高山病を予防する方法

高山病とは

標高が高くなると、気圧が下がります。そのため、体内に取り込まれる酸素が不足していきます。高山病は2,000m以上の高地に移動することにより、身体の症状が出現する状態のことです。

 

最近になって、標高の高い地域への観光旅行（ペルー、ボリビア、チベット、ネパールなど）、登山（富士山、南アルプス、北アルプスなど）を楽しむ方が増えており、高山病の予防を相談したい方が増えています。

 

原因について

高地に急に移動することで、酸素分圧が低くなるため、低酸素血症となります。同時に換気回数を増やして、換気量を増やそうとするため、二酸化炭素の濃度が低くなります。

 

肺血管の血圧上昇、脳の血流増加によって、肺高血圧、肺水腫、脳浮腫などの症状が出現します。

 

どんな人がなりやすいか？

高地への順応力は個人差がありますが、急速に高度を上げるような移動、また、運動量が多いと発症しやすい傾向があります。

 

年齢層でみると、高齢者、小児は注意すべきです。その他、疲労感、睡眠不足がある場合、基礎疾患として貧血があると、高山病になりやすいです。

 

どんな地域で高山病が起こる可能性があるか？

 

アジア：　中国（雲南省、九寨溝、青蔵鉄道の旅など）、チベット（ラサ観光など）、ネパール、インド（ラダック地方）、キナバル山（マレーシア ）、

 

 

南米：　ペルー（クスコ、マチュピチュ、チチカカ湖など）、ボリビア（ウユニ塩湖など）、ギアナ高地

 

 

アフリカ：　キリマンジャロ（タンザニア）

 

ヨーロッパ：　スイス

 

国内：　富士山、アルプス

 

富士山の場合、登山口によって高さが異なりますが、５合目から６合目くらいから注意が必要です。

 

症状について

軽症であると、山酔いと呼ばれる症状です。脳浮腫による症状であるため、二日酔いにも似ています。

• 頭痛
• 倦怠感（元気がない）
• 食欲の低下
• 吐き気（気持ち悪い）と嘔吐
• 不眠

症状がひどくなると、安静時に息切れ、チアノーゼなどが生じる高地肺水腫、重篤なタイプである高地脳浮腫になります。

 

取るべき対策としては、体調不良に気づいたら、それ以上高い地点に上がらないことが大切です。そして、低い地点まで降りることです。特に、高齢者、子どもの場合は、早目の判断が必要です。

 

予防法について

１．コンディションを整えること

疲労感をなくすため、十分な睡眠時間と規則正しいリズムを確保することが大切です。アルコール摂取も止めましょう。

 

２．高地への移動はゆっくりと

高地に体を徐々に順応させること、そして、体力を消耗させないために、自分にあったペースで計画しましょう。

 

３．脱水にならないようにすること

体内の水分が不足すると血液の粘度が上がるため、ガス交換が上手くいきません。水分補給はこまめに行いましょう。

 

４．貧血の人は治しておく

高地では、血液中のヘモグロビンが低いと酸素不足になりやすいです。特に女性は鉄剤を飲むなどで、治療しておきましょう。

 

高山病の予防薬について

アセタゾラミド（商品名：ダイアモックス）の処方を行っております。

 

高所への移動開始の前日（登山開始の前日）から高所到着後３～５日目まで、１日２回朝と就寝前にダイアモックスを125mgずつ服用します。

 

料金：　4,400円（税込）　診察料＋処方料（院外）
　
※処方箋をお渡しします。

 

ダイアモックスに関する情報

ダイアモックスの保険適用は、緑内障、てんかん、メニエール病、睡眠時無呼吸症候群などです。高山病の予防薬として処方する場合は、自由診療の扱いになります。

 

リスクとして、電解質異常、ショックなどがあります（頻度不明）。副作用として、知覚異常、しびれ、多尿が報告されています。

 

出典：ダイアモックス 添付文書

 

説明事項	具体的な内容
未承認医薬品	この治療で使用されるダイアモックスは、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない医薬品です。
入手経路	当院で処方しているダイアモックスは、三和化学研究所で製造されて、国内で流通しているものです。
国内の承認医薬品等の有無	国内においては、高山病で承認されている医薬品はありません。
諸外国における安全性等に係る情報	米国疾病予防管理センターは、山酔いになったことがある人、2800メートル以上の高地に登る人は、ダイアモックスの内服を検討すべきという見解を示しています。リスクとして、手足のしびれ、多尿が報告されています。

 

出典：High-Altitude Travel & Altitude Illness – CDC