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一年中鼻水が多いのはアレルギーが原因かも
通年性アレルギー性鼻炎とは
通年性アレルギー性鼻炎は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に対する過剰な免疫反応によって引き起こされます。主な症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがあります。
人によっては、目の痒み、充血などの結膜炎の症状、皮膚の掻痒感、喘息が併発する場合があります。これらの症状が長期間持続することで、日常生活に大きな影響を与えます。
原因について
通年性アレルギー性鼻炎を引き起こすアレルゲンは、室内に存在するものが多いです。年間を通じてアレルゲンに接触する機会が多く、症状が持続します。
アレルゲン | 特徴 |
---|---|
ハウスダスト | 家庭内のほこりや微小な粒子の総称です。人の皮膚の角質、繊維のクズ、花粉、カビの胞子、ダニの死骸、動物の毛などが含まれ、それ自体がアレルゲンとなります。 |
ダニ | ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニの死骸や糞は、強力なアレルゲンです。ダニは湿度の高い環境を好み、寝具(まくら、布団)、畳、カーペットに多く生息します。 |
ペットの毛と皮屑 | 犬や猫などのペットの毛や皮屑にはタンパク質が含まれており、これらに対して体が過敏に反応してアレルギーを発症します。屋外から持ち込まれることもあります。 |
カビ | 湿気の多い場所、日当たりや風通しが悪い場所に発生するカビの胞子が原因になります。浴室、トイレ、キッチン、植木鉢の土などに発生しやすく、空気中を浮遊します。 |
日本人の通年性アレルギー性鼻炎において、ダニは主要なアレルゲンであることが分かっています。
症状について
通年性アレルギー性鼻炎では、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状として現れます。これらはダニやペットの毛、カビなどのアレルゲンが鼻粘膜に接触することで引き起こされます。屋内で過ごす時間が長くなる冬季において、病状が悪化することが多い傾向です。
出典:Types of Allergic Rhinitis – MyHealth.Alberta.ca
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)に比べると、喘息やアトピー性皮膚炎を一緒に発症することが多く、ゼーゼーやヒューヒューといった呼吸音や皮膚のかゆみが現れることもあります。
症状が長く続くため、集中力が落ちたり、睡眠の質が悪くなったり、日常生活に影響を及ぼします。睡眠障害が発症する頻度が高く、入眠困難と中途覚醒などの不眠を呈することが多いです。
ストレスが大きいと、免疫系のバランスが崩れ、アレルギー症状が悪化することがあります。また、アレルギー症状が長期間続くと、慢性的なストレスや不安を感じるようになり、その結果、症状がさらに悪化するという悪循環に陥ることもあります。つまり、アレルギーとストレスが相互に影響し合うことで、生活の質が低下します。
アレルギー性鼻炎:季節性と通年性の違い
アレルギー性鼻炎には、季節性と通年性の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。季節性は特定の時期に発症しやすく、通年性は1年を通じて症状が続きます。また、原因となるアレルゲンや合併症のリスクも異なります。両者の違いについて、比較してみます。
季節性 | 通年性 | |
---|---|---|
発症時期 | 特定の季節(春や秋など)に限定される | 1年中、季節に関係なく症状が続く |
原因 | 花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなど) | ダニ、ペットの毛、カビ、ホコリなどの室内アレルゲン |
症状 | くしゃみ、鼻水、鼻づまりが、花粉の飛散が多い日、風が強い日にひどくなる、目のかゆみが好発する。 | くしゃみ、鼻水、鼻づまりが、慢性的に続く。結膜炎の症状は軽いことが多い。 |
合併症 | 比較的少ない | 喘息やアトピー性皮膚炎を合併しやすく、喘鳴や皮膚のかゆみが現れることがある |
生活への影響 | アレルゲンが出現する季節のみ、一時的に症状が現れる。花粉の飛散量が多いと影響が強い。 | 一年中、鼻炎の症状による影響が現れ、集中力低下や不眠、眠気などが生じます。 |
セルフチェック
以下の症状が年間を通じて継続的に見られる場合、通年性アレルギー性鼻炎の可能性があります。気になる症状があって、2週間以上続く場合、医師に相談する目安としてください。
- くしゃみが連発する
- 水っぽい鼻水が止まらない
- 鼻が詰まって息苦しい
- 目のかゆみや充血がある
- 咳が続く
- 症状が屋内で悪化する
- 症状が1年中続く
小児の場合は、症状をうまく説明できないことが多いです。養育者が、子どもが鼻をすする、口呼吸が多いなどの日常的な行動に気付くことが、通年性アレルギー性鼻炎の発見のきっかけとなります。
診断の方法
通年性アレルギー性鼻炎の正確な診断のために、医療機関ではいくつかの検査が実施されます。まず、医師は詳しい問診を行い、症状の性質や発症時期、家族歴、生活環境などについて聞き取りを行います。
耳鼻科では、鼻腔内視鏡を使用して鼻の内部を直接観察し、粘膜の腫れや炎症の状態を確認します。
原因を特定する目的のため、血液検査も実施されます。特異的IgE抗体検査では、血液中の特定のアレルゲンに対する抗体量を測定し、複数のアレルゲンへの反応を一度に調べることができます。同時に、鼻汁好酸球検査によって、鼻水中のアレルギー反応に関与する白血球(好酸球)の数を調べ、鼻粘膜でアレルギー反応が起きていることを証明します。
一方、皮膚プリックテストを行うこともあります。この検査は、皮膚に小さな傷をつけてアレルゲン液を滴下し、15~20分後の反応を観察するものです。
出典:Testera-Montes et al. Diagnostic Tools in Allergic Rhinitis. Front Allergy. 2021 Sep 23;2:721851.
治療について
最も一般的な治療法は薬物療法です。抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水、鼻のかゆみといった症状に効果を発揮します。第二世代の抗ヒスタミン薬は眠気が少なく、日常生活に支障をきたすことが少ないです。医師の診察を受けて処方されますが、一部の薬剤は、市販薬として薬局で購入することができます。
ステロイド点鼻薬は炎症を抑制し、特に鼻づまりの改善に高い効果を示します。局所作用のため全身への影響が少ないメリットがあります。一方、抗ロイコトリエン薬は鼻づまりの改善に効果があり、特に喘息を併発しているときに選択されます。
重度の場合は、ステロイドと第一世代の抗ヒスタミン薬の合剤を短期間に限り、使用することがあります。
「毎日、抗アレルギー薬を飲み続けるのではなく、アレルギー体質を根本的に治したい」という人もいます。その場合には、免疫療法が選択肢となります。舌下免疫療法は、少量のアレルゲンを舌の下に置いて体を慣らしていく「比較的新しい治療法」です。3~5年の継続的な治療で、アレルギー反応を引き起こしにくい体質へと改善できる可能性があります。
国内では、ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法として、ミティキュア ダニ舌下錠が保険適用になっています。アレルギーの体質改善を希望される場合に検討します。
西洋薬が合わないときは、漢方薬の活用も考えましょう。小青竜湯はアレルギー性鼻炎に、葛根湯加川芎辛夷エキスは慢性鼻炎に対して保険適用があります。漢方薬は眠気の副作用がないという利点があります。また、抗ヒスタミン薬との併用も可能です。
予防について
通年性アレルギー性鼻炎との上手な付き合い方には、日常生活での適切な対策と予防がカギとなります。基本的には、アレルゲン暴露を避けることが、症状を防ぐのに役立ちます。
まず、室内環境の改善が大切です。週に2~3回くらい、丁寧な掃除機がけを行い、特に寝具やカーペットは根気よく清掃します。その際、HEPAフィルター付きの掃除機を使用すると、ダニのアレルゲンをより効果的に除去できます。
屋内の環境として、室内の湿度を50~60%に保つことで、ダニの繁殖を抑制し、鼻粘膜の乾燥も防げます。加湿器を使用する場合は、雑菌の繁殖を防ぐため、頻繁に掃除をしましょう。さらに、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を寝室や長時間過ごす部屋に設置することで、浮遊している微粒子を取り除くことができます。
ペットが大好きな人でも、アレルギーがある場合は工夫が必要です。犬や猫を飼っているなら、定期的なブラッシングとシャンプーを行いましょう。そして、特に寝室への立ち入りは避けましょう。なぜなら、寝ているときにアレルゲンを吸い込むリスクがあるからです。散歩から帰ってきたときは、マスクや眼鏡を着用し、帰宅後の着替えと洗顔をすることを勧めます。