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黄砂による目・鼻・皮膚のアレルギー症状
黄砂とは

黄砂とは、中国大陸の内陸部やモンゴル地域の砂漠地帯から強風によって巻き上げられた砂塵が上空に吹いている偏西風に乗って日本へと運ばれる現象を意味しています。
主に春(3月〜5月)に多く観測されますが、近年では秋、冬にも発生が確認されるようになっています。
黄砂の主成分は石英や長石などの鉱物粒子ですが、日本に飛んでいる過程で、中国の工業地帯の大気汚染物質が付着します。また、微生物、重金属、農薬成分なども黄砂に含まれていることも分かっています。
出典:市瀬 孝道; 4.黄砂と中国大都市粒子状物資の健康影響, 2009年度秋季大会シンポジウム「東アジアの大気環境」の報告, 日本気象学会機関誌「天気」;58:31-36,2011
中国では、黄砂の強さや程度によって異なる名称で呼び分けています。最も軽度なものは「浮塵(ふじん)」と呼ばれ、空気中に少量の砂塵が浮遊している状態です。中等度になると「揚塵(ようじん)」と呼ばれ、風によって地表の砂が舞い上がり、視界が少し悪くなります。最も深刻な状態は「沙塵暴(さじんぼう)」で、いわゆる砂嵐のことです。中国気象局の砂塵天気予報をチェックすると、現地の観測状況が示されています。
健康への影響

黄砂が飛来する日には、目、鼻、気管支の粘膜、皮膚にアレルギー反応が起きて、結膜炎、鼻炎、喘息発作、皮膚炎などが発症します。特に子どもや高齢者、持病として呼吸器疾患がある人への影響が懸念されています。
なぜ黄砂アレルギーが起きるのか?
黄砂の微小粒子による物理的な刺激があります。これらの粒子が鼻や気管支の粘膜を直接傷つけ、くしゃみや鼻水、喉の痛みといった症状を引き起こします。
さらに、黄砂に付着した微生物(細菌、真菌)および化学物質(硫酸塩や窒素酸化物など)が免疫系を刺激して、アレルギーを引き起こします。一般的には、これらの要因が複合的に働くことが知られています。
黄砂には、PM2.5が付着することがあるので、その影響も見過ごせません。
黄砂アレルギーが起きる時期

主に2月下旬から5月にかけて、黄砂アレルギーが発症しやすいです。特に3月から4月が最も黄砂の飛散量が多くなるピーク時期となります。
同時期はスギ花粉およびヒノキ花粉が飛散する季節(2月〜5月)と重なります。そのため、花粉症の症状と黄砂アレルギーの症状が複合して現れることも多く、症状が悪化したり判別が難しくなったりすることがあります。
どんな症状が問題になるのか?
黄砂アレルギーは体にさまざまな症状を引き起こし、 体調不良を自覚します。ます。呼吸器症状として、乾いた咳、連続するくしゃみ、止まらない透明〜白色の鼻水が特徴的です。通常の風邪と違い、喉の奥のイガイガ感や痛みが生じることがあり、黄砂の飛散が多い日は、症状が悪化します。
目の症状として、かゆみ、充血、まぶたの腫れ、目やに、落涙など、結膜炎の症候が現れます。
一方、皮膚に影響が及び、肌が露出している部位を中心にかゆみを伴う発疹や赤みが生じます。黄砂の飛散時期に肌荒れが治らないと訴える人もいます。そして、アトピー性皮膚炎がある方は、病状が悪化の可能性があります。
ところで、黄砂には微量の金属成分(鉛、カドミウムなど)が含まれています。そのため、金属アレルギーのある方は黄砂への反応が強く出ることがあります。
全身症状として、微熱、倦怠感、頭痛なども現れることがあります。これらの症状は黄砂に付着した有害物質による免疫反応と考えられています。
黄砂アレルギーと花粉症の違い

黄砂アレルギーと花粉症は混同されがちですが、いくつかの違いがあります。
花粉症は主にくしゃみ、鼻水、目のかゆみが特徴で、晴れた日に悪化し、すぐに症状が出ます。つまり、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎の症状が主体であることが多いです。一方、黄砂アレルギーは喉の痛みや乾いた咳が強く、微熱や全身倦怠感も伴い、黄砂飛散から2〜3日後に症状がピークになります。
他の相違点として、花粉症は樹木や草花が原因なのに対し、黄砂アレルギーは砂塵に付着した微生物や化学物質が症状の発症に関わっています。
3月から5月にかけて黄砂とスギ・ヒノキ花粉の飛散時期が重なるため、症状が複合しやすく病状も悪化しやすいです。PM2.5と呼ばれる微小粒子物質も症状の増悪に関わることもあります。
出典:東 朋美 他; 黄砂とアレルギー疾患, エアロゾル研究;29(S1):212-217,2014
実際にスギ花粉症がない患者さんを診察したことがありますが、黄砂の飛来する時期に限って、咳と肌荒れがひどくなるという経験談を教えてくれました。そういった意味では、気象予報で今日の黄砂がひどいという情報に加えて、アレルギー症状の悪化があった場合に、黄砂アレルギーを疑う手がかりになるかもしれません。
どうやって診断するのか?
黄砂アレルギーの診断は、臨床症状と黄砂飛散の関連性を確認する問診によって行われます。典型的なパターンとして、黄砂飛散から2〜3日後の症状が悪化しているか確かめます。そして、血液検査でアレルギーの指標(IgE値や好酸球数)をチェックしますが、補助的に鼻汁好酸球検査や呼吸機能検査が行われることがあります。
同時期に流行するスギ・ヒノキ花粉症など他のアレルギー疾患との鑑別も重要になります。したがって、症状の推移と黄砂飛散情報の照合が診断の助けになります。
何科に受診すれば良いか?

黄砂アレルギーを相談する診療科で迷ったときは、あなたが悩んでいる症状によって選びましょう。鼻水やくしゃみが主な症状なら耳鼻咽喉科、咳や息苦しさがあれば呼吸器内科、皮膚の発疹やかゆみには皮膚科が適しています。
複数の症状がある場合は、アレルギー科がおすすめです。アレルギー専門医は花粉症との併発も含め、総合的な診断と治療計画を立ててくれます。迷ったときは、まずは内科の診察を受けてみてください。
治療について
黄砂アレルギーの症状の強さや体質に合わせて医師と患者さんが相談しながら、治療薬を選んでいきます。主に使われる薬には次のようなものがあります。
抗ヒスタミン薬は、アレルギーの原因となるヒスタミンの働きを抑える薬です。鼻水、くしゃみ、鼻づまりの症状を緩和してくれます。アレグラ、デザレックス、クラリチンなどの第二世代の抗ヒスタミン薬は眠くなりにくい鼻炎薬として知られており、仕事や運転中でも使いやすいです。
咳が強い場合、喘息のような症状があるときは、キプレス、オノンなどの抗ロイコトリエン薬が効果的です。これらの薬は、黄砂シーズン前から予防的に飲み始めるとより効果的です。
重症の場合は、抗ヒスタミン薬とステロイドの合剤が用いられることもありますが、副作用を防ぐために短期間の処方あるいは症状がひどいときの屯用としています。その他、局所投与として、鼻づまりには点鼻スプレー、目の症状には点眼薬を活用することもあります。一方、肌荒れに対しては、ステロイドの塗り薬が検討されます。
複数の西洋薬を使っても病状のコントロールがうまくいなかいときは、漢方薬を併用する方法もあります。基本的に花粉症に用いられる漢方と同じ種類を選んでいきます。
予防について

黄砂アレルギーの予防には、今日の黄砂飛散情報(気象庁)をこまめにチェックして、飛散が多い日は外出を控えましょう。中国、韓国に出かけるときは、現地の黄砂の飛来情報(環境省)を確認しておくことを勧めます。外出時はN95などの高性能マスクと保護メガネの着用が役立ちます。
出典:板澤 寿子 他; 黄砂と気道アレルギー, アレルギー;71(5)382-388,2022
帰宅したらすぐに手洗い、うがい、洗顔を行い、できるだけ早く着替えてください。室内対策としては、窓を閉め、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を使用し、適切な湿度(50〜60%)を保ちましょう。こまめな掃除も大切です。
シーズン前から予防的に抗アレルギー薬を服用すると効果的で、バランスの良い食事、十分な睡眠で免疫力を高めることも重要です。
よくある質問と回答

どんな市販薬が黄砂アレルギーに使えますか?
症状を抑えるために第二世代抗ヒスタミン薬があります。具体的には「アレグラFX」(フェキソフェナジン)、「アレジオン20」(エピナスチン)、「タリオンAR」(ベポタスチンベシル酸塩)などが候補です。ドラッグストアにいる薬剤師に相談してください。これらは、OTC医薬品です。
子どもでも黄砂アレルギーになりますか?
小児も成人と同様に黄砂アレルギーを発症する可能性があります。くしゃみや咳などの症状のほか、喘息発作を生じるリスクがあります。
出典:エコチル調査 富山ユニットセンター 子どもの健康と環境に関する全国調査
妊婦の黄砂アレルギー発症の事例はありますか?
妊娠中はホルモンバランスの変化や免疫系の変動により、アレルギー感受性が変化します。その結果、黄砂の影響を受けて、鼻や目の症状が発現することがあります。
日本では、黄砂の影響を受けやすい地域はどこですか?
中国大陸に近い西日本、特に九州地方です。地理的に中国大陸から黄砂が運ばれてくる最初の地域となるため、福岡県や長崎県などの九州北西部で顕著な影響がみられます。福岡では特に2月頃から黄砂の観測日が増えて、3月から5月にピークを迎えます。