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降圧剤の種類と副作用について解説します
高血圧を薬で治療する目的とは
血圧が高くなると、全身の血管に負担がかります。治療せずに放置すると、動脈の血管壁が肥厚して硬くなります。そして、血管の内腔が狭くなることで、血液の流れが悪くなります。動脈硬化と呼ばれています。
高血圧は脂質異常症、糖尿病、喫煙などと同じく、動脈硬化の危険因子の一つです。
最も障害されやすい血管は、心臓、脳、腎臓にあります。これらの臓器、中枢神経系が障害されると、狭心症、心筋梗塞、腎不全、脳血管障害が発症します。
降圧剤を飲む目的は、適正な血圧にコントロールすることで、臓器を保護することです。
出典:国立循環器病研究センター
高血圧の薬の種類
外来でよく使われている薬について、血圧を下げる作用機序を解説します。高血圧の重症度、緊急度、既往歴、合併症などを検討して薬を決めていきます。具体的な薬品名についても紹介します。
合併症がないときは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を第一選択とすることが多いです。
目標とする血圧値にコントロールするために、2から3種類の降圧剤を使うことがあります。
1.血管を広げる
カルシウム拮抗薬は、動脈の血管壁にある平滑筋細胞の収縮を抑えることで、血管を広げます。外来では良く使われる降圧剤です。
アムロジン、ノルバスク、アテレック、アダラート、ニバジール、ヘルベッサー、コニール、カルブロックなど。
α遮断薬は、昇圧作用のあるノルアドレナリンが末梢血管にあるα1受容体をブロックすることで、血管を拡張させます。
カルデナリン、デタントール、エブランチル、バソメットなど
ACE阻害薬は、腎臓で産生されている「血管を収縮させるホルモン(アンジオテンシンⅡ)」を作るために必要な変換酵素を抑えます。ARBが登場してからは、処方する頻度が減っています。
レニベース、セタプリル、ゼストリル、ロンゲス、コバシル、 コナン、タナトリル、インヒベース、エースコール、アデカット、チバセン、カプトプリルなど
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、昇圧作用にあるホルモン(アンジオテンシンⅡ)の受容体に拮抗することで、血圧を下げます。外来では処方されることが多い降圧剤の一種です。
ニューロタン、ブロプレス、ディオバン、ミカルディス、オルメテック、イルベタン、アバプロ、アジルバなど
レニン阻害剤は、 腎臓で産生される酵素レニンを阻害することで、アンギオテンシノーゲンからアンギオテンシンⅠの産生を抑制します。
ラジレス
2.塩分や水分を体外に排出する
利尿剤と呼ばれる薬です。循環する血液量を減らことで、血圧を下げます。水とナトリウムは一緒に動く性質があるので、腎臓を介して塩分を排泄すると、尿量が増加します。その結果、血管中の水分が減ります。
フルイトラン、ヒドロクロロチアジド、ナトリックス、アルダクトンA、セララ、ラシックス、ルプラックなど
3.交感神経を抑える
β遮断剤と呼ばれる薬です。交感神経(α作用とβ作用がある)には、昇圧、脈拍数上昇の作用があります。β遮断薬には、心臓や血管に働きかけ、心臓の心拍数を減らす、収縮力を弱める作用があります。その結果、降圧されます。
テノーミン、メインテート、セロケン、ハイパジール、インデラルなど
αβ遮断薬の場合は、β遮断薬のはたらきに加えて、α作用を抑制することで、末梢血管を拡張させて血圧を下げます。
アーチスト、アロチノロール塩酸塩など
副作用について
どんな降圧剤でも副作用は起こることがあり、診察のときに薬を飲んでから体調の変わりがないか、血圧の下がり具合など、話を伺います。さらに、肝機能障害など、定期的に血液検査でチェックする必要があります。
もちろん、薬によって血圧が下がりすぎないようにすることも大切です。降圧剤の種類別のよくある副作用は、以下のようなものです。
薬の種類 | 副作用 |
---|---|
カルシウム拮抗薬 | 顔のほてり感、頭痛、歯肉の肥厚など |
ARB | カリウム値の上昇 |
ACE阻害薬 | 空咳、血管浮腫、カリウム値の上昇 |
利尿剤 | 脱水、尿酸値の上昇、カリウム値の低下 |
β遮断剤 | 徐脈(めまい、ふらつき感)、喘息、糖代謝異常 |
α遮断剤 | 起立性低血圧(めまい、動悸など)、尿漏れ |
薬の飲み合わせについて
よくある降圧剤と食品の注意点として、カルシウム拮抗薬とグレープフルーツがあります。体内での薬の濃度が上がり、血管の拡張作用が強くなります。
このことが原因で、頭痛、ふらつき感が降圧作用が強くなってしまうことが原因です。その結果、頭痛、動悸、ふらつき感が生じる可能性があります。
薬を減らす・中止するタイミングは
- 血圧の薬を一度飲みはじめると、ずっと飲み続けなければいけませんか?
- 薬を止めるタイミングを教えてください
まずは、心臓、脳、腎臓の合併症がないことを確認しましょう。繰り返しますが、降圧剤を飲む目的は、臓器の保護です。
減量をする、塩分の摂取を控える、定期的に運動する、アルコールを止めるなど、ライフスタイルを変えることで、血圧が下がります。例えば、肥満が原因となっている高血圧の場合、痩せることで、徐々に血圧が下がっていきます。
毎日、血圧の記録をつけて(血圧日誌という)、少量の降圧剤を服用している状況で、家庭血圧が目標値に近づいてきたら、担当医に、降圧剤の減量あるいは中止について相談しましょう。