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カバノキ科シラカンバの花粉が引き起こすアレルギー
春のシラカバ花粉症を理解しましょう
春の訪れは多くの人にとって待ち遠しい季節ですが、花粉症に悩む方々にとっては、この時期が一年で最もつらい時期となります。特に北海道で多くみられるシラカバ花粉症のある人は、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状に加えて、口腔アレルギー症候群のリスクにも悩まされます。
花粉症の症状は、ただ不快なだけでなく、日常生活にも大きな影響を与えます。具体的には、仕事あるいは勉強をしているときの集中力の低下、外出するときの不安があります。
今回のブログ記事では、北の大地に多いシラカバ花粉症の基本から、セルフチェック、病院で受けられる治療法、セルフケアのヒントなど、カバノキ科の花粉によるアレルギー症状と上手に付き合うための情報をお伝えします。
シラカバ花粉の特徴を知る
シラカバはカバノキ科に属する落葉高木の一種で、白樺と表記されます。冷涼な気候を好む樹木で、国内では北海道に多く自生しています。本州では、福井・岐阜県の以北に生息し、特に長野県を中心に分布しています。
出典:筑波大学生物学類
春になると花序として知られる独特の花を咲かせます。これは長い緑色の尾状の構造で、後に黄色に変化します。そして、雄花序から花粉を大量に放出します。シラカバの花粉は風に運ばれ、数十キロメートル先にある居住地まで飛散することが知られています。もちろん、市街地に植えられているシラカバからも花粉が周辺の地域に飛び散っています。
一般的に、シラカバの開花期は4月~5月です。そして、北海道の地域にもよりますが、シラカバ花粉が飛散するピークは、5月上旬ごろです。そのため、この時期に鼻炎、結膜炎の症状に悩まされる北海道民が多くなる傾向です。
例えば、札幌、旭川のシラカバ花粉の観測結果によれば、圧倒的にスギ花粉よりシラカバ花粉にほうが多いことが報告されています。これは、北海道にみられる花粉症の特徴の一つと言えるでしょう。
症状について
シラカバ花粉症は、春の終わりから初夏にかけて、白樺の花序から飛散したシラカバ花粉がアレルギー症状を引き起こします。主な症状には、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみがあります。ときどき、咳が出るようになる人もいます。
鼻炎と結膜炎の症状がひどいと、日常生活に支障をきたします。
外来で花粉症で悩んでいる人の悩みとして次のようなものがあります。実際の話を聞き取ると、皆さんがつらい体験をされている印象です。
「毎年、大型連休の頃に、鼻炎の症状が悪化しています。毎日の仕事で集中力を保つのが難しく、ミーティング中にも鼻水とくしゃみに悩まされています。最近は薬の効果も薄れがちで、症状を何とかしてほしいと思っています。」
「いつも、シラカバ花粉のシーズンに悩まされています。特に通勤時のくしゃみと鼻水がつらく、朝の満員電車では本当に苦労しています。この季節はいつも不快で、マスクや薬に頼りながらも、なかなか症状は改善されません。」
「高校生ですが、シラカバ花粉症に悩まされています。春のシーズンは、アウトドアでの練習が特につらいです。透明な鼻水がどんどん出てきて、目もかゆいです。プレー中も集中できなくて、試合に影響が出てしまいます。」
カバノキ科の植物(シラカンバ、ハンノキ、オオバヤシャブシ)の花粉症がある人が、バラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボ、アーモンドなど)を食べたり、豆乳を飲んだりすると、口の中、のどに、かゆみ、腫れ、イガイガ感が生じることがあります。
それらの食品を摂取してから、数分以内に症状が発現するので、即時型のアレルギーと言えます。病名は、口腔アレルギー症候群(OAS: oral allergy syndrome)です。
セルフチェックをしてみましょう
シラカバ花粉症かもしれないかどうかを判断するために、以下のチェックリストを試してみましょう。次の項目に当てはまる場合が多いときは、シラカバ花粉症の可能性があります。この簡易チェックの結果は目安にはなりますが、正確な診断を受けるためには、医師の診察を受けてください。
症状のチェック
- 春の終わりから初夏にかけて、くしゃみを繰り返す
- 鼻水や鼻づまりが春の特定の時期に悪化する
- 目がかゆく、充血することがある
- リンゴ、ナッツなど特定の食品を食べると、口内にかゆみや違和感が生じる
季節性と環境要因はあるか?
- シラカバ花粉の飛散する時期に症状が目立つ
- シラカバの木が多い地域に行くと、症状が悪化する
- 症状が毎年同じ時期に現れ、一定の期間続く
診断の方法
医師は、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどの典型的なアレルギー症状を確認します。そして、あなたの鼻炎および結膜炎の症状がシラカバ花粉の飛散時期に特に悪化するかどうかを聞き取ります。アレルギー症状が他の要因、例えば風邪や他の種類のアレルギーと鑑別していきます。
診断を確定するためには、アレルギー検査が行われることが一般的です。スキンテストを行うと、シラカバ花粉を含む特定のアレルゲンに対する皮膚の反応を判断することができます。
その他の方法として、採血をして体内のアレルギー特異的IgE抗体のレベルを測定する方法があります。実際に、鼻水の成分を顕微鏡で観察して、アレルギー疾患のときに増える好酸球が増加しているか評価することもあります。
クリニックでは、 Viewアレルギー39という名称の血液検査を施行することで、39種類のアレルゲンを一度に調べることができます。その検査項目には、カバノキ科の花粉として、シラカバとハンノキが含まれています。そして、シラカバ花粉症と関連のある口腔アレルギー症候群の原因となるリンゴとキウイも調べることができます。
治療法について
シラカバ花粉症の治療には、病状に応じてさまざまな種類の薬を組み合わせることがあります。
一般的に用いられるのが抗ヒスタミン薬です。この薬剤の特徴は、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどの症状を和らげる効果があることです。しかし、副作用として眠気を引き起こすことがあるため、運転する場合には注意が必要です。それに対して、抗ロイコトリエン薬は、鼻づまりを軽減する効果があります。
抗ヒスタミン薬および抗ロイコトリエン薬を用いても鼻炎のコントロールが不良である場合には、第一世代の抗ヒスタミン薬とステロイドの合剤を用いることがあります。この薬剤には、強力な抗炎症作用があります。しかし、長期の使用によると副作用のリスクがあるので、短期の使用に留めるほうが無難です。
点鼻薬と点眼薬は、それぞれ鼻と目の症状に直接作用し、局所的な症状の緩和に役立ちます。飲み薬と併用することもあります。こららの薬剤は外用薬なので、飲み薬にみられるような眠気の副作用が出現しないというメリットがあります。
注射薬として、ノイロトロピン注射があります。炎症を抑える作用があり、アレルギー性鼻炎に対して保険適用があります。一時的に、症状を何とか緩和したいときに用いることがあります。
予防する方法
シラカバ花粉症の症状を予防したい人が知っておきたいセルフケアを説明します。アレルギー反応は、いくつかの対処法を実践することで、軽減することができます。
まず、天気予報などでシラカバ花粉の飛散が高い予想の日は、できるだけ屋外での活動を避けるようにしましょう。特に朝の時間帯や風が強い日は、花粉の飛散が激しいため、外出を抑えるほうが無難です。また、外出時には、マスク、花粉対策メガネを着用することで、花粉が鼻や目の粘膜に付着するのを防ぐことができます。
室内での対策としては、家の中に花粉を持ち込まないことを心掛けましょう。玄関で衣服を振り払ったり、部屋の中では花粉フィルター付きの空気清浄機を使用したり、屋内の花粉の浮遊を極力減らすようにすることを勧めます。
食事面では、シラカバ花粉症の患者は、口腔アレルギー症候群を併発することがあります。つまり、シラカバ花粉に反応する人は、リンゴ、桃、梨、キウイなどのフルーツ、ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツ)、野菜(セロリ、ニンジンなど)を食べたときに、アレルギー反応が現れるリスクがあるということです。
出典:山本 哲夫 他; シラカバ花粉感作例における口腔アレルギー症候群を起こす原因食物のクラスタリング, 日耳鼻;111:588-593,2008
生の果物や野菜を摂取することでアレルギー症状が現れることが多いです。そのため、リスクがある食品を避けたり、加熱処理をしたり、注意をしましょう。