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ヨモギの花粉が原因となるアレルギーの症状と対策
ヨモギ花粉症とは
ヨモギは多年草の一種で、キク科の植物です。全国各地の野原、空き地、河川敷でみられます。ヨモギ花粉によって引き起こされるアレルギー反応は、ヨモギ花粉症と呼ばれています。
国内で、夏の終わりから秋にかけてヨモギ花粉が飛散します。その期間において、ヨモギ花粉症を発病すると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の掻痒感といった症状が現れます。
ヨモギ花粉症は、いつからいつまで注意が必要ですか?
シーズンは地域によって異なりますが、一般的には8月から10月まで続きます。特に9月は、飛散のピークなので注意しましょう。同時期には、ブタクサ花粉も飛散します。詳しくは地域の気象情報で確認してください。
ヨモギ花粉は、9月中旬ごろに、穂状に小型の頭花をたくさんつける特徴があります。そのため、秋のはじめのころ、花粉の飛散が多いのです。
日本だけではなく、中国(主に北部)でも、季節性アレルギー性鼻炎の一つであることが報告されています。
出典:由 栄 他; 中国における鼻アレルギー疫学調査 – その日本との比較, 耳鼻と臨床;44:634-643,1998
ヨモギ花粉症が起きるメカニズム
秋にヨモギの花粉を吸引すると、花粉が鼻、目、のど、気管支の粘膜に付着します。ヨモギ花粉症が発症している人の場合、私たちの免疫という仕組みが過剰に反応してしまいます。その結果、上気道の粘膜において炎症が生じて、鼻水、目の痒み、咳などの症状を引き起こします。
その人の体質、遺伝的な要因が関与しており、鼻炎、結膜炎が発症すると考えられています。
典型的な症状は何ですか?
ヨモギ花粉が引き起こす症状として、サラサラの鼻水が止まらなったり、鼻づまりが苦しくなったり、目が痒くなったりします。他にもさまざまな症状が現れます。
鼻炎がひどいとティシューペーパーで何度も鼻をかむので、鼻の周りにおいて肌荒れができてしまう人もいます。
アレルギー反応の部位 | 特徴 |
---|---|
鼻 | よくある症状は鼻炎の症状です。ほとんどの人が経験し、鼻水、鼻づまり、くしゃみの連発が起きます。花粉を吸引すると、すぐに現れます。 |
目 | もう一つの典型的な症状は目の症状です。目のかゆみ、充血、涙が止まらないという症状がみられます。結膜炎と呼ばれています。 |
皮膚 | ヨモギ花粉が付着した皮膚の痒みを訴えます。皮膚の発赤、湿疹が生じます。秋にヨモギがたくさん生育している山間部で作業しているときに、症状が現れることがあります。 |
肺 | アレルギー症状がひどい場合は、気管支喘息のような症状を引き起こします。この現象は、ブタクサ花粉症と同様と言えます。呼吸困難、咳、息切れなどが生じます。 |
全身 | 長い間、鼻炎、結膜炎の症状が続くと、体力を消耗するため、疲労感が蓄積します。頭痛、不眠、食欲不振などの症状も起きる場合があります。 |
鼻水や鼻づまりの症状は風邪と似ていて、どちらの症状であるか、混乱することもあるでしょう。しかし、風邪の症状は短期間で治まるのに対し、ヨモギ花粉症の場合は症状が長く続くことが特徴的です。また、花粉症の場合、ヨモギの花粉が多く飛んでいる時期であると、あるいは、秋にヨモギが群生している場所に近づくと、アレルギー反応が強く出やすいです。
ヨモギ花粉症は、口腔アレルギー症候群との関連が指摘されています。具体的には、ヨモギの特異抗体が陽性の場合、キウイ、メロン、ミカン、セロリなどの食物を摂取すると、口の中やのどがかゆくなったり、唇が腫れたり、口腔の症状が現れることがあります。
出典:朝倉 光司 他; 口腔アレルギー症候群と各種花粉感作,特にヨモギ花粉感作との関連性, アレルギー;55:1321-1326,2006
どんな人がヨモギ花粉症に注意が必要ですか?
グループ | 特徴 |
---|---|
既に他のアレルギーを持つ人 | もともと、アレルギー体質の人は、他のアレルゲン(秋にみられる雑草の花粉)に対しても反応する可能性が高いので注意する必要があります。 |
アレルギー体質の家族がいる人 | アレルギーは遺伝的に引き継がれることがあります。血縁の両親や兄弟がアレルギー持ちの場合は、花粉症を発症しやすい可能性があります。 |
ヨモギが豊富に生育している場所に住んでいる人 | ヨモギは道路わき、空き地、公園、河川の堤防などで、群生します。ヨモギが自生している場所で生活している場合は、ヨモギ花粉に曝露する確率が高くなります。 |
免疫系に影響を与える病気や薬剤を服用している人 | がん、感染症など、免疫系に影響を及ぼす病気がある場合、治療のために免疫を抑える薬剤を服用している場合は、アレルギー反応を引き起こしやすいです。 |
家の周りで草刈りをしていたり、お墓参りで草むしりをしているときに、ヨモギ花粉症の症状を発症したという事例を経験したことがあります。
検査と診断の方法について
秋にヨモギがたくさん生えている場所で、鼻炎あるいは結膜炎の症状が出るときは、ヨモギ花粉症の疑いがあります。さらに、毎年、夏の終わりから秋にかけて症状が悪化する場合は、ヨモギ花粉が関係している可能性を考えます。
しかし、それだけでは他の秋の花粉症や風邪との区別が難しい場合があります。そんなときは、クリニックあるいは病院の診察を受けて、アレルギーを調べることができる血液検査や皮膚テストによって確かめることを勧めます。いずれも、診断に必要な検査は、保険適用です。
治療法について
ヨモギ花粉症の治療は、鼻、のど、目の粘膜で起きるアレルギー反応を抑えることです。具体的な薬剤として、抗ヒスタミン薬および抗ロイコトリエン薬が用いられます。単体で使うこともありますが、組み合わせて処方される場合もあります。
症状は重いときは、ステロイドの内服を考慮します。
お出かけ前に鼻スプレーを使ったり、目が痒いときは抗ヒスタミン作用のある目薬を点眼したり、アレルギー反応が起きている局所の粘膜の炎症を抑える治療法があります。
漢方薬である小青竜湯は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎の保険適用があります。抗ヒスタミン薬との併用もできます。漢方は眠気の副作用がないので、筆者の外来では、しばしば処方しています。
飲み薬によって鼻炎の症状がコントロールできないときは、ノイロトロピン注射を打ってもらうという方法もあります。
ヨモギ花粉症を根本的に治す治療法はありませんか?
アレルギーの原因となる物質を少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく舌下免疫療法は、開発されていません。
ヨモギ花粉症に効く市販薬はありませんか?
ドラッグストアで販売されている抗ヒスタミン薬は、鼻水、鼻づまりの症状を緩和する作用があります。必ず薬剤師に相談して、適切な種類を選択することが大切です。
自分で取り組むことができる予防策
ヨモギのアレルギー症状を防ぐ方向性は、ヨモギ花粉の暴露を抑えることです。下記に紹介するセルフケアによって、あなたの生活の質を改善するのに役立ちます。
- ヨモギ花粉の飛散が多い時期の外出を控える
- ヨモギの生息地域に行かない
- 不織布マスクを着用する
- 花粉症メガネをかける
- 部屋の中で空気清浄機を使用する
長期的な対策としては、健康的な生活習慣を保つことを勧めます。アレルギー反応は体調不良があると、現れやすいです。十分な睡眠をとることで、疲労を回復させることも大切です。
定期的な運動やバランスのよい食生活は、免疫機能を安定させるために大切なことです。さらに、「ヨモギ花粉症の症状かもしれない」と思ったら、早目に医師に相談しましょう。