります。その場合には、医師の経験や症状から判断する「臨床診断」が優先されることがあります。
臨床診断:問診と症状から判断する

インフルエンザの初期対応において、医師が症状や問診の内容から、病状を判断することがあります。特に、インフルエンザの流行期には、検査キットで陰性であっても治療を検討する場合があります。つまり、迅速検査キットに頼らず、患者さんが抱えている症状、病状の経過や医師の身体診察に基づいて病気を判断する方法が臨床診断です。
診断にするために、参考になる情報は次の通りです。
- 発症からの時間経過
- 突然の高熱(38℃以上)
- 倦怠感が強い
- 関節痛がある
- 周囲でのインフルエンザ流行
- 同居家族や同僚の罹患歴
- のどの発赤、咳、鼻水の有無
インフルエンザは、典型的な場合において突然の発熱から始まり、全身倦怠感や関節痛が強く現れます。一方、風邪はのどの痛みや鼻水から始まることが多いため、症状の出る順番なども診断のヒントになります。ただし、高齢者の場合、高熱が出にくく、倦怠感や食欲不振が中心になることもあります。
インフルエンザと診断されるときの主な基準
流行シーズン(通常11月から4月ごろ)に、次のような特徴が揃っているに、医師は診察を行いインフルエンザ感染症と判断します。
まず、「今朝は元気だったのに、昼頃から急に具合が悪くなった」といったように、急に症状が出る ことが一つのポイントです。そして、多くの人が38度以上の発熱 を伴います。さらに、のどの痛みや咳、鼻水などのかぜに似た症状(上気道炎症状)があり、それに加えて、「体がだるい」「全身が重い」 といった強い倦怠感や関節痛などの全身症状がみられます。
鑑別診断

インフルエンザの症状が典型的であり検査キットが陽性であれば、診断が容易ですが、他の感染症や病気でも似たような症状が現れるため、見極め方が大切です。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、発熱・咳・倦怠感といった非特異的な症状は、インフルエンザだけでなく、様々な感染症との判別が難しいケースがあります。
風邪との違い
風邪はのどの痛みや鼻水から始まり、症状の進み方が緩やかです。高熱や関節痛はあまり見られません。それに対して、インフルエンザは、突然の高熱や強い倦怠感、関節の痛みなど、症状が現れ方が急激です。
コロナとの違い
新型コロナウイルスでは、嗅覚・味覚の異常、息苦しさなどが出ることがあり、症状が多様です。潜伏期間が長めで、症状の進行も個人差があるため、コロナとインフルエンザを見分けるには抗原検査あるいはPCR検査が有用です。
出典:新型コロナウイルス感染症とインフルエンザについて – 別府市 健康推進課
肺炎との違い
肺炎は長引く咳、痰、呼吸困難が特徴で、インフルエンザが重症化して発症する場合もあります。その場合は、胸部レントゲン検査あるいは胸部CT検査などの画像診断での確認が必要です。
出典:風邪やインフルエンザが肺炎のきっかけになることも- 鹿児島県国民健康保険団体連合会
診断書について
インフルエンザの診断書は、医師が診察を行い「インフルエンザ感染症と診断した」という事実を証明する文書です。会社や学校で欠勤・欠席の理由を示すために求められることがあります。
まとめ
インフルエンザは風邪や他の感染症と症状が似ていることもあり、正確な診断には検査だけでなく臨床判断も重要です。流行期には、検査結果が陰性でもインフルエンザの可能性を否定できないケースがあります。特に高齢者は症状が典型的ではない場合があるので注意を要します。
診断の際は、症状の経過や家族、周囲の感染状況も手がかりになります。必要に応じて、迅速検査やPCR検査、画像検査などを行うこともあります。