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スボレキサントによる不眠症の治療
ベルソムラとは
ベルソムラはオレキシン受容体拮抗薬と呼ばれる睡眠薬です。脳内にあるオレキシン(覚醒を維持する物質)の働きを低下させて、睡眠を促します。入眠困難と中途覚醒の症状がある不眠に対して、処方されています。
どんな剤形がありますか?
10mg錠、15mg錠、20mg錠の3種類です。
ベルソムラの後発医薬品はありますか?
発売されていません。
類似薬はありますか?
デエビゴがあります。
効果について
スボレキサントは、覚醒物質であるオレキシンの作用を弱めることで、睡眠を誘発します。国内で行われた臨床試験では、スボレキサントを服用することで、睡眠時間の延長、中途覚醒の時間が短くなる効果が認められました。
長期間、服薬しても薬剤の耐性がみられず、薬を中止したときに不眠が悪化することが少ないです。つまり、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較すると、反跳性不眠が少ないというメリットがあります。
出典:田中 祥貴 他; 新規不眠症治療薬, スボレキサント(ベルソムラ錠 15mg,20mg)の薬理学的特徴及びその臨床試験成績,日本薬理学雑誌;148(1):45-46, 2016
依存性のない睡眠薬を試したいという人は、ベルソムラは選択肢の一つになるかもしれません。
ベルソムラを服用すると、有効成分であるスボレキサントが体内に吸収されていきます。内服後、1.5時間(1.0~3.0時間)経過すると、最高血中濃度に到達します。そして、半減期である10時間が経過すると、薬の効果が弱くなっていきます。スボレキサントは、肝臓においてCYP3Aと呼ばれる酵素によって代謝されます。
マイスリー、ルネスタと比較すると、ベルソムラの効き目は長いです。そのため、ベルソムラは、不眠の悩みの種類の中で、中途覚醒を抑えるときに治療効果を発揮します。
ベルソムラには、どんな効能と効果がありますか?
不眠症です。
寝つきが悪い、あるいは、途中で目が覚めて睡眠が安定しない問題を抱えている人に対する治療薬として処方されています。
せん妄を予防するためにベルソムラの投与が役立つことも、報告されています。
せん妄のリスクが高い高齢者の不眠に対して、ベルソムラの処方を考慮してもよいかもしれません。
副作用について
翌朝に眠気が残ること、傾眠、頭痛、めまい、疲労感 などです。悪夢を見る という人もいます。添付文書では、ベルソムラを服用しているときは自動車の運転を避けるよう注意喚起がされています。頻度は不明ですが、睡眠時随伴症が現れるという報告もあります。
ベルソムラを服用すると悪夢が多くなる理由は何ですか?
有効成分であるスボレキサントは、レム睡眠を増加させる作用があるので、夢に関連した症状が出現しやすくなります。具体的には、異常な夢を見る症状のほか、入眠時幻覚、睡眠麻痺が現れる場合もあります。これらは、スボレキサントのレム睡眠に対する影響と言えます。
薬の服用方法について
成人は1回につき、ベルソムラ錠20mg(主成分:スボレキサント)を就寝前に服用します。ただし、高齢者の場合は、ベルソムラ錠15mg錠を内服します。
どんな場合に、ベルソムラ10mgを使いますか?
抗真菌薬のフルコナゾール、カルシウム拮抗薬であるジルチアゼムおよびベラパミルなどの薬剤と併用するときです。これらの薬剤はCYP3Aの作用を減弱させるので、スボレキサントの濃度が高くなります。そのため、用量を10mgに減らして、慎重な経過観察を要します。
ベルソムラと他の薬との飲み合わせは、充分に注意しなければなりません。お薬手帳を活用することを勧めます。
禁忌について
抗生物質のクラリスロマイシン、抗真菌薬であるポサコナゾール、ボリコナゾール、およびイトラコナゾールなど、CYP3Aを強く阻害する薬剤を服用している場合は、スボレキサントの血中濃度が著しく上昇するため、併用禁忌となっています。
注意事項について
個人差はありますが、睡眠薬を飲んだ翌朝に薬の作用が残って眠気を感じる場合があります。 超短時間型の睡眠薬と比較して、ベルソムラの作用時間が長いという理由によって起こり得る副作用の一つです。人によっては、薬による眠気が仕事に影響することがあります。
薬を飲んでから朝起きられない問題が生じたときは、用量を調節したり、薬を飲むタイミングを変えたりする必要があるので、他の睡眠薬への変更を含めて、担当医に相談してください。
ベルソムラは習慣性医薬品に指定されており、定期的な医師の診察が必要です。内服するときは、処方箋の指示を遵守することが大切です。効果が不十分であるときに、自己判断によって2錠を飲んではいけません。
アルコールは、中枢神経系を抑制する作用がありますが、ベルソムラも同様の働きがあります。そのため、飲酒をした状態でベルソムラを服用すると、作用が増強して副作用の発現が高くなるので、注意してください。