- ホーム
- ブドウ糖負荷試験による糖尿病の診断
ブドウ糖負荷試験による糖尿病の診断
ブドウ糖負荷試験はどんな検査なのか?

ブドウ糖負荷試験は、糖尿病を正確に診断することができる検査です。健康診断の採血項目に入っている通常の血糖値検査では、空腹時の血糖値は正常でも、食事をした後に血糖値が異常に高いレベルになるという「食後高血糖(隠れ糖尿病)」を見逃してしまうことがあります。
決められた量のブドウ糖を摂取した後に、血糖値の経時的な変化(30分後、1時間後、2時間後)を測定します。得られた数値によって、初期の糖尿病を確実に見つけることができるのが、ブドウ糖負荷試験の大きな特徴です。英語では75gOGTTと呼ばれています。
血糖値と同時に血中インスリン濃度も測定することで、インスリンの分泌能力やインスリン抵抗性を詳しく評価することができます。これらの情報によって、糖尿病の原因がインスリン不足なのか、インスリンの効きが悪いのかを判断でき、適切な治療方針の決定に役立ちます。
どんな人が糖負荷試験を受けるべきか?
ブドウ糖負荷試験は、糖尿病の疑いが否定できない方に対して推奨されています。
糖尿病の初期症状(のどの渇き、頻尿、疲労感など)がまだ現れていない段階でも、健康診断で血糖値が高いという判定を受けた人や、尿検査で糖が検出された人(尿糖陽性)が対象となります。
血液検査の血糖について、注目してください。特に重要な数値として、空腹時血糖値が110~125mg/dL、食事に関係なく測定した随時血糖値が140~199mg/dLの範囲にある方は、糖尿病の可能性を詳しく調べる必要があります。また、過去1~2か月の平均血糖値を示すHbA1cが6.0~6.4%の方も検査を受けることを勧めます。
なぜなら、上記に該当する数値が認められるときは、糖尿病予備軍とも呼ばれる状態であり、放置すると糖尿病に進行する危険があるからです。早めに糖尿病を診断することが、治療管理の上で大切です。
出典:糖尿病予備群といわれたら – 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター
その他、以前に境界型(糖尿病予備軍)と診断された場合、妊婦健診で血糖値が高く妊娠糖尿病の可能性がある場合にも、ブドウ糖負荷試験による評価を受けると良いでしょう。
検査を受けられない人
- 明らかな高血糖が確認されている人
- 糖尿病の明らかな症状(口喝、頻尿、体重減少など)がある人
- 胃腸の手術後で糖の吸収に問題がある人
- 炭酸水が飲めない人
検査の方法について

検査前日の準備
ブドウ糖負荷試験が行われる前日の21時以降は、食事を摂らないようにしてください。なぜなら、検査当日に空腹状態が保たれ、正確な検査結果が得られるからです。
ただし、水分摂取は制限されません。水やお茶など、糖分の入っていない飲み物であれば、喉が渇いたと思ったときに水分を摂取してください。
一方、ジュースやスポーツドリンク、砂糖入りのコーヒーなど、当分の入った飲み物は、血糖値に影響するため、飲んではいけません。
検査当日の流れ
検査の日に、空腹の状態を保ったまま指定された時間に来院してください。午前9時頃の検査開始が一般的で、受付を済ませた後、問診で体調確認を行います。前日の絶食状況や薬の服用について確認されます。
検査を受けても問題ないと判断されたら、下記のような進行で検査が行われます。
検査の手順 | 概要 |
---|---|
①空腹時採血 | まず空腹時の血糖値を測定するため、最初の採血を行います |
②ブドウ糖液の服用 | 75gのブドウ糖を溶かした液体:トレーランG(約225ml)を5分以内で飲みます。 |
③定期的な採血 | ブドウ糖摂取後、30分、1時間、2時間の時点において採血を行います |
後日、検査結果の説明と糖尿病の判定が行われます。
出典:Glucose tolerance test – non-pregnant – MedlinePlus
参考までに、妊娠中の場合には、50gのブドウ糖を負荷して試験が行われます。通常のブドウ糖の量より少ないものを飲んで、1時間後の血糖値を測定します。空腹でない条件で検査を受けられます。妊娠糖尿病のスクリーニングとして、妊娠24週から28週の間に行われます。その後、1時間後の血糖が140mg/dL以上の場合、75gOGTTを検討します。
出典:Glucose tolerance test – Mayo Clinic
検査の所要時間について
受付手続きから検査終了まで、合計で3時間くらいの時間がかかります。
ブドウ糖負荷試験の判定基準について
ブドウ糖負荷試験の結果は、空腹時血糖値と2時間後血糖値の2つの数値によって、「正常型」「境界型」「糖尿病型」の3つに分類されます。
正常 | 糖尿病 | |
---|---|---|
空腹時血糖値 | 110mg/dl未満 | 126mg/dl以上 |
2時間後血糖値 | 140mg/dl未満 | 200mg/dl以上 |
判定 | 両方を満たすと「正常型」 | いずれかを満たすと「糖尿病型」 |
正常型にも糖尿病型にも属さないものが「境界型」と判定されます。一般的に、「糖尿病予備軍」とも呼ばれています。
妊娠中の方では、一般成人とは異なるより厳しい基準値が設定されています。具体的には、空腹時血糖値92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、あるいは2時間値153mg/dL以上の三つの基準値の中で、1つでも該当すれば、妊娠糖尿病と診断されます。
よくある質問と回答
ブドウ糖負荷試験は痛い検査ですか?
採血するときに軽い痛みを感じる程度です。しかし、複数回の採血があります。
前日に食事をしてしまった場合はどうなりますか?
正確な検査結果が得られないため、検査日を延期します。
費用はどのくらいかかりますか?
保険適用の場合、3割負担で約2,000~3,000円です。医療機関や追加の検査項目の有無によって変わりますので、予約時に医療機関に確認しましょう。
境界型と判定されたら、必ず糖尿病になりますか?
全ての人が糖尿病に進行するわけではありません。生活習慣の改善(食事と運動)により、正常型に戻ったり、糖尿病への進行を予防したりすることができます。定期的な医師の診察を勧めます。
検査結果はいつ頃分かりますか?
一般的には、検査を受けてから1週間くらいで結果が判明します。
なぜ75gOGTTと呼ばれるのですか?
75g Oral Glucose Tolerance Testを略した用語で、75グラムの経口ブドウ糖負荷試験の意味です。「Oral」は経口(口から飲む)、「Glucose」はブドウ糖、「Tolerance Test」は負荷試験(耐性検査)を示しています。
風邪や体調不良のときでもブドウ糖負荷試験は受けられますか?
体の具合が良くないときは、受けられません。なぜなら、検査結果に影響するからです。体調が戻ってから1週間ほど経過したときに検査を予定します。