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高血圧を放置するとどうなる?病気の発症リスク
症状が出ないまま進行するから怖い

高血圧の初期は自覚症状を感じないことが殆どです。そして、無症状であることが多く、体のどこかの部位が痛いということはないので、放置されがちです。しかし、血圧が高い状況が続くと私たちの全身の血管に大きな負担になります。
高い圧が血管壁にかかることで、血管の構造が損傷して、亀裂が入りやすくなります。その部位に脂質の沈着や炎症が引き起こされることで、動脈硬化が進行します。こうした血管の変化が、脳、心臓、腎臓など重要な臓器に波及すると、不可逆な障害につながります。
世界保健機関(WHO)は、「高血圧を治療しないで放置すると、心血管疾患、脳卒中、腎疾患などを引き起こす」と警鐘をならしています。
健康診断で血圧の異常を指摘されても無症状だからという理由で、放置していませんか? このページでは、未治療の高血圧のリスクについて解説します。
高血圧を放置すると起こる3つの大きなリスク
1.脳の病気:脳卒中・脳出血
高血圧は脳動脈を傷つけ、血管の狭窄・破綻・血栓形成を引き起こします。その結果、脳梗塞・脳出血のリスクを上げます。さらに、慢性的な血流の障害は血管性認知症の進行にも関わっています。つまり、血圧が高いことは、脳卒中の危険因子であることを知っておきましょう。
2.心臓の病気:心筋梗塞・心不全
血圧が高い状態が続くことは心臓に負荷をかけ、左心室の肥大を誘発します。最終的には心臓のポンプ機能が低下するので心不全を引き起こします。さらに、高血圧は動脈硬化を進行させるので、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発症リスクを高めます。
3.腎臓の病気:腎機能低下
高血圧は腎臓の糸球体や血管にダメージを与えます。そして、腎臓の働きを低下させます。慢性腎臓病(CKD)の患者の多くに高血圧が認められますが、血圧が高い状況は腎臓の負担を増やしてしまう悪循環があります。末期になると、人工透析の管理が必要になる場合もあります。
出典:Fuchs et al. High Blood Pressure and Cardiovascular Disease. Hypertension. 2020;75(2):285-292.
なぜ高血圧を放置すると命に関わるのか?
高血圧には、強い圧が血管壁にかかり続ける病態があります。この慢性的なストレスは内皮機能障害を引き起こし、血管壁の構造を変形させ、硬く、そして、狭くしていきます。これにより血流が滞るので、プラーク(コレステロールの蓄積)が作られやすくなります。
動脈硬化が進む結果、血管の出血および梗塞のリスクが高まります。つまり、血圧が高いと全身の血管の病気を引き起こし、生命の維持に重要な脳・心臓・腎臓などの臓器が障害されます。そして、そのダメージが大きいと生命を脅かすことになるのです。
血圧の治療を放置した場合:死亡リスクについて
血圧を治療しない状況が続くと心臓、脳の病気によって生命の危険が迫ることが分かっています。
海外の研究報告では、治療を受けていない高血圧の人は脳卒中による死亡リスクが約2.5倍、心臓病で1.7倍に上昇すると試算されています。治療しても血圧が下がっていない人は、脳卒中で約3倍、心臓病で2.2倍のリスクになることが分かりました。後者の場合は、血圧の薬を適切に服用していない可能性も考えられます。
その一方、高血圧が治療によってコントロールされている人は、死亡リスクが上昇しないことが判明しました。つまり、血圧の治療は重大な病気の発症を予防する効果があることを意味しています。
私の外来においても、無症状の時期を過ぎて、頭痛、めまいなど初期の高血圧の症状が出始めて初めて来院する例もみられます。脳と心臓への深刻なダメージが起きる前に、早めに治療を受けることが大切です。
後悔しないために
「もっと早く病院に行っておけばよかった」
「薬を嫌がらず飲んでいればこんなことにはならなかった」
自分が心筋梗塞、脳梗塞になって入院したときに初めて、日頃の血圧管理の大切さを知るという状況もあるかもしれません。
人間ドックの結果、高血圧があると分かっていたにもかかわらず医療機関を受診せずにいた人が、何年か先に、脳卒中を発症して手足の麻痺が残ったり、腎不全で透析生活を送ることになったり、日常生活に支障をきたすケースが起こり得ます。
こうした手遅れの状況を防ぐには、自覚症状の有無にかかわらず診察を受け、血圧の状態を把握することが何よりの予防です。
「今はまだ大丈夫」という思い込みを止めて、一度、循環器専門医に相談してみませんか?
早めの対処があなたの健康の維持につながります。