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インフルエンザ【市販薬の選び方と飲んではいけない薬】
はじめに:こんな状況ではありませんか?

インフルエンザのような症状かもと思っても、高熱や悪寒、関節痛、全身の倦怠感に耐えつつ、「病院に行く時間がないから、市販薬でなんとかしよう」と考えた経験はありませんか?
仕事で忙しい平日や休日診療所への受診が難しい時間帯、年末年始など、病院で診察を受けることがすぐにできない状況では、薬局に駆け込み、市販薬で対応しようとする人が少なくありません。
そのとき、「本当に市販薬でインフルエンザの症状を抑えられるのか」「どれを選べば安全で効果があるのか」といった疑問が生じるかもしれません。ドラッグストアの棚には多くの種類の解熱鎮痛剤、咳止め、総合漢方薬などが、ずらっと並んでいます。
実は多くの人が誤解しているのですが、市販薬はウイルスそのものを退治する薬ではなく、「今の症状を和らげる薬」です。すなわち、市販薬は発熱、咳、鼻水などの症状を一時的に抑えるためのものであり、病気そのものを治す力はありません。
このページでは、「とにかく今つらい」「すぐに薬局で買えるものを知りたい」という、切迫した思いをもっているあなたに役立つ「インフルエンザに使える市販薬の選び方と注意点」を解説していきます
インフルエンザにも使える市販薬【症状別のおすすめ】

解熱と痛み止め
インフルエンザにかかったときに、発熱、関節痛、寒気といった「高熱にともなう症状」を何とかしたいと思います。そのときは、アセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛薬が推奨されています。別名は、パラセタモールです。
アセトアミノフェンは比較的副作用が少なく、つらい症状に対する第一選択と言えます。子どもや妊婦でも使いやすい解熱鎮痛剤で、薬局で購入することができます。ただし、肝臓の数値が悪い場合は使用を避ける場合があり、薬剤師に相談しましょう。
具体的な市販薬としては、カロナールA 、コルゲンコーワAA、タイレノールA、小児用バファリン チュアブル、ノーシンアセトアミノフェン錠などがあります。
咳止めと痰切り
気管支炎の症状(咳が出る、痰が絡む)があるときは、「咳止め(鎮咳薬)」や「去痰薬」の成分をチェックしましょう。
咳を抑えるには、ジヒドロコデインリン酸塩やデキストロメトルファンといった成分が含まれる薬が目安になります。
具体的な、薬品名としてはプレコール持続性せき止めカプセル、コンタック せき止めSTがあります。
一方、痰が絡んで困っている場合は、L-カルボシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩などの成分は入っている薬を選ぶと良いでしょう。
クールワン去たんソフトカプセル、ストナ去たんカプセル、去痰CB錠などの商品名で、薬局で販売されています。
鼻水を止める
鼻水が止まらないので、何とかしたいときは抗ヒスタミン薬(成分名:クロルフェニラミン)が候補になります。ただし、眠気と口が渇く副作用があります。
選び方のポイント
インフルエンザの症状について、「熱だけ」の場合はアセトアミノフェン単品の解熱鎮痛剤で対処できます。それに対して、咳や鼻水など複数の症状がある場合は、総合感冒薬のようなセットの市販薬が便利です。後者の場合は、含まれている成分の種類が多く、症状に合わせて薬剤師に相談するのが安心です。
出典:Medicines for cold and flu – Healthdirect
飲んではいけない市販薬・成分
インフルエンザ感染症にかかったときに、避けるべき市販薬もあります。特に注意が必要なのはロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェンなどのNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛薬です。これらの薬は発熱や痛みに効きますが、インフルエンザ脳症などの重篤な副作用のリスクが指摘されており、特に15歳未満の子どもには禁忌とされています。
総合感冒薬には、複数の症状に対応する成分が含まれているため、他の薬との併用との重複に注意が必要です。妊娠中の方や高齢者、持病がある方も、自己判断での服用は避け、薬剤師や医師に相談するのが安全です。
市販薬と処方薬の違い
市販薬 | 処方薬 | |
---|---|---|
用途 | 症状を緩和する | ウイルス増殖を抑える |
薬品名 | タイレノールA、パブロンなど | タミフル、リレンザ、ゾフルーザなど |
効果 | 発熱、痛み、咳を抑える | 発症期間の短縮、重症化の予防 |
使用条件 | 自己判断で購入 | 発症から48時間以内が効果的 |
注意事項 | 治す薬ではなく緩和する目的 | 医師の診察と処方箋が必要 |
市販薬は対症療法の目的のため使用されています。一方、医師が処方するインフルエンザ治療薬は、体内でのウイルス増殖を抑える目的のために使われ、インフルエンザの診断が確定されて処方されます。もちろん。後者の場合にも、対症療法として解熱鎮痛剤、鎮咳薬、去痰薬なども同時に用いることがあります。
「市販薬で治る」は本当なのか?

インフルエンザの市販薬による治療は、「治す」ということではなく、発熱、頭痛、関節痛、咳などの症状を一時的に和らげる対症療法です。つまり、ウイルス自体を排除する作用はなく、根本的に治療する薬ではありません。参考までに、インフルエンザウイルスの排除は、自分自身の免疫力に任されます。
特に体力のある人の場合、市販の解熱剤で症状が一時的に落ち着くことで、「もう治った」と感じるかもしれませんが、ウイルスそのものは体内に残っている可能性があり、完治とは言い切れません。このため、即効で治すというよりは、免疫が働くまでの時間を、市販薬でしのぐイメージが適切です。
市販でインフルエンザを予防できる薬はある?
市販薬には、インフルエンザ感染症の発症を防ぐ効果があるものはありません。
参考までに、医薬品として、国内で予防効果があるとされているものは、インフルエンザワクチンです。薬ではないと思いがちですが、薬効分類名はウイルスワクチン類です。もちろん、医療機関での接種が必要です。
どうしても、インフルエンザにかかりたくない状況があるなら、医師の診察が必要ですが、インフルエンザ薬の予防投与を考えても良いかもしれません。
市販薬で治らないとき、どうすればいい?

薬局で買った薬を使っても症状がよくならない場合、インフルエンザが重症化しているか、別の病気が潜んでいる可能性があります。
特に、咳や痰が長引く、息苦しい、胸の痛みがあるといった場合は、肺炎や気管支炎を併発しているおそれがあります。また、インフルエンザに似た症状を起こす新型コロナ感染症や他の感染症である可能性も否定できません。
38度以上の高熱が2日以上続く、強い倦怠感がある、呼吸が苦しい、水分が取れないといった場合は、市販薬だけでは対応しきれないサインです。さらに、症状が悪化あるいは長引いて欠勤せざるを得ない体調なら、職場へのインフルエンザの診断書を提出が必要になるケースがあります。その場合は、市販薬で対応するだけでは不十分で、インフルエンザ受診のタイミングです。