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インフルエンザワクチンは接種したほうがいいの?
はじめに

毎年、年末にかけてインフルエンザ感染症が増える時期になると、「ワクチンを打っておいたほうがいいのか?」と迷う方が増えます。
病院や学校から勧められても、「自分は、インフルエンザにかかったことがないし、健康だから必要ないかも」と感じる人もいるでしょう。インターネットにはたくさんの情報があり、かえって判断が難しくなることもあります。
インフルエンザは風邪とは違い、全身症状が出て病状が重くなりやすい感染症です。高熱や全身のだるさがつらく、特に高齢の方や持病がある方は、肺炎や脳の合併症を起こすリスクがあります。
この記事では、インフルエンザワクチンを打つことで得られるメリットを説明し、どんな人に予防接種がすすめられているのかを紹介します。最終的には、各自の選択となりますが、「自分や家族にとって必要かどうか」を納得するための判断材料として、この記事がお役に立てればと思います。
インフルエンザ予防接種の基礎知識
インフルエンザワクチンは、感染力のないウイルス成分(抗原)を使って作られており、体内に投与することで免疫を事前に作り、ウイルスに備える仕組みです。
完全に感染を防ぐものではありませんが、重症化を防ぎ、インフルエンザにかかったとしても症状が軽く済むことが期待されます。特に高齢者や妊婦、子どもなど重症化しやすい人にとっては大切な予防方法であり、周囲への感染拡大を防ぐ意味でも重要です。
どれくらい効果があるのか?

世界保健機関(WHO)や国立健康危機管理研究機構は、流行前にその年に流行しやすいウイルスの型を予測し、ワクチン製造に反映させています。
ワクチンがウイルスの型と一致した年は、40%から60%の感染予防効果が確認されており、特に高齢者や基礎疾患のある人では入院や死亡のリスクを大幅に低下させる効果があると報告されています。
インフルエンザワクチンは、感染を完全に防ぐものではありませんが、症状の悪化を抑え、入院や命にかかわる事態を避ける効果があります。さらに、医療機関の負担を減らし社会全体の感染拡大を防ぎます、つまり、公衆衛生上の役割も果たしています。
出典:Benefits of the Flu Vaccine – CDC
予防接種を受けるべき人とは?

高齢者の場合
加齢にしたがっては免疫力が低下しやすく、基礎疾患を抱えることが多くなります。その結果、インフルエンザにかかると重症化しやすい傾向があります。肺炎や心不全などの合併症を引き起こし、入院や死亡に至るケースも少なくありません。
厚生労働省も高齢者へのワクチン接種を推奨しています。たとえ感染しても予防接種によりインフルエンザ感染症の症状を軽くできる可能性があります。人と接する場が多い高齢者は、周囲への感染拡大を防ぐ意味でも接種の意義は大きいと言えるでしょう。
国内の研究報告では、65歳以上で福祉施設に入っている方の場合、インフルエンザの予防接種によって、かかる人が3〜5割ほど減り、亡くなるリスクも8割近く減らせたというエビデンスがあります。つまり、予防接種には命を守る力があり、インフルエンザ予防接種を受けるべき根拠の一つになっています。
出典:インフルエンザワクチンの効果に関する研究 – 厚生労働科学研究成果データベース
子どもの場合
子どもは体の発育途上であり、病原体に対する免疫が十分ではありません。そのため、インフルエンザにかかると高熱やけいれんなどの重い症状が出やすく、脳症などの合併症を起こすリスクもあります。特に乳幼児は体温調節がうまくできず、高熱が長く続く傾向があります。
また、保育園や学校など集団生活の場にいることが多いため、感染拡大の中心となりやすいです。同じクラスで集団発生して休校になるケースが流行期にみられます。そして、家庭内の二次感染も起こりがちです。ワクチン接種によって感染や重症化を防ぐだけでなく、養育者への感染を減らす効果も期待できます。
一般的に、ワクチンまたはその成分に重度のアレルギー反応を起こしたことがある子ども、卵アレルギーのある子ども以外は、流行時期が来る前にインフルエンザ予防接種を受けるべきです。
出典:The flu vaccination: who should have it and why (winter 2025 to 2026) – UK Health Security Agency
妊婦の場合
妊婦は免疫力が低下しやすく、インフルエンザにかかると重症化や早産のリスクが高くなります。特別な事情がなけば、妊娠期間のどの時期であっても、予防接種を受けるほうが良いと考えられます。
万が一、インフルエンザにかかると胎児への影響も心配され、高熱による発育リスクや、治療薬の制限もあります。これらの理由から、ワクチンによる感染予防は意義は大きいと考えられます。
一般的な注射タイプの不活化ワクチンであれば、安全性が高く、胎児にも抗体が移行することで、赤ちゃんを守る効果も期待できます。
働く世代
20〜50代の働き盛りの世代でも、インフルエンザにかかると高熱や倦怠感などの強い症状が出て、数日間の欠勤を余儀なくされることがあります。
体力があるから大丈夫、今までインフルエンザにかかったことがないから問題ないと判断される方もいますが、実際には業務に大きな影響を及ぼすケースも少なくありません。
インフルエンザにかかると、特にワクチンを受けていない若い働く世代では、仕事に支障が出やすいです。カナダ、ヨーロッパ、アメリカでの調査では、インフルエンザによって本人の体調不良だけでなく、家族の看病などによっても、仕事の時間が減ったり生産性が大きく落ちるケースが報告されています。
したがって、早めのワクチン接種によって、これまで述べたようなリスクを減らすことが期待されます。さらに、高齢者や妊婦と接する機会のある方は、インフルエンザ予防接種を受けたほうがいいと考えられます。
まとめ
インフルエンザは年齢や体力に関係なく、生活に大きな影響を与える病気です。ワクチンを打つことで、重症化や周囲への感染を防ぐ効果が期待されます。自分と大切な人の健康を守るために、予防接種を受けるか早めに考えてみましょう。