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アサ科カラハナソウ属の植物が引き起こす花粉症
秋の花粉症で悩んでいませんか?
花粉症は、私たちの日常に馴染みのあるアレルギーの病気のひとつです。ところで、都市部で増加している「カナムグラの花粉症」を知っていますか?
カナムグラ花粉症とは、カナムグラというアサ科の植物の花粉が原因となって、アレルギー反応を引き起こす病気のことです。季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれ、鼻水や鼻づまり、目のかゆみなどが現れます。
近年は、街の緑化のためにカナムグラが植えられていること、壁面緑化植物として利用されること、そして、温暖化などの影響などの背景があり、花粉の飛散が増えています。
秋に発症しやすい季節性アレルギー性鼻炎と言えば、ブタクサ、ヨモギなどのキク科の植物を思い浮かべる人が多いです。今回は、あまり知られていないが、実は注目したいカナムグラ花粉症の基礎知識をお伝えします。
カナムグラとは?
カナムグラは、アサ科のつる草で、英語ではジャパニーズホップと呼ばれています。
都市部の道路沿い、空き地、畑、河川の土手に生息している植物として知られています。庭に雑草として生育している場合もあります。一年草ですが、成長が早いことが特徴で、周辺を覆いつくすほど繁殖します。
出典:カナムグラ(鉄葎)(アサ科 カラハナソウ属) – 野田市
もともと環境の適応力が高い植物であるので、北海道から九州まで日本全国でカナムグラの飛散が確認されています。ただし、北海道での飛散の観測によれば、少ないようです。一方、関東圏は多い傾向があります。
出典:岸川禮子 他; 花粉抗原からみる日本列島の空中花粉長期調査結果 ―我が国の重要な草本花粉抗原の地域性と年次変動―, アレルギー;66(10):1221-1238,2019
カナムグラの花粉は、主に秋の季節に飛散します。具体的には、9月から11月頃が飛散時期です。8月下旬に花粉が飛び始める地域もあります。お住まいの地域やその年の気象条件によっては、飛散の開始やピークが前後します。
花粉症の原因とメカニズム
花粉症は、花粉がアレルゲンとなり、それに対する体の過剰な免疫反応が引き起こす病気です。カナムグラ花粉が体内に入ると、異物であると認識するので、排除しようとする反応が生じます。
アレルギー反応を起こす免疫物質であるIgE抗体を、体内で作り出します。花粉と結合したIgE抗体が、肥満細胞を介して、化学物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなど)を放出させます。その結果、鼻、目、気管支の粘膜などで炎症を引き起こされます。
どんなアレルギー症状が出現するか?
自分が持っている体質によって、体が花粉(アレルゲン)に暴露されると、さまざまなアレルギー症状が現れます。典型的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 鼻水、鼻づまり
- くしゃみ
- 目のかゆみ、充血
- のどのかゆみ、イガイガ感
- 皮膚の赤み、かゆみ
カナムグラ花粉症の場合は、毎年、秋の時期に起きやすいという特徴があります。風邪と比較すると、花粉症では発熱することは少なく、症状が長引く傾向です。ただし、冬季に近くづくにつれて、症状は徐々に軽減していきます。11月以降は収束に向かうでしょう。カナムグラ花粉が多い場所に行くと、鼻炎の症状が悪化しやすいです。
アレルギーの調べ方について
どの種類の花粉に対してアレルギー反応を起こしているのかを特定することで、自分が本当にカナムグラに対するアレルギーがあるか、調べることができます。病院を受診して、血液検査による評価を受けましょう。
アレルギー検査
たくさんのアレルゲンの種類を調べるときは、View39がオススメです。1回の採血によって、39種類のアレルゲンを評価することができます。それに対して、カナムグラ花粉の反応を知りたいときは、特異的IgE CAP シングルアレルゲンを選択しましょう。
外来で相談を受けた印象では、自分のアレルギー体質に気づいていない人も多いようです。アレルギーの検査の結果に納得して、秋の花粉症の対策を始める場合も少なくありません。
カナムグラ花粉症の治療
季節性アレルギー性鼻炎の治療に準じて、薬剤を選択していきます。
一般的に、抗ヒスタミン薬は鼻水、くしゃみに対して処方されます。一方、抗ロイコトリエン薬は鼻づまりの症状を緩和するために、使用されます。鼻粘膜の炎症を抑えるために、ステロイド点鼻薬の局所投与を行うこともあります。
目の掻痒感に対しては、抗ヒスタミン作用のある点眼薬が処方されることが多いです。
スギ花粉症に用いられるような舌下免疫療法は、カナムグラ花粉症に対しては行われていません。
カナムグラ花粉症の症状を抑える効果がある市販薬はありませんか?
アレグラFX、クラリチンEX、アレジオン、タリオンARなどがあります。これらの薬剤は、医療機関で処方されている第二世代の抗ヒスタミン薬のOTC医薬品として、認可されたものです。購入するときは、必ず薬剤師に相談して下さい。
花粉症の対策・セルフケア
カナムグラ花粉症の場合は、9月~10月の時期を乗り越えることが大切です。以下、自分でできる対処法について、まとめます。
対策 | 特徴 |
---|---|
早めに薬を服用する | 医師の診察を受けて症状が出る2週前くらいから、アレルギー対策の薬を服用する。 |
空気清浄機の使用 | HEPAフィルターが使われている空気清浄機を利用して、部屋の空気を清潔に保ちます |
マスクの選び方 | 顔にぴったりとフィットするマスクを選び、顔の隙間から花粉の侵入を防ぎます。 |
眼の保護 | 花粉用のゴーグルを使用して、花粉が目の粘膜に付着しないように予防する。 |
服装の工夫 | 帽子を着用し、帰宅後はすぐに衣服を洗濯機に入れるか、玄関の外で振って花粉を落とす。 |
雑草の駆除 | 夏頃から、自宅の庭、周辺に生えているカナムグラがあれば、除草しておくことが大切です。 |